*シカナル *下忍x上忍 *シカマルBD 「今回の作戦参謀の奈良シカマルだってば。みんなよろしくってばよ!」 にこやかに俺のことを説明するナルト。 状況が飲み込めていないほかのメンバー。 そして、当事者の俺が一番、状況把握ができていない。 どうにも、めんどくせぇことに巻き込まれた気がすんだが。 寝起きの頭では状況が理解できず、全員の視線を集めている状態。 ことの始まりは、朝早くに我が家を訪れたナルトが、 『シカマル、任務だってば!』 と、俺を無理やりたたき起こしたことからで。 惰眠をむさぼろうとしていた俺には、いい迷惑だ。 里外の長期任務から戻ってきたのが、昨日の夜半。 疲れから、気を失うようにベッドに突っ伏して眠りについた。 で、日も昇らぬうちからたたき起こされ。 全く働かない頭で、何とか着替えると荷物よろしく肩に担がれ連れ去られ。 何なんだと、問い詰めようとしたら、説明は、現地についてからだと流された。 そんなこんなで、冒頭のセリフに戻る。 「えっと、今回の作戦参謀の奈良シカマルだってば。みんなよろしくってばよ!」 「…ども」 「…あぁ」 「…」 「なんだってばよ〜」 もっと、元気よく!と張り切る姿を見るのはほほえましいが。 寝不足の頭では、どうしようもない。 自分で言うのもなんだが、こんな状態で任務を遂行することなど出来そうにもない。 実を言うと立っているのもやっとで、気を抜いたら眠りそうなほど、眠い。 常日頃から、眼つきが悪いだの、可愛げがないだの散々言われてきているが。 今日ほど、それが顕著な日はないと思う。 かみ殺しきれないあくびが口から漏れる。 緊張感が無いといわれても否定はしないというかできない。 自分にとっては、イレギュラーな任務だ。 忍にとってそれが日常だといわれようともだ。 あくびをかみ殺し、目をこすり。 ズボンのポケットに手を突っ込み、背は猫背。 全くやる気の無いシカマルを視界に納めながら、メンバーの一人が口を開く。 「ナルト、何で下忍の彼が一緒なのかな?」 「問題あるってば?」 首をかしげる姿は、確かに可愛いが、それとこれは別問題。 任務自体は、他国に奪われた巻物の回収。 人数は多いが、あちらの戦力はさほど高くはない。 パワータイプのナルトが1人で赴いても戦闘だけなら問題はない。 ただ、敵さんが逃げ込んだ場所が少々厄介なことと、巻物にかけられた術が問題で。 対人柱力用にかけられた封印式は、人柱力が触れることにより発動し、対象者は数日間チャクラが一切練れなくなる。 どれほど膨大なチャクラをもってしても、それが練れないのであれば一般人に毛が生えたようなもの。 ちょっと、戦闘力の高いごろつきと一緒。 そのために、ナルト一人では任務に就けないためにこうしてフォーマンセルが組まれたのだが。 なぜか、人選はナルトに一任されていて。 広域機動タイプのサイ。 感知タイプの日向ネジ。 そして、頭脳タイプの奈良シカマル。 ナルトにしてはバランスの取れた組合せではあるが。 しかし、サイの顔には、問題しかないと書いてある…気がする。 「そもそも、なぜ四人小隊なんだ。そんな大層な任務でもないだろう」 「僕は、ナルトと二人っきりのほうが良かったんだけど」 「…めんどくせぇ」 「文句、言うなってばよー。俺1人じゃダメだし、シカマルの経験値上げだと思って、な?」 頼むってばよ〜。と両手をあわせてお願いするナルトに、結局弱い面々。 それが例え、シカマルのためだとしても。 「めんどくせぇけど、任務だし。仕方ねぇ」 「では、作戦参謀殿のご意見を聞かせていただこうか」 「その前に、現状把握させてください…」 + + + + + 「それじゃ、いくってばよ!!」 ナルトの合図と共に、作戦が開始される。 ド派手な爆発があちらこちらで起こる。 吹き荒れる爆風と舞い散る火の粉の中を金色が駆け抜ける。 少し大振りの忍刀を振り、敵の目を惹きつける。 それでなくともナルトの戦闘は目立つ。 その間に、サイとネジが巻物を回収する。 