生あくびをかみ殺しながら、窓枠に腰掛ける。 月が空にぽっかりと大穴を明けている。 星は静かに形を潜めている。 まるでひれ伏せと、月が反り返っているようだ。 「つまんねェ」 ふんぞり返って偉そうにしてる月もくだらねぇ。 当たり前のように、椅子の上にふんぞり返ってるやつらもくだらねぇ。 どいつもこいつも、めんどくせェだけのやつらだ。 毎日が平坦でつまらない。 唯一俺に、刺激を与える存在は違う任務。 会う機会もめっきり減って。 毎日、教室でバカやっていた頃が少し懐かしい。 悪戯を考えて、”めんどくせェ”なんてぼやきながら、でも、やった。 そういう、バカな事に頭を使うのは結構楽しかった。 だが、下忍の任務は頭なんて使わない。 単純な、体力勝負の任務が基本だ。 頭脳派の俺としては、御免被りたい任務ばかりだ。 で、そんな俺を毎日面白そうに見ている、アスマ。 銜えタバコはしょっちゅうで。 へとへとにばてている俺たちを、何が楽しいのかニヤニヤ見ている。 ありゃ俺たちを肴にタバコを吸っている顔だ。 やたら旨そうに吸ってんのは俺たちに対する嫌がらせか。 ちったぁ手伝えってんだ。 まったく高みの見物とはいいご身分で。 どろどろになって、家に帰って。 風呂入って飯食って。 疲労が出ている体をベッドに転がして寝る。 ま、そんな感じで毎日が過ぎていく。 年頃の俺としちゃ、多少の刺激が欲しいってもんだ。 平凡な人生が一番だと分かっていても。 んなこた、関係ねぇ。 こんな暇なら、アカデミーでバカやってたほうが楽しかった。 兎に角、暇を和らげる程度の刺激が欲しい。 そう、例えば、美人にキスされるとか。 「そんなことが、望みなのか?」 悪いか。誰しも、思うことだろ。 てか、そんなことだと。 この歳だったら、当たり前だろ。 俺だって、男だ。 普通の、12歳男子。 「IQ200だろうが、所詮普通の男の子だな」 普通の何が悪い。 その前に、”所詮”てなんだよ。 ってか、さっきからなんだ。 人の妄想に突っ込み入れんなよ、うぜぇな。 「あ゛?」 ふと、現実に戻れば至近距離に綺麗な青。 昼の空の色が、視界一杯に広がっている。 拡がりすぎて、判別が追いつかない。 何だ、コレ…。 「っ!!」 ガタガタッ 腰掛けていた窓枠から落ち、後ろのベッドに転がる。 第三者から見たら、何て滑稽な姿だろう。 気配がしなかった。 いや、したのかもしれない、俺が気付けなかっただけで。 バクバク言う心臓を服の上から手で押さえつける。 手を付いて、上半身を起こす。 月の光で逆光になっているが、それが神々しさを与える効果になっている。 先ほどまで自分が座っていた窓枠には、あいつが居た。 「よ、シカ」 綺麗に笑う、禁色の死神が右手を軽く上げていた。 暗部服とフード付きのコート。 フードは外されていて、その金色の髪が風に軽く遊ばれている。 「入るぞ」 そういって、サンダルを脱ぎ、許しも得ず勝手に部屋に入ってくる。 静かにベッドを越して、床までふわりと進む。 ベッドの上でアホ面をして居る俺を一向に気にせず。 するすると手甲やベストを床に脱ぎ捨てていく。 金具がカチャカチャという音と、布と肌が擦れる音が部屋に響く。 気がつけば、ノースリーブのタートルネックの上着も脱いで、下着だけ。 黒のボクサーパンツだけの姿が、月明かりに照らされる。 「シカ、お休み」 そう一言言って、あいつの唇が俺のに触れて。 シーツの下にもぐりこんだ。 はっとなって、振り返る。 射抜くような瞳とかち合う。 「刺激が欲しいなら、いくらでも」 唇を人差し指で撫でる。 「な、な、なっ」 多分、茹蛸みたいに真っ赤になってるだろう。 そりゃもう、情けないくらいに耳まで真っ赤にして。 さっきよりも激しくなる鼓動。 いくらなんでも、刺激がつぇっての。 程なくして、くすくすと笑う声が、シーツの中から聞こえる。 からかわれているのだと、直ぐ気がついた。 けれど、とっさの出来事が多すぎる。 「ナルっ!」 「シカってば可愛いってばよ」 「お前な!責任取れよなっ」 そのまま、シーツの中になだれ込んだ。 ―――クソッ、恥ずかしくて顔出せねぇ。 瞳の青にも。 唇の赤にも。 背筋がぞくぞくするほどそそられた。 こんなに強い刺激なんて求めてねェ。 「これ以上惚れされてどうすんだよ」 情けない声が、シーツの波に木霊した。
『VOLTSの面々の銀次に対しての想いとかね。 ちょっと書きたいなと。 想っているしだいでございます。 いやしかし、ナルトもいいな。 その強い瞳に惚れたシカたんとか。 いいなぁ どっち書こうかなぁ 悩みどこです。』 なんて、最初は言ってました。 で、出来上がったらコレと。
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