3月。 別れの季節。 一歩、前へと踏み出す。 卒業式が各地で行われ、涙涙のお別れ会が連日、行われている。 ここ、木ノ葉学園でも例に漏れずといった感じで。 みんな、小、中と一緒に上がって来た。 高校になって初めて、シカマル、サクラちゃん、サスケ、いのの4人と別れた。 ま、一生埋まらない学力差を歎いても仕方ない。 ランクを下げて同じとこ通うとか言って、喧嘩したのも懐かしい思い出だ。 俺が、ふざけんなっていって殴り飛ばした。 その後、スゲー喧嘩になって。 絶交だと高らかに宣言なんかしちゃって。 でも、いつの間にか元通りで。 結局、別々の高校に行った。 一生の別れでもないし。 引越するわけでも何でもない。 ただ、ちょっとお互いに一緒にいる時間が減るだけで。 幸い、高校同士がそんなに離れていなかったので、帰りは一緒にゲーセンとか行った。 カツアゲされそうになって、ちょっと喧嘩なんかもした。 まぁ、後でセンコーにバレて、反省文を書かされた。 なぁんも思い付かなくて超焦った! そんなこんなで、あっという間に3年は経って。 3月1日。 全国的に高校の卒業式。 曜日とか関係なしに。 それぞれ、違う顔して式を待つ。 推薦入試で早々に結果を出したやつ。 前期の結果待ちのやつ。 専門学校に行くやつ。 就職するやつもいる。 人生人それぞれってことだ。 1月のセンターが終わる頃から自由登校になり、顔を合わせることも少なくなった。 そのせいもあり、「久しぶり」と互いに肩を叩いている。 笑い声は尽きない。 男女混合で名前順に並び、体育館に向かう。 きっちりと並んだパイプイス。 檀上にでかい花。 そして、ずらっと並んだ来賓の御偉いさん。 退屈な祝辞を聞き、送辞、答辞を交わし。 国歌、校歌、仰げば尊しを歌い。 約2時間の日程を経て、形式通りの式が無事に終わった。 卒業証書とアルバムを貰ったら、教室はお祭り騒ぎで。 同期やら後輩やらに揉みくちゃにされ。 気がつけば、学ランのボタンは一つも残ってなかった。 そらもう見事に。 何とか、待ち合わせの場所に着いたときにはヨレヨレになっていた。 「大丈夫か、お前」 「公開ストリップショー一歩手前だったってばよ」 「そら大変だったな」 「ホントだってばよ〜」 パーカーがなかったらホントに危なかったかもしれない。 冷静に考えてみたら実は、貞操の危機だったのでは…。笑えん。 「答辞、うまくいったか」 「モチロン★最高にドキドキしたけどうまくいったってば!」 「よかったな」 「おう!」 何て、話してる間に段々暗くなっていく。 お互い門限なんてもんはないけど、育ち盛りで腹は減る。 どちらの腹の虫が泣いたかは言うまでもない。 近くのファミレスに入って、夕飯にすることにした。 「ナルは専門学校か」 「シカは進学だろ」 「スポーツ特待で進学すると思ってたのによ」 「プロになる気なかったし。それよりやりたいこと見つけたから」 「ったく。気付いたらバイトまでやってやがるし」 「シカがきたときはビビったってばよ」 「そりゃこっちの台詞だ」 ふと、店に入ったらナルトがいて。 営業スマイルで顔を向けたらシカマルがいて。 お互い固まった。 最近付き合いが悪いなと思えば、こんなとこにいたのか、って感じで。 そんなたわいない話をしながら、料理をガンガン胃に詰めていく。 店員の驚く顔を尻目に、デザートまでしっかり胃に納めて会計を済ませる。 バイト代が入