もしもシリーズ。其の壱 〜キラ嬢が歌姫だったら〜 ある星の、ある地域で爆発的な人気を誇っている歌姫が居りました。 ムウファミリーの一番の売れっ娘(こ)、キラ・ヤマト嬢。 サラサラと流れる美しい赤みがかった茶色の髪。 吸い込まれるような紫暗の瞳。 ファンは彼女の其の可愛さのト・リ・コ??? 『キラ・ヤマト』何とも可愛らしいお名前じゃありませんか。 え?キラ?男の子じゃないかって?そんなの気にしちゃいけません。 此処では、僕の言うことが正しいのです。 僕が基準の世界だから何があっても文句は言わせません。 ソレを、肝に銘じて此処から先読み進めてください。 嫌だと言う方は止めませんので、どうぞ退室してください。 本当に、誰も貴方を止めませんから。 では『私は何があっても行くわ!!』と言う息の良いお嬢さん方ご一緒に行きましょうか? □■□■□■□■□ 此処はとある芸能プロダクション。そこの社長のムウ・ラ・フラガ。 彼の手がけてきた美少女達の全てが爆発的な人気を手に入れ、其の地位は揺るがない物 になっていた。 そして、最近画面に登場したある一人の美少女。 其の名を、『キラ・ヤマト』 笑顔のとても似合う可愛らしい女の子である。 彼女が画面上に登場にするようになったのは、ほんの3ヶ月前。 まるで彗星のように現れ、其の人気はうなぎのぼりに上がっていった。 そして、今日は新曲発表の大切な音楽番組の生出演の日だったのです。 今回のこの新曲の話もキラ嬢は最後まで『イヤ・イヤ!!』と首を振り続けていたのです が、周りのものに上手いように言いくるめられ。 其の上、ムウは契約書をはらりと懐から取り出して、キラ嬢の前に見せるのです。 「ここに書いてある字が読めないか言わないよね?」 とても優しい笑顔でした。 しかし、その笑顔の裏に隠された陰謀に気付かないほどキラ嬢は愚かではありません でしたが、一度契約してしまったものは今更取り消すことは出来ません。 狡猾なムウは何かしらあるたびに其の契約書を見せては、キラ嬢を黙らせるのでした。 そんな、卑怯くさい社長でしたが、実は大変な天才で。 彼のお眼鏡に適った子は間違いなくヒットしているのですから、そのチカラは本物と 言っていいのでしょう。 そして、今回のキラ嬢も同じ様にムウ社長のお眼鏡に適ってしまったのです。 社長は、車の中から、キラ嬢の姿を一目見るとこう叫びました。 『あの娘(こ)は1000年に一度の才能を持った歌姫だ!!』 と言って勝手に車の中に連れ込み。 (誘拐事件と間違われなかったのが今でも謎である。) そして、手早く契約を結び。 其の上、勝手にデビューさせてしまったのです。 そのことを知ったキラ嬢の両親でしたが、ムウ社長は上手い事根回しをしていたので、 何の反対もなくデビューさせられてしまったのです。 恐るべき手腕というべきなのでしょうか・・・。 さて、もうじき、キラ嬢が大変嫌がっていた新曲の発表会です。 LOVE・MUSICといういかにもネーミングセンスのない歌番組の司会者が自分の 隣に、キラ嬢を座らせて話をし始めました。 「えっと、今回の新曲ですが、乙女心をテーマにしたものだと聴きましたが、当のキラ さんは恋人がいらっしゃるのでしょうか?」 いきなりの司会者の質問にキラ嬢はたじたじ。 お茶の間のファンは、此処でいきなり自分がキラ嬢の恋人にはなれない宣言をされて しまうのかと、一瞬にして、場の空気が凍りつきました。 しかし、そこは天下一の歌姫にして、天然ボケのキラ嬢。 上手にこの場を乗り切ろうと必死に考えて行動に移ります。 「え!それは……ちょっと此処ではお話できません…ゴメンナサイ。」 可愛らしく胸の前で手を合わせて、右に首を傾げて謝るキラ嬢。 其の健気な可愛らしい姿に、お茶の間のファンはノックアウト!! 会場の何百倍という倍率の中この日の招待券を手に入れた観客も変な雄たけびを上げ つつ、その場に倒れこみました。 何を想像自他の課、考えたくもありませんが、こんな下賎な輩にキラ嬢を渡したくは ありませんので、このまま変態として、警察に引き渡すことにしましょう。 不埒な輩が多くて困りますね。 熱狂的なファンが犯罪に走ることは良くある事だと、最近のニュースでも話題になって いましたし。 困ったものです。 さて、話は戻りまして上手い事かわされてしまった司会者さん。 しかし、タダでは起きないのが、この業界。 「あらら〜?はぐらかされてしまいましたね。ではまた次回お越し頂いた時に、宜しく お願いしますね?」 上手に、次回にまで話を持ち越すところも慣れたのもです。 そんな図々しい司会者に苦虫を潰した様な、引きつった様な笑顔で対応するキラ嬢。 「あははは……」 何とも気まずい雰囲気の中、トークは進みとうとうお披露目まで来てしまいました。 