シカマルといえば、戦略を立てるだけ立てさせられて少し離れた木の上で待機。 『流石に、寝不足のシカマルを戦場に放り出したりは出来ないってばよ』 『やっぱり、足手まといじゃないか』 『お守りをしてやる義理はないしな』 『二人とも、ひどいってばよ!さっきまでシカマルの作戦に感心してたのに』 『別に、いいっすよ。俺もまだ死にたくねぇっすから』 『シカマル、ごめんってば』 『気にしてねぇから、行ってこいよ』 『おう!じゃ、作戦通りに…散っ』 高い崖に囲まれたアジトが良く見える。 戦火のど真ん中には、年上の恋人。 他を圧倒する戦闘能力。 揺れる金色。 次期火影の名が約束され。 その隣に立つことの難しさは自分が良く知っている。 俺は、下忍で。 戦闘よりも、内勤向きの冴えねぇガキで。 もってるのは、ほかよりっちょと回りの速い頭くらいで。 やっとのことで、恋人の地位を得たはいいが。 あっちは、老若男女、だれそれ構わず落とす、天然タラシで。 付き合う前と今で何が変わったのかもわかんねぇケド。 誰にも、渡したくない。 そのために、網を張って。 策を張り巡らして。 「こればっかりは、めんどくせぇとか言ってらんねぇよな」 ドォォオオン と、今日一番の花火が上がって、任務は無事に終了した。 + + + + + 里に着くと日も暮れて、空には月が上がっていた。 綱手姫への報告も終わり、長かった一日が終わる。 ナルトを残し、シカマルは一足先に家に向かい歩いていた。 もう、眠さも限界を迎えている。 「…」 無言で、部屋の鍵を開けて、靴を脱ぐ。 歩きながら、ベストを脱ぎ捨て。 紙紐を解く。 倒れこんだベッドからは、ナルトの匂い。 「…っはぁ」 「シカマル、俺のベッドの匂い嗅ぐの止めろってばよ」 「…かえり」 「シカマル、頭回ってないってばね。ま、いいや。俺も寝るってば」 「ん」 腕を広げて、ナルトを迎入れる。 「シカマルの心臓の音、好き」 「俺も…」 そのまま、静かな寝息が毀れる。 「シカマル、誕生日オメデトウ」 + + + + + 朝日の眩しさに目を開けるとナルトの超ドアップ。 一瞬にして目が覚めるが、いっこうに状況がつかめない。 「シカ、はよ」 「はよ」 じゃ、ない。 俺は昨日、眠さマックスで任務に行って。 無事に巻物奪還して、里に帰還して。 綱手様に報告をして、それで、俺は家に帰ったはずだ。 そう、自宅に。 それなのにどうして、隣でナルトが寝てんだ。 ってか、このベッドは俺の部屋のじゃねぇ。 ナルトん家のベッドだ。 …ということは。 「家に帰ったら、シカ寝てるからびっくりしたってば」 「…すみませんでした」 「いえいえ〜」 お、そういえば。とおもむろに昨日の任務で回収した巻物をシカマルに手渡す。 巻物に組まれていた術式をシカマルが解術し、ナルトにも無害なものになっている。 「この巻物、シカマルにあげるってば」 「あ?」 「だから、誕生日プレゼント」 「…あのよ、一ついいか」 「なんだってば?」 「俺は、自分の誕生祝を自分で取りに行ったってことでいいのか」 「そうだってばよ?なにか問題ある??」 なにか。 じゃ、俺は寝不足でふらふらの状態で、自分の誕生祝をわざわざ取りに行ったって事か。 単純な任務の割りに、ナルトが楽しそうだったのは、そういうわけか。 楽しそうな姿を見れたこと自体は意味があったが。 だからって、遠出してまで拝むモンでもない。 俺ん家でも、十分に堪能できる。 間違いない。 ため息が出るのは、致し方ないことだ。 「おおありだ、この、超馬鹿」 「えぇ〜!?なんでだってばよ!」 シカマルの誕生日プレゼントもゲットできたし。 シカマルの凄いところもみんなに自慢できたし。 俺ってば、イッセキニチョウ?の計画だったのに。 なんでなんで? 「自慢の恋人アピールの何がいけないんだってばよぉ」 あぁ、くそっ。 自惚れてもいいのだろうか。 「今晩は、寝かせねぇ」
カカシ君、誕生日おめでとう!
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