『ビビリくん』 『ウスラトンカチ』 『このドベ』 何度怒っても、鼻で笑って、その言葉を投げかけられた。 ただ、大人たちのように蔑むような目で言われたことは無かった。 どこか、優しさを残したその瞳が嫌いではなかった。 気に障らなかったかと言われたら、速攻で”NO”と応えるけど。 すかしたヤローで。 同い年なのに、その背はとても遠くて。 自分は、劣等感の塊のようなものだったのだろう。 ただ、大人たちはよく、俺とサスケを比べた。 その声が聞こえないとでも思っているか。 俺はいつも、冷めた目で、その隣を通り過ぎた。 後ろから卑下た笑い声が聞こえたが、気にしなかった。 いつものことだ、と。 目の前に立つその背に何度、助けられただろう。 その背にかばわれて、どれだけ、恐ろしい思いをしただろう。 同じ年なのに、その背がとても大きく見えた。 寄りかかるつもりなど無かった。 その隣に、立つことが目標だった。 俺は追いつくのに必死で。 あいつがどんどん遠ざかっていくのを歯を食いしばって追いかけた。 手を伸ばしても、あいつはどんどん高みに上っていく。 こけたら、もう、追いつけない。 ただ、がむしゃらだった気がする。 なにか、必死にしていれば、置いていかれないと思っていた。 サスケが里を抜けて。 終末の谷でお互いに命がけだった。 ただ、下手な言葉なんて無意味だと感じた。 近づいたと思ったその距離は遠くて。 目が覚めたときにはもう、居なかった。 雨にぬれた体は冷え切っていて。 心はもっと、冷え切っていた。 サスケが手の届かないところに行ってしまった。 自分でも、あいつを止めることができないとむざむざと見せ付けられた。 でも、俺は笑った。 何の根拠があったのか分からないけれど。 サスケを連れ戻せると、思っていたのだ。 あんなにも、遠い背中を見せられたのに…。 大蛇丸のアジトで再開したとき。 その声に、心がざわついた。 焦がれていた、その姿を再びこの目で見ることができた。 二言、三言、怒鳴りつけて。 あいつは、昔と変わらない態度で、鼻で笑った。 けれど、どこか里の大人たちのような蔑む目線が含まれていて。 また、心がざわついた。 結局、意見は平行線のまま、戦闘に入り。 その、力の差に愕然とした。 あいつの手のひらの上で、いいようにあしらわれて。 どうやっても、追いつけない。 追いつきたかった。 だから、追いかけた。 周りから諦めろと言われて。 どうしても諦め切れなくて。 盲目的に、ただ、追いかけた。 これでも、遠いなら、また、追いかけるだけだ。 誰に止められようと、ただひたすらに。 けれど、その背に手が届いたとき、何が見えるんだろう?
サスナルだよ!! 久しぶりに書きました。 背中を追うのって辛いんだぜ。 でも、追われるほうはもっと辛いんだぜ。
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