キラ嬢は泣きたくて仕方ありませんでしたが、プロとしてのプライドだけは芸能界に 入った時から、先輩のラクス嬢からしっかりと教え込まれていたので逃げ出すような 真似はしませんでした。 しかし、其のキラ嬢が善意でやってくれたと思っていたことも、所詮はムウ社長の 計らいに過ぎなかったのです。 つまり、二人は陰で上手に糸を引いていたのです。 哀れ、キラ嬢。貴方の行く道の先にはまだまだ苦難が続くのですね。 あ、今回の衣装についてまだ話していませんでした。 今回もムウ社長がデザインしたステキすぎる美しい衣装です。 はっきりって、可愛すぎます。 こんなのばっかり着せているから、変な輩が寄って来るんじゃありませんか。 さて、問題の衣装ですが。 今回の見所は『ヘソちら!!』上は、フリルのついた肩口の広いシャツ。 スカートも風にふわりと浮くような重さを感じさせないものを使用。 さて、この格好でどんな乙女心を描いた歌を歌っていただけるのでしょう!! □■□■□■□■□ イントロが流れ始め、可愛らしい笑顔とダンスを始めるキラ嬢。 次の歌い出しの部分の振り付けは後ほど。 「……ねぇ〜セクシーなのキューとなのどっちが好きなのぅ〜?」 一瞬にして会場から、変な声が・・・。 そして、其の歌の答えを声をそろえて言う彼ら。 『両方!!!!!』 馬鹿しか居ないのが男の世界なのです。 世の常なのです。 更に歌は続きますが何処まで行っても会場のノリは一緒なので、何も言わずに此処で 切りたいと思います。 さて、例の振り付けですが、簡単にご説明を。 まず、『セクシーなの』の部分ですが、胸を寄せる感じで、両腕を前に出します。 ちょっと照れた感じにやっているところが初々しさを感じてしまいますね。 次の『キュートなの』の部分ですが、こちらは先ほどとは逆の感じで口元に両手を 持って行って可愛らしく、あごを支える感じで手を開いて添えます。 其の時に小首を傾げることを忘れてはいけません。 そして『どっちが好きなのぅ〜?』で尋ねる感じで聞きます。 これで最初の出だしの部分は完璧です。 次のイントロ部分ではウウィンクを一回入れます。 そして、歌の終了間際に、両手で投げキッスをします。 これで、仕上げも終了。 ムウ社長の思惑通りにことは進みました。 「これで、今回のオリコン一位も頂きだ。」 と言う台詞をデスクの前で吐いたと言う話は、ラクス嬢しか知らないお話です。 こうして、めでたくまた一人また一人と其の可愛さで、ファンを増やしていくキラ嬢。 自分は望んでいなくとも、その可愛さを放っておく人間はいません。 頑張れキラ嬢!! 負けるなキラ嬢!! 明日のスターは君だ!! <ひっそりと活動中でもないファンクラブ> ファンクラブ会員bPアスラン・ザラ キラ嬢のことなら、誕生日血液型を始め、3サイズまでも完璧に把握中。 しかも、彼は、キラ嬢の幼馴染である。 キラ嬢が芸能界入りした事を大反対したのも彼であったが、ファンクラブ設立に一番 力を入れていたのも、無論彼であった。 つまり、彼が会長であり、権力者であり、このファンクラブの支配者であった。 恐るべき、愛の力といったところであろう。 彼が居る限り、キラ嬢の身の危険は去った・・・? 貞操の危機は脱せないのは確かな気もしなくもないが、ここではあえてオフレコという ことで話を決着したいと思います。 では、アスラン・ザラについての報告これにて終了。 〜おまけ話〜 大々的に有名になったムウ社長ですが、其の謎の出世の真相。 答えは何とも簡単だったのです。 ムウ社長が手がけた女の子たちは、皆今流行の癒し系の可愛い子ばかり。 其の仕草は、男心をくすぐって止みません。 この気持ちが分かるのは同じ狢でしかありえません。 『男は皆オオカミなのよぉ〜』なんて歌を歌ったあの人は正しかったのです。 所詮、男なんて、そんなもんなのかもしれません。 (かなり偏った独断と偏見によりますが・・・・) つまり、ムウ社長は自分が『こんな子がいたらいいなぁ。』 とか、『こんな子見たいなぁ。』 と言う自分の欲から、会社を設立して、自分の欲のままに事業を組み立てて、見事世界 の馬鹿男どもを虜にしたのです。 つまり、彼の変態的思考がなければ今日、このような歌手は居なかったと言うことです。 このことに関して、お礼を申し上げるべきなのか、この変態を刑務所に突き出して、 投獄して貰うべきなのか。 其のところは微妙なのですが。 今の世界がこれを必要としてる限り、彼の創作は続くのだろうと思います。 世界に、美少女を求める動きがある限り、彼の出世はまだまだ続くのでしょう。 其の尊い犠牲になった可愛そうなキラ・ヤマト嬢。 彼女に誰か、優しくしてあげてください。 邪な心を持った男子意外が良いかと思いますが・・・。
何も言うまい。
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