今日も振られたと、泣きついてきたのは幼馴染で。 もう、101回目のプロポーズも顔負けするんじゃないかってくらいのアタックっぷり。 それでも、相手が振り続けるもんだから、どうしようもない。 毎回、毎回、よくもめげずにアタックし続けるものだと思う。 アイツの何処がいいのか、俺にはさっぱり分からねぇ。 確かに、女が騒ぐような顔とそれなりの頭はあるが。 だから、ソレがどうしたって話だ。 ナルトのヤツが、そんなことでアイツを好きになるなんてまずない。 というか、よく考えてみればなんで男に必死こいて告白してんだ。 それなりに、ボインの姉ちゃんが好きだったはずだ。 なのに、何故に男。 しかも相手は、あの“うちはサスケ”だ。 どう考えても、ない。 同じ男としてアイツの何がいいのかさっぱり分からない。 けれど、そのサスケが大好きなナルトは今日も盛大に振られて、ビービー泣いていた。 「…っひ…ぅ…ぅう〜」 「今日も良い泣きっぷりだな」 「…う…ぅ〜」 泣きすぎて、呼吸が苦しそうだ。 背中を優しく撫でて、涙と鼻水がごっちゃになった顔を拭いてやる。 男泣きもここまで来ると裸足で逃げ出しそうだ。 呼吸が落ち着いてきたのを見計らって、本題に入る。 「で、どうした?」 「…何も…言えなかった」 「告白しに行ったんだろ?」 「でも、サスケのヤツ…俺が何にも言ってないのに“断るっ!!”って…」 そのときを思い出したのか、引っ込み始めていた涙が、再び溢れ出す。 別に、地雷を踏んだとか思わない。 ちゃんと聞いてやらないと、何しでかすか分からない。 大きな、蒼い瞳からぼろぼろと涙が零れて、地面に落ちる。 「あぁ〜ん…うあぁぁ〜!!」 わぁわぁと盛大に泣き出す。 よく、こんなに涙が出るものだと感心する。 しかし、一度もイヤだと思ったことはない。 こいつがサスケに振られて、泣きに来るのは俺のこだけ。 他のヤツには、こんな真っ赤な目で泣いているところなんて見せない。 それは意地だったのかもしれないし、単に俺が良いように使われてるだけかもしれない。 それでも、ナルトが頼るのは俺だということが嬉しかった。 でも、そろそろ、このポジションも替えたくなってきた。 想い人が他のやつのこと考えて泣いているのを見るのは止める。 俺の胸で泣いている姿は、確かに可愛いが。 できるなら、俺のこと考えて泣いて欲しいと思ってしまった。 だから、まだ、我慢できるけど。 お前のこと想ってるのをそろそろ、自覚して欲しい。 優しいお守りはさよならして。 お前の恋人に昇格させてくれ。 「なぁ、ナルト。俺にしとけよ」 「なに…言ってんだってば」 「お前の隣、俺にしとけよ」 涙を拭ってやりながら。 背をさすりながら。 焦ったりしない。 まだ、本当の恋を知らないから。 少しずつ、糸を手繰り寄せて。 涙が引っ込んだ、ナルトの第一声は予想済み。 「なぐさめなら、ノーセンキューだってばよ!!」 両腕で大きな×印。 そんなの知ったこっちゃない。 「おまえ、既に俺に慰められてるだろうが」 「へ?…そうなのかってば?」 「毎回、毎回、優しく慰めてやってただろ?」 涙を拭って。 鼻水をふき取って。 背を撫でて。 胸を貸して。 めんどくせぇ。が口癖の俺がソレを一回も言わず。 自分から、その“めんどくせぇ”事に首突っ込んだのは。 全部、お前のためだ。 「だって、だって!!」 「別に、今すぐ返事が欲しいわけじゃない」 「俺は、サスケが好きでっ」 「俺は、ナルトが好きだ」 「だ、だ、だから!!」 泣いてた赤鬼が、今度は真っ赤になって焦ってる。 やっぱり、サスケにはやれない。 今日から、ポジション替え。 優しい相談役から恋人候補に。 まずは、景気よく。 「っ〜〜〜!!」 軽い、キスから。 自覚意識を持たせましょう。 「俺しか、見えなくさせてやる」 ぽんぽんと頭を撫でて。 いつもどおりの態度で、帰るかぁとズボンに付いた草を払う。 ホレと手を出して、ナルトを立たせる。 いつものように。 毎日の帰りのように。 けれど、ナルトは真っ赤になって、意識しまくりで。 なかなか良い反応を見せている。 「帰んぞ」 「…」 「今日の晩飯なんだろな」 「……っシカマル!!」 「んだよ」 「俺、あきらめないってばよ」 「俺も、今回ばっかりは諦めねぇから」 多分、暫くは平行線。 だんだん、振り向かせてやる。 前の男のことなんてちらとも思わせないくらいに。 慰めも作戦のうち。
ただではやらんよ。
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