君が振り向く正面で 君の愛しい人が手を広げていた

煙るタバコのにおい。 それは、大好きな人のにおい。 何も迷わずに、確信だけをもって、振り返る。 「アスマせんせー!!」 そのまま、その腕に飛び込んだ。 集まる視線も、さっきまで抱き上げられていた腕もかまわず。 とっさのことに、抱えていた腕からするりと逃げ出した子供を抱きとめることも出来ないで。 腕の中が空になった、銀髪覆面上忍は向かい側のヒゲ熊を睨みつけた。 ヒゲ熊と一緒に歩いていた、三白眼の下忍は「めんどくせぇ」とこぼして、担当上忍を視界から外した。 「ナルト、お前また軽くなったな。ちゃんと食ってるか?」 「ちゃんと食べてるってばよ!」 「野菜は?」 「や、野菜は…前よりは食べてるってば」 「そうか、偉いぞ」 ごつい手が、無造作に頭をなでる。 他人に触られるのを極端に嫌うこの子が、それを許す数少ない大切な人。 今日、外に出たのは、カカシが居たから。 外に出ようと思ったのは、大好きな人に逢いたかったから。 何を言われても、どんな目で見られようとも。 家でじっとなんてしてらんなかったから。 「お、そうだ。誕生日おめでとう」 「あ、ありがとうってばよ」 「一丁前に気なんて使うな。ガキはプレゼントでも強請ってればいいんだよ」 「……うん」 自分の腹に抱えている獣のことを知って。 ギモンは、ほとんど解決した。 殴られるのも。 何かを言われるのも。 みんなとも違うのも。 ぽっかりと抜けた記憶も。 覚えのない暖かい唄も。 それでも、抱きしめてくれる腕があるから。 両手を広げて待っててくれるから。 「オレってば、ちゃんと、せんせーに追いつくってばよ」 「おう、ゆっくり待っててやるよ」 頭をなでて。(がさつでもいいから) ギュッと抱きしめて。(ちょっとくらい痛くてもいいから) どうか、来年も、再来年も、その先もずっと。


ラストは、まさかのアスマ先生。 周りはきっと、彼がナル君の1番だと知らないはず。 というか、知ってても、認めないと思う。 ま、可愛がるって意味じゃ、アスマ先生が一番だと思ってます。 適度に、甘やかしてくれそうです。 最初は、ラストに四代目を書こうかと思ったのですが。 上手くまとまらない上に、時間軸が変になったので、却下。 2番目は誕生日前々日。 1番目は誕生日前日。 5番目は誕生日当日。 4番目の後話が、3番目。で、2の前。 みたいな、時間軸。 カカナルでもシカナルでもないところを軸にしてみました。 珍しいモンです。 アスナル、結構いいなと思ったのは内緒です。

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