その後のことをよく覚えていない。 何があったのかとか。 何を殺して、俺はどんな姿をしていたのか。 恐ろしい化け物に成り果てて。 殺しつくした。 何も残らないほどに。 そうして、また戻ってきた。 隣に、腰を下ろして、肩に頭を乗せて、目を閉じた。 さっきまで温かかった体は、冷たくなってしまった。 先生の体温はもともと低くて、大きな手で俺の頭を撫でてくれるとき、ちょっと冷たくて。 冬は、ほっかいろだ何だといって背中に手を入れてきて。 その度に、飛び上がっていた気がする。 でも、それも、きれいな思い出になった。 本当に、思い出になってしまった。 なんだか、とても疲れた。 血を浴びて、真っ赤に染まったこの姿でも、俺だって分かってね? 世界は赤一色に染まり。 俺の目には灰色にしか映らなくなった世界。 あなたを失って、それでも生きていかなくてはいけない。 俺は、この里を捨てることはできないし。 里をすって後を追うことを、あなたは許さないと思う。 例え、そばに行くことができたとしても、あなたは俺を追い返すだろう。 だから、俺はこの灰色の世界で、もう少しの間だけ、人として生きていくよ。 木ノ葉の仲間が、ナルトを見つけたとき、何もかもが赤く染まっていた。 大地も、空も、人も何もかも。 赤以外の色を忘れてしまったかのように。 誰かが、震える声で、「ナルト」と声をかけた。 その声にこたえるように、伏せられていた瞳が向けられた。 見なければよかったと、後に思うがもう遅い。 見てしまった、見てしまったのだ。 はっきりと、鮮明に、脳裏に焼きついてはなれなくなった。 その瞳は血塗れた赤に染まっていた。 空のように碧い、瞳はもうなく。 海のように、深い群青も。 湖のように、揺れることない水面の藍も。 どこかに置き忘れてきてしまったのだ。 傍らで、静かに息を引き取った上忍が持っていってしまったのだ。 そのきれいな『アオ』を。 そして、何度でも思い出させるように、その激しい『アカ』を置き去りにして。 赤い瞳は、あの人の色。 あの人が残した、この瞳。 赤く、呪われたこの瞳。 あなたの瞳をもらうことはできないけれど。 おそろいの『アカ』は俺のお気に入り。 ただ、泣きたいくらい、見っとも無くても、 束の間の夢を、見せてくれた、あなたを 触れた温もりを、優しさを、俺に教えてくれた 今なら言える、偽りない、真実を ただあなただけを、愛してた
エセ喪中シリーズ第五夜です。 終わりました。 愛してたんだけど、いえなくて。 もう、聞こえてないだろうケド。 それでも伝えたくて、やってみた感じです。 『好き』と『愛してる』の大きな壁をね。 感じて、挑戦してみたこのお題。 『好き』は一杯伝えたのに、どうしてたったの1回でも、『愛してる』と。 そういえなかったのかって、お話でした。 以上。
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