13 慰める

今日も振られたと、泣きついてきたのは幼馴染で。 もう、101回目のプロポーズも顔負けするんじゃないかってくらいのアタックっぷり。 それでも、相手が振り続けるもんだから、どうしようもない。 毎回、毎回、よくもめげずにアタックし続けるものだと思う。 アイツの何処がいいのか、俺にはさっぱり分からねぇ。 確かに、女が騒ぐような顔とそれなりの頭はあるが。 だから、ソレがどうしたって話だ。 ナルトのヤツが、そんなことでアイツを好きになるなんてまずない。 というか、よく考えてみればなんで男に必死こいて告白してんだ。 それなりに、ボインの姉ちゃんが好きだったはずだ。 なのに、何故に男。 しかも相手は、あの“うちはサスケ”だ。 どう考えても、ない。 同じ男としてアイツの何がいいのかさっぱり分からない。 けれど、そのサスケが大好きなナルトは今日も盛大に振られて、ビービー泣いていた。 「…っひ…ぅ…ぅう〜」 「今日も良い泣きっぷりだな」 「…う…ぅ〜」 泣きすぎて、呼吸が苦しそうだ。 背中を優しく撫でて、涙と鼻水がごっちゃになった顔を拭いてやる。 男泣きもここまで来ると裸足で逃げ出しそうだ。 呼吸が落ち着いてきたのを見計らって、本題に入る。 「で、どうした?」 「…何も…言えなかった」 「告白しに行ったんだろ?」 「でも、サスケのヤツ…俺が何にも言ってないのに“断るっ!!”って…」 そのときを思い出したのか、引っ込み始めていた涙が、再び溢れ出す。 別に、地雷を踏んだとか思わない。 ちゃんと聞いてやらないと、何しでかすか分からない。 大きな、蒼い瞳からぼろぼろと涙が零れて、地面に落ちる。 「あぁ〜ん…うあぁぁ〜!!」 わぁわぁと盛大に泣き出す。 よく、こんなに涙が出るものだと感心する。 しかし、一度もイヤだと思ったことはない。 こいつがサスケに振られて、泣きに来るのは俺のこだけ。 他のヤツには、こんな真っ赤な目で泣いているところなんて見せない。 それは意地だったのかもしれないし、単に俺が良いように使われてるだけかもしれない。 それでも、ナルトが頼るのは俺だということが嬉しかった。 でも、そろそろ、このポジションも替えたくなってきた。 想い人が他のやつのこと考えて泣いているのを見るのは止める。 俺の胸で泣いている姿は、確かに可愛いが。 できるなら、俺のこと考えて泣いて欲しいと思ってしまった。 だから、まだ、我慢できるけど。 お前のこと想ってるのをそろそろ、自覚して欲しい。 優しいお守りはさよならして。 お前の恋人に昇格させてくれ。 「なぁ、ナルト。俺にしとけよ」 「なに…言ってんだってば」 「お前の隣、俺にしとけよ」 涙を拭ってやりながら。 背をさすりながら。 焦ったりしない。 まだ、本当の恋を知らないから。 少しずつ、糸を手繰り寄せて。 涙が引っ込んだ、ナルトの第一声は予想済み。 「なぐさめなら、ノーセンキューだってばよ!!」 両腕で大きな×印。 そんなの知ったこっちゃない。 「おまえ、既に俺に慰められてるだろうが」 「へ?…そうなのかってば?」 「毎回、毎回、優しく慰めてやってただろ?」 涙を拭って。 鼻水をふき取って。 背を撫でて。 胸を貸して。 めんどくせぇ。が口癖の俺がソレを一回も言わず。 自分から、その“めんどくせぇ”事に首突っ込んだのは。 全部、お前のためだ。 「だって、だって!!」 「別に、今すぐ返事が欲しいわけじゃない」 「俺は、サスケが好きでっ」 「俺は、ナルトが好きだ」 「だ、だ、だから!!」 泣いてた赤鬼が、今度は真っ赤になって焦ってる。 やっぱり、サスケにはやれない。 今日から、ポジション替え。 優しい相談役から恋人候補に。 まずは、景気よく。 「っ〜〜〜!!」 軽い、キスから。 自覚意識を持たせましょう。 「俺しか、見えなくさせてやる」 ぽんぽんと頭を撫でて。 いつもどおりの態度で、帰るかぁとズボンに付いた草を払う。 ホレと手を出して、ナルトを立たせる。 いつものように。 毎日の帰りのように。 けれど、ナルトは真っ赤になって、意識しまくりで。 なかなか良い反応を見せている。 「帰んぞ」 「…」 「今日の晩飯なんだろな」 「……っシカマル!!」 「んだよ」 「俺、あきらめないってばよ」 「俺も、今回ばっかりは諦めねぇから」 多分、暫くは平行線。 だんだん、振り向かせてやる。 前の男のことなんてちらとも思わせないくらいに。 慰めも作戦のうち。


ただではやらんよ。

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