カフェ・ラテ

年に一度のビックイベント。 そう、文化祭。 どこの学校でも夜遅くまで残って準備に励む。 それは、最高の文化祭を作り出すため。 さぁ、みんな張り切って用意してこうか!! 今年も、最高の文化祭を作って、青春の一ページを心に刻み込もう!! 「どこの馬鹿がこんなくっさいせりふ書くんでしょうね?ねぇ、宍戸さん。」 「知らない。」 「えぇ〜生徒会じゃないの〜?」 「あの真面目集団なら考えるんやない?」 「もっと、盛り上げられる言葉があるんじゃないのか?」 「くだらない。」 「つまんねぇ〜の」 「所詮、凡民の考える言葉じゃな。なぁ、樺地。」 「うす。」 上から順に鳳・宍戸・ジロー・忍足・滝・日吉・岳人・跡部・樺地。 生徒会が捻りに捻って作ったポスターの台詞を一読してすぐに、吐き出された辛辣な言葉たち。 発言をした本人達にはきっと悪気なんてなかったのだろう。 きっと、爪の先ほどもない。 「部活で店出すやつって何やるのかな?」 「去年は、ホストバーやなかったか?」 「すごい人気でしたよね。」 「跡部がな。」 「「「「「「「宍戸(さん)もだろ?(でしょ・やろ)」」」」」」」 妙なところで一致団結を見せる氷帝レギュラーメンバー。 「一番指名率が高かったのは跡部だろ。」 宍戸はすねたように言った。 確かに、指名率は跡部が一番高かった。 しかしそれは、女子からの指名率だけを見た場合であって、女子も男子も関係なしに見た 場合はなんと、宍戸が一番多いという結果をはじき出したのだ。 しかも宍戸の場合、女子よりも男子に指名された人数のほうが多いときたものだから、 去年のホストバーはある意味で宍戸の周りだけが戦場と化していた。 宍戸の周りを陣取っている、氷帝レギュラーメンバー。 それは、それで見ていて楽しい。 しかし、だからといって自分が相手にされるかと言われれば、それは無理。 レギュラーメンバー同士で、牽制しあっていて、無言の重圧がかかる。 『りょーちゃんの隣は、俺ねvv』 『ああ?NO.1とNO.2は隣り合うのが常識だろ。なぁ、樺地。』 『うす。』 『二人一緒におったら、偏ってしゃーないやろ。離れとき。』 『やっぱ、俺と宍戸さんはダブルス組んでるんですから、ここでもペアですよね?』 『何言ってんだよ!』 『偶には、貸せよ。ってか、よこせ。』 『………』 『俺は一人でいい!!』 『『『『『『『そんなわけいくか!!』』』』』』』 一年前が懐かしい。今年は、どうなることやら。 宍戸は今の時点で、嫌気がさしてきていた。 「(今年も面倒に巻き込まれなくちゃいけないのかよ。)」 そんな、宍戸の思いを誰も気になんてしていなかった。 今年こそは宍戸と二人っきりのチャンスを手に入れるのだ!! と意気込んでいるため宍戸の心情なんて誰も気になんてしていなかった。 ご愁傷様である。 □■□□■□□■□□■□ 「今年の文化祭でのテニス部からの出し物は、『女装喫茶』に決定した。これから、 女装をするものを四人選出する。投票制にするので、各自渡された紙に推薦するもの 一人の名前を書いて、そこの箱に入れる。わかったか?」 『はい!』 太郎の粋な計らいにより、今年の出し物は『女装喫茶』に決定した。 宍戸の受難ここに極まれり。 氷帝学園中等部最後の出し物がこれに決定したことは果たして、吉と出たのか、凶と 出たのか。 投票の結果が気になって仕方ないところである。 「それでは、開票していきます。」 「宍戸」 「芥川」 「滝」 「芥川」 「宍戸」 「宍戸」 「日向」 「滝」 …………………。 ……………………………。 ………。 …………………。 「結果を発表します。上位から宍戸・芥川・滝・日向。この四名に異議はありませんね? それでは、合意の場合は拍手を。」 部室に鳴り響く拍手の音。満場一致。 「それでは、宍戸さん芥川さん滝さん日向さんの四人はこれから寸法を測りますので、 別室へ。」 「たりぃ〜」 「りょーちゃんペアルックしようねvv」 「なぜ、俺が?」 「納得いかねぇーーーー!!!」 「お静かに願います。」 「「「「はい」」」」 氷帝テニス部マネージャー。 実は彼女こそが、陰で糸を引く越後屋であった。 今回のこの粋な計らいも、太郎と二人で画策した賜物であった。 イヤ何て言わせない、絶対的なオーラがかもし出されていた。 恐るべし氷帝テニス部マネージャー。 □■□□■□□■□□■□ 「採寸始めるよぅ〜。さっさと脱いでねぇ。」 そこには、黒髪がとてもお似合いのおねぇさんが椅子の上に陣取って座っていた。 