09 悩む

珍しく、依頼を無事に済ませ金に余裕のあるGBの二人はコンビニにいた。 太陽も高く上り、胃が空腹を訴えたため食料を調達しに来たのだ。 蛮が手に持ったカゴにはお握りやら、飲み物やらいろいろがさがさと入っている。 あれやこれやと、銀次が入れたために結構な量になっている。 そろそろ、会計をしようかと蛮がレジに足を向ける。 それを見た銀次が、 「デザート!!」 と菓子コーナーに小走りに向かう。 こんだけ、カゴに食べ物入れて、まだ食べんのかといった顔で蛮がソレを目で追う。 コンビニで弁当などを買うとき、銀次は決まって甘いものを買いたがる。 金に余裕があるときは、まず、迷わない。 多少、難があるときは、俺の顔色をチラッと伺う。 けれど、目線はすでにプリンやらゼリーやらに向かっている。 何をそんなに買いたいんだと思うが、ちらちらとこちらをうかがう顔を見ていると、 仕方ないかと思ってしまう。 そういう時は、顎で甘味コーナーをさして選ばせてしまう。 嬉しそうな顔をして目星をつけていたやつを急いで取りに行く姿は18歳の男とは思えない。 そして、ソレを見ながら銀次に対して俺も大概甘いな。と思う。 どれにしようかと、楽しそうに選んでいる銀次の姿を見るのは好きだ。 アレもいいな、コレもいいな、と手が右へ左へと動く。 目線は、いろいろなものに目移りして、忙しそうだ。 今日も例に漏れず、菓子コーナーに走っていった相棒を目で追う。 プリン、ゼリー、シュークリームと楽しそうなメロディー。 ちょこんとしゃがんで悩んでいる姿は、女の子のようだ。 「う〜ん、悩むなぁ」 なかなか今日のデザートを決められない銀次。 どうも、いくつか食べたいものがあるようだ。 甘いものとなると、いつも以上に優柔不断になる。 銀次は、全部を買うことはできないが、いくつかいいだろうかと手を伸ばす。 けれど、蛮がすかさず釘をさす。 「銀次、菓子は一つだけだからな」 「…はぁい」 残念そうに、伸ばした手を戻す。 ここで、自分はタバコを買い込むくせにとは言わない。 タバコが切れて怒り出すと、大抵いつもより多く殴られるからだ。 学習能力の低い銀次でも、さすがに学習した。 けれど、いくつもある菓子の中から今日の1つを決めるのは難題だ。 また、次ぎ来たときにと思うが、次っていつだろう? そうやって見送って、食べれなかった菓子はたくさんある。 季節限定品だったり、入れ替えだったり。 「うぅ〜」 やっぱり決められない、どうしよう。 雑誌を立ち読みしていた蛮が、待ちくたびれ銀次を呼ぶ。 「早くしろっ」 「あ、ちょっ、待ってってば!!」 あわてて、銀次は蛮を振り返る。 しかし、無情にもレジにカゴを置いて精算しようとしている。 「蛮ちゃん!!」 「遅せェ」 避難するような俺の声と、苛立った声の蛮。 カゴを目の前に、バイトの店員が困った顔をしている。 蛮は気にせず、いつものタバコを何箱か一緒に頼み、精算を始めてしまう。 銀次はあわてて、ひとつ袋をつかんでレジに走りよる。 「これもっ」 「はい」 バイト君はその菓子を手にとって、バーコードを読ませる。 何とか、間に合ったことに銀次は胸をなでおろすが、ジト目で蛮を見る。 その顔は”ちゃんと選びたかった”と書いてある。 そのままちょっと無言になる。 ”ポイントカードはお持ちでしょうか?” ”お作りいたしますか?” と、決まりきった言葉をバイト君が言って”いらねぇ”と蛮がぶっきらぼうに応え。 「2753円になります」 財布から、夏目さんが3枚出て行った。 後ろ髪を引かれる銀次を置いて、蛮が袋をつかんで歩き出す。 あわてて付いてくる銀次を知らん顔して、コンビニを出る。 隣に並んだ銀次に”おめぇも持て”と袋をひとつ押し付ける。 「ねぇ、蛮ちゃんたらっ。怒んないでよ!」 わたわたしている銀次を尻目に、悩みなさそうでいいなと息を吐く。 あのバイトはチェックだ。と蛮が思っているなど銀次は思いもしないだろう。 どいつもこいつもホイホイ釣りやがって。 変なヤツ引っ掛けてんじゃねぇよ。 ったく。 けれど、ぐちぐち言う蛮の悩みも、銀次と大差ない。


お菓子で悩む銀ちゃんと。 自覚の無い銀ちゃんに悩みの種が尽きない蛮ちゃん。 第3者からしてみれば、どっちも同じだ。 って感じです。

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