雪の日 1


裏表/同体/初めて雪が降ったので/王様犬属性決定 表遊戯=遊戯 裏遊戯=<遊戯> にて表記


砂漠には雪なんて降らないだろうから、コレがキミにとって初めての雪なんだろう。 そう思うといつもと同じ冬も今年は特別に好きになれそうだ。 寒いのは苦手だけど、キミと居たら温かいんだ。 身体が、心が温かいんだ。 こんな気持ちになれるのも、きっとキミが隣に居るから。 雪がたくさん積もったら何をしようか。 雪ダルマを作ろうか。 雪合戦をしようか。 いろんなことがしたい。 キミの記憶に残るように。 そして、ボクの記憶に残るように。 『雪の日』 歯磨きが終わって2階の自分の部屋に戻ろうとしたボクはふと、リビングの中を 覗いた。 別に特別な用事はない。ママに『お休み』を言いたかっただけだ。 けれど、リビングには誰も居なくて、テレビだけが自己主張だけをしていた。 電気代もったいないなぁ。と思って、部屋に入った。 すると、ちょうど宣伝が終わり天気予報が始まった。 最近、寒い日ばかりなのでそろそろ雪でも降るんじゃないかと僕は心配してた。 雪は好きだけど、寒いのは苦手。 首元にたくさんマフラーを巻いて、だるまみたいになって学校に行く。 そうでもしないときっと学校に行くまでに凍死しちゃう。 城之内君たちはボクのこと寒がりだって笑うけど、ボクにとっては死活問題なんだ。 とにかく、寒いのだけは苦手。 そんな僕の気持ちを無視して、キャスターのお姉さんは非情な事を言った。 「この冬一番の寒気が日本列島に近づいています。今晩から明日にかけて雪が降るで しょう。ここ数年で一番の積雪が予想されます。地域によっては都心でも20cm以上 積雪するでしょう。雪による路面凍結が予想されます。お出かけの際は十分に注意 して下さい。それでは、全国の明日の最高気温と最低気温をお知らせします……」 雪 一片の雪 一片? 都心でも20cm以上ってキャスターのお姉さんは言っていた。 温暖化の所為で最近は雪が積もらなくなっているから なら、この童実野町にも同じかそれ以上雪が降るだろう。 僕は後ろにいるもう一人のボクを振り返った。 「ねぇ、もう一人のボク。明日雪が積もったら学校さぼっちゃおうか?」 『いきなりどうしたんだ、相棒?』 ボクのいきなり言葉にキミはびっくりしたようにいぶかしんで首を傾げた。 いきなりこんなこと言われたらもう一人のボクだってびっくりするかな。 多分、ボクが君でもびっくりするだろうし。 「どうもしないよ、ただ言ってみただけ。さ、もう寝よう」 遊戯は屈託ない笑顔を見せると<遊戯>から顔を背けた。 それがなんだかあまりにも寂しそうで<遊戯>は手を伸ばした。 『あ、相棒…』 けれど伸ばした手は何もつかめずに空を切る。 実体のない自分は相棒の肩に触れることも出来ない。 触れたと感じさせることも出来ない。 ただ、空気がそう感じさせることしか今の自分には出来なかった。 「どうしたの?寝よう」 何もなかったように遊戯はテレビのリモコンを手に取り電源を落とした。 それをテーブルの上に置くとリビングを出るために足をドアに向けて歩き出す。 その夜は雪の話はしないまま終わった。 ■□■□■□■□ 朝、寒さで目が覚めた。 時計を見たらまだ4時を回ったところだった。 暫くの間、布団の中で寝返りを打っていたがどうやっても睡魔はやってこなくて。 外があまりにも静かで怖くなって窓を開けた。 「わぁ」 窓の外は一面の銀世界。 吐き出す息が白くて、視界をさえぎる。 でも、その息さえも雪に溶けてしまった。 月明かりもなかった。 雪がぼんやりと光っているのはきっと何にも汚されていないからなんだろう。 真っ白で、何にも知らない雪。 土足で踏みにじってやりたかった。 自分は汚い人間だから。 雪みたいに何も知らずに真っ白でいられない。 真っ白な雪が羨ましくないのかと聞かれたら、糞喰らえと応えただろう。 『あ…いぼ…う…?』 いつからそこに立っていたんだろう。 そこには<遊戯>が何ともいえない顔で遊戯を見ていた。 「おはよう。ごめん、起こしちゃったかな?」 『…あ、いや。別に。ちょっと静か過ぎるから気になっただけだ』 きっと何も聞かないほうがいいのだろう。 昨日と同じ今日を営みたいのなら。 「あ!!ねぇもう一人のボク、外見て!!一面の銀世界なんだよ」 興奮したような相棒の声。 コレでいいんだ。 こうやって日常を守っていく以外今の俺には何も出来ないんだ。 『どれ』 俺は窓辺によって窓の外を覗き見た。


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