何の気兼ねも無く。 あたしの椅子なんだから、座ってて何が悪いの?といわんばかりである。 そのおねぇさんの姿を一見するや否や、宍戸は溜息と何やらいろいろなものを吐き出し つつ、言った。 「有美?何やってんだよ。」 「何って採寸よ。寸法測りに来たの。りょーくんのメイド服作るためにわざわざ出向い てきたの。見てわからない?」 「何で有美が作るんだよ。」 「格安料金で出来るからに決まってるじゃない。昔のよしみよ。今回はあたしの趣味の 一環みたいな感じだから、格安で引き受けることにしたの。仕事だったら一着四十万 くらいなんだけど。あ、もちろんオーダーメイドだからこの料金なんだから。で、今回 は、まぁりょーくんのためだし。みんなの為だかだら一着十万で引き受けたの。」 「それでも十万かよ。」 「いい生地買うにはお金が要るの。」 一体どれだけいい布を使って作る気だやつは。 「あ、ゆみちゃん来てたんだ!知らなかったぁ〜」 「ジロー君久しぶり。元気してた?相変わらず可愛いなぁ。」 「ありがとうv」 笑顔で対話をする二人を横目に、宍戸は言いようの無い不安感に襲われていた。 有美がここに居るということは、やつが服を作成するわけだが。 やつが作ってきた服を着て一度でもいい思いをした記憶が無い。 こりゃ、また変なもの着させられる羽目になるんじゃないのか? まさか、着ないだろう。イヤ、着ないはずが無い!!(反語) 「りょーくん物騒なこと考えてると、その通りに作っちゃうゾ。」 「何ニモ考エテマセンヨ」 「そう?じゃ、ちゃっちゃとおわらそう!!」 「おう!」 勝手に話は進んでゆく。 事態の状況をはっきりと掴めぬまま、言われるがままに寸法を測られていく宍戸たち四人。 蚊帳の外に居たのはやはり日向。 それがある意味、一番いいのかもしれない。 □■□□■□□■□□■□ 時は一気に過ぎて当日。 氷帝テニス部主催、『女装喫茶』は思いのほか大繁盛していた。 女装はしないにしても運び役として働いているレギュラーの面々。 どこからとも無く黄色い声が……。これも日常の風景である。 宍戸は、女子からも男子からも次々と声をかけ続けられ。 特に男子の率が高いのは気のせいではないはずだ。 宍戸を見るやらしい目線が気になってしかたないレギュラーメンバー。 注文のときにあわよくば触っちゃおうかなぁ。 などという不届きものには正義の鉄槌が下された。 相手が悪かった。 分が余りにも悪すぎた。 敵に回す人間を間違えた。 勝率が限りなくゼロに近かった。 勝率なんて本当は存在しなかった。 一時は『あまりにも危険だ』と判断したレギュラーメンバーの一存で裏方に引っ込め られてしまうという一面もかいまみれた。 しかし、そこはなぜか仕事熱心な宍戸。 裏方に居ては仕事が出来ないとレギュラー陣の目を盗んで仕事に励んでいた。 しかし、そこで彼が最後に受け持った仕事が悪魔を呼んだ。 □■□□■□□■□□■□ 「ゴ注文ハオ決マリデスカ?」 「ん〜〜〜じゃ、紅茶とこのケーキセット。」 片言の日本語で注文を承るゴスロリ系のメイドさん。 対するは、にっこりと笑顔を振りまくスレンダーな彼女。 「……素で注文してんじゃねーよ。バァカ。」 「ここ喫茶店でしょ?営業妨害じゃないものOKじゃない?なァに寝ぼけてるかな りょーくん。」 「………」 怒気と殺気をふんだんに含んだ、黒髪でロングヘアが大変お似合いの彼氏。 もともと沸点の低い彼が、いまだに持ちこたえている時点で、何かおかしい出来事が 起きていた。 レースをふんだんに、これでもか!!と言わんばかりに使ったエプロン。 黒を基調とした、膝上二十センチのスカート。高さ十センチのパンプスをはき。 銀色のトレーを持った彼は、どこから見ても、素敵なメイドさんでした。 誰もおかしいなんて思わなかった。 だって、ここは『女装喫茶』むしろ目の保養にいらっしゃっている方ばかり。 願ったりかなったりである。 「にしても。りょーくんソレ似合いすぎだよ。日常生活それにしなよ。家で雇うから。」 「バカ言うな。今、すぐにでも俺はこの服脱ぎたいんだよ!!ふざけるな!!」 「うわぁ〜脱ぐだなんて!ストリップショーでもやってくれるワケ?ラッキーだなぁ。」 「やるか!!」 宍戸は反撃とばかりに一言言ったがソレが、すべて十倍返しになっているのだからたまった もんじゃない。 宍戸は口では有美にはかなわなかった。 「あ!ゆみちゃん遊びに来てくれたの?うれC―!!」 「お!ジロー君似合ってるねェ。あたしの見立てに間違いは無かったわ。」 「ホント!?ありがとうVVりょーちゃんとオソロなのがポイントだよね!!」 「りょーくんが思った以上に細かったからどうしようかとも思ったけど、ソレはソレで たくさん装飾しても着太りしなかったから助かったよ。ところで、りょーくんちゃんと 毎日三食摂ってるの?」 「食ってるよ。」 「りょーちゃんやせの大食いだから大丈夫だよ!でも、運動量が多いからすぐ消費しちゃ うんだよねぇ〜?」 ねぇ〜?と首をかしげながら、宍戸に同意を求める。 「お前らが静かにしてりゃ無駄に消費しないですむんだよ。」 「ヒドーイ!!」 ひどい!ひどい!!と泣きまねをするジローを横目に、宍戸は我関せずの態度をとった。 「まぁ、仕方ないか。りょーくんは氷帝レギュラー陣の紅一点だし。」 「コウイッテン!!」 「紅一点って女に使うモンだろ!!」 「りょーくん(ちゃん・宍戸さん)はアイドルだから良い(E―)の(んです)!!」 「あら?ちょーちゃんお仕事は?」 「今、休憩に入ったところなんです。」 無敵スマイルで立っている鳳。 天使の微笑であまたの人間を地獄に送ってきた。 見た目は笑顔だが、目が笑っていない。 そのギャップの激しさがまた一層、恐怖をあおる。 鳳のそんな一面を知らないのは宍戸くらいなものである。 「何や、おもろい感じになってるやないの。俺も交ぜてぇーな。」 「何かするのか?」 「争奪戦なら負けないが。」 「そんなもの、俺様が勝つに決まってんだろ。なぁ、樺地。」 「うす」 「もう、勝手にやってろよ!俺はどうせ蚊帳の外だよ!!」 意気込むものと、蚊帳の外だといじけるもの。 「じゃぁ、第何回だか分かんないけど。『りょーくん争奪戦!!ルールは簡単、一番最初 にりょーくんを見つけた人が勝利者!勝利者には今日残り一日りょーくん自由権プレゼ ント!欲しくば命がけで探してみやがれ大会!!』じゃ、りょーくん逃げてね。りょー くんが逃げてから、一分後に始めます。はい、りょーくんは命がけで逃げて。」 「あ…ああ……。じゃ!」 一分後。 「じゃ、位置について、よーい!スタート!!!」 ドタバタ!!と形容するのが最も似合う音を立てて走り去ってゆくレギュラー陣。 「りょーくんもてもてだよね。そう思わない、有希にぃ。」 「そうだな。あぁ、そういえば、さっきその亮を拾ってきたんだが。」 ほら。と、このくそ暑い中涼しげな顔をしてコートを着込んでいる双子の兄の元から 走り逃げたはずの宍戸が出てきた。 172cmの宍戸が、197cmの有希の中に納まっていたのだ。 「有希、助かった。」 「……あたしの勝ちよね。」 「何の話だ?」 「うん?《第何回だか分かんないけど。『りょーくん争奪戦!!ルールは簡単、一番最初 にりょーくんを見つけた人が勝利者!勝利者には今日残り一日りょーくん自由権プレゼ ント!欲しくば命がけで探してみやがれ大会!!』》を実施してたの。」 「妙に名前が長いんだな。」 「そのほうが楽しいかと思って。」 きゃはっvvと笑って見せる有美。 きっと普通の男子ならば赤面間違いなしの場面。 しかし、有希は表情を一切変えずに平然と言った。 「なら、勝利者は俺じゃないのか?俺が最初に見つけたんだ。」 「そうなるのかしら?でも、双子なんだから、仲良く二人でってことにしない。あたしが 発案しなかったら成立しなかったんだから。」 「まぁ。そういうことにしておこうか。亮も構わないか?」 「別に。すぐにでも静かなとこに行けるなら何でも。」 ぐったりした感じで宍戸は言った。 「じゃ、お家に帰りますか。りょーくんとこには連絡しとくから。」 「サンキュ。」 「帰るぞ」 こうして、宍戸の忙しい一日は幕を閉じようをしていた。 存在を忘れ去られているレギュラーメンバーは、その後も必死に宍戸を探していたが 見つからず。 だめもとで元居た場所に戻ってみると、そこには置手紙が。 『りょーくんはあたしと兄で引き取りました。  兄が一番最初に見つけたので、勝利者は兄となりましたので。  皆様、どうもご苦労様でした。後片付けよろしくお願いします。                              by有美&有希』 「「「「「「「やられた!!!!」」」」」」」 叫んでみても後の祭りである。 (終われ!!) 


懐かしさに打ちひしがれながら。 ざんぷ本誌の連載も終了してしまって。 そういえば昔テニス書いたよなぁ? ぐらいの気持ちで探したらあった。 色んなのに手を出していた模様です。 当時の自分の流行とか知りたいです。

≪戻る。