07 想う

ベッドによじ登って窓を開ける。 カーテンがひらひらして、少し冷たい風が部屋に吹き込んだ。 お風呂上りの体には、少し寒かったのかぶるっと、体が震えた。 両手で、自分の体を抱いて手のひらで撫でる。 ちょっと、あったかくなったけど、やっぱり寒い。 足元に蹴飛ばしていた、掛け布団を引っ張りあげる。 頭から、布団をかぶって蓑虫のようになる。 最初は冷たかった布団も、だんだんあったかくなる。 空は快晴で、欠けたお月様と、お星様がきらきらしいて。 部屋の電気は消してしまったから、部屋の奥のほうは真っ暗。 ベッドの近くだけが、ぼわっと明るい。 今日はなんだか眠気が襲ってこなくて。 布団の上に蓑虫になったまま、空を見上げる。 あの人は今頃どうしてるのだろう? この空を見上げているだろうか? 寒い思いはしていないだろうか? ねぇ、俺のこと考えてくれてる? 忘れてなんかないよね? 「ねぇ、イタチ兄ちゃん」 □■□■□■□ イタチがナルトの傍に居た期間は短い。 ナルトが塔に幽閉されていたうちの、ほんの数ヶ月。 あっという間に月日は流れたが、お互い輝いていた日々。 イタチは木ノ葉を抜けるとき、ナルトも連れて行くはずだった。 けれど、ナルトは頑なに首を縦に振らなかった。 『ナルト君、一緒に行こう。外の世界へ。ここにいても君に自由は無い』 『イタチ兄ちゃん、なる、いっしょにいけないってば』 『この、牢獄にキミを置いてはいけない!一緒に、外へ!!』 『…っごめん…なさい』 自分の立場をきっと、この里の誰よりも分かっていたのだろう。 泣きはらして赤い目は、俺をきつく見つめていた。 両手は、服のすそを握り締めて白くなっていた。 この幼い子は、その小さな体で、里を支えていたのだ。 いかに、木ノ葉が忍五大国の頂点に立て居ようと。 ”九尾の人柱力”が外に放たれたと分かればパワーバランスは崩れる。 それこそ、先の大戦の二の舞になることは必至だ。 幼いナルトがそのことを本当に理解していたのかどうかは分からない。 けれど、イタチがどんなに説得してもナルトは”いかないってばよ”というだけ。 決して、意見を覆さなかった。 追い忍が放たれるのも時間の問題だった。 『バイバイなの、イタチ兄ちゃん。なる、いっしょにいれなくても、だいじょーぶ。 さびしくないってばよ?じいじもいる。だから、だからっ!!』 最後に見た笑顔は、涙でぐしゃぐしゃだったけど。 『必ず、迎えに来るから』 『いっしょにいくってなる、ゆわないよ?』 『そのときはキミを攫って行くよ』 □■□■□■□ 「ふぁ」 夜が更けるにしたがって、だんだん眠気が襲ってくる。 ふわふわとした気分になって、蓑虫のまま、ベッドに転がる。 昔はこうやって寝転がると、イタチ兄ちゃんがぽんぽんとお腹の辺りを叩いてくれた。 そのリズムが、優しい眠りを運んでくれて、とても好きだった。 自分でまねしてお腹の辺りを叩いてみた。 イタチ兄ちゃんが昔、してくれたように。 「…おやす…みなさい。いたち…にぃ…ちゃ」 優しい月明かりの下で、優しい眠りに包まれていますか? 悪夢に、うなされてなど居ませんか? 優しい夢の中で、夢の中ではせめて微笑んで。 俺のこと、ぎゅって、抱きしめて欲しいってばよ。


ちっさいナル君の面倒をイタチ兄さんが見てたらいいなと。 短い時間でいいんです。 カカシ君の後釜的な存在。 大きくなったナル君がイタチ兄さんのこと忘れてても。 それは、それで美味しいかなと…。

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