俺とカカシが初めて会ったのは、白い塔の中でだった。 九尾を腹の中に封印された俺は、里の監視下に置くために、『保護』という名目で『隔離』 されていた。 部屋には、窓がひとつだけで、四方を白い壁が囲っていた。 唯一の窓は空に繋がり、光が差込む。 光のあたらない部分は暗く、長しえの闇が広がっていた。 とても静かで、部屋を訪れるものはほとんど居なかった。 ただ、与えられるだけの毒入りの食事を食べ。 いつ死ぬとも分からぬ、日々を送りながら、それでも死ねずに、過ごしていた。 九尾入りの体は、無駄に丈夫で、俺に死を届けてはくれなかった。 それを、辛いとも、悲しいとも、寂しいとも思わず。 それしかなければ、それが当然だと思い、不自由とも、不便だとも思わず。 しかし、ある日を境に、それは変わった。 三代目がカカシを連れて、塔にやってきた。 俺がまだ2つか3つのときで、カカシも若かった。 少なくとも、今みたいに、飄々と柳に風のような雰囲気ではなかった。 初めて見たカカシは、ただ、刺すような冷たい空気をまとっていた。 さながら、堅牢な鎧で必死に傷ついた内面を守っているようだった。 三代目が俺を抱き上げ、一つ二つ質問をした。 俺はただ、『わからない』とだけ答えた。 その答えに、三代目はひどく喜んで、様相を崩した。 顔合わせの日は、それで終わり。 俺は、去ってゆくその背に手を振った。 そうすると、三代目が喜ぶと知っていたから…。 何日かして、カカシが再び塔を訪れた。 俺は、何をするでもなく、光の下に座っていた。 カカシは、なんだか苦しそうな顔をして、立っていた。 「かぁし」 「…っ」 「かぁし、なにしてるの?」 「…」 「なゆが…コワイ?」 どうして、そんなことを言ったのか今では、よく思い出せない。 ただ、それがふさわしいと思ったからそう言ったまでで。 カカシは、ビクリと肩を震わせて、部屋を飛び出していった。 「かぁし…ばいばい」 もう、来ないかもしれないと思った。 しかし、その予想に反して、カカシはいろいろなものを持って、部屋を訪れた。 いつの間にか、俺も、カカシもお互いと一緒に居ることが普通になり。 ただ、幸せな時間を過ごしていた。
エセ喪中シリーズ第二夜です。 過去を捏造して楽しんでます。 これはPCに保存されている書きかけのSSから。
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