穢れないその背中

いつだってその背中はとても遠かった。 担当上忍だった時はとても頼もしくて。 誰にも渡したくないと思った。 自分だけの恩師であって欲しかった。 けれど、彼は火影になり、里の為に散った。 その為に払われた犠牲は果てしないものだった。 あれだけの犠牲ですんでよかったのかもしれない。 でも、俺にとっては何よりも大切なものを失くしてしまった。 もう、取り戻すことも出来ない。 俺の大切な人はいなくなってしまった。 もう、俺の手では届かないくらいに遠い彼方に。 その光を見つけたときは眩しくて直視できなかった。 俺が捨ててしまったものを持っていたから。 きっと、俺はこれからもそれを手に入れることは出来ないと思う。 自らそれを捨ててしまったのだから。 再び手に入れたいなどと、言えるはずも無い。 けれど、あいつは俺に手を差し伸べてくれた。 「俺のために自分の命までかけてくれたのはお前が初めてだから。」 苦しそうに。 それでも嬉しそうに。 どう表現したら良いのか分からない顔をしていた。 あの時、体が勝手に動いたのはどうしてなのか。 いまだに分からない。 けど、あのときお前のために体を張ってよかったと思ってる。 あの時、お前を助けられなかったら。 今の俺はきっといないから。 一度は裏切った俺を救い出してくれたのは、お前だから。 「お前は俺の光だから。」 そう言ったら、恥ずかしそうに笑って。 「光なんて大層なもんじゃないってば。」 そう言った。 けれど、俺にとっては間違いなく眩しすぎる光だ。 もう、失いたくは無い。 手放したくは無い。 だから……勝手に死ぬなよ………。 最初は恋路を邪魔するいやなやつだと思ってた。 邪魔でしかた無かった。 いつの間にか私よりもサスケ君に近くて。 サスケ君の視界に入ることの出来るナルトが羨ましかった。 そのポジションに入りたかったのは私だから。 でも、本当はナルトが笑って、サスケ君が居るその輪に入りたかった。 みんなで笑っているその輪がいつまでも続けばいいと思っていた。 「我侭ばっかり言って、ごめんね。」 いつだったか、ナルトにそういった。 傷だらけで、命までかけて。 私の為に戦って帰ってきたナルト。 あの時、私は何でサスケ君を一緒に連れて帰ってきてくれなかったのかと。 そう、思ってしまった。 今は、その記憶が恥ずかしくて仕方ない。 自分のことしか考えていなかった自分勝手な自分が恥ずかしい。 どうして、ナルトのことを考えてあげられなかったのか。 ナルトだって、苦しかったのに。 私たちの前では明るく笑っていたけれど。 私たちの居ないところでは声も上げずに泣いていた。 そのことに気付いたとき、自分の間違いに気が付いた。 もう遅いかもしれなかった。 私を軽蔑してしまっていたかもしれない。 私に呆れ返ってしまっていたかもしれない。 でも、ナルトはいつでも私たちを受け入れてくれた。 「今度は私がナルトの力になるから。」 そう誓った。 もう、失くしたくない。 失う怖さを知ったから。 誰かが傷つくのはもう見たくないから。 絶望から希望を探し出せたのは。 きっとナルトのおかげだ。 先生が遺してくれたもの。 あの日、先生が希望を託した存在。 今度は俺たちが希望を叶えていかなくては。 ナルトが火影になりたいのなら。 その為に何でもしてやりたい。 どんな戦場に居てもあの子は輝いていた。 どんな血に濡れても。 それでも、あの子は穢れない。 いつも輝く、導き手。 道に迷わないで。 その眼で未来を見つめ続けて。 穢れなきその背を見させて欲しい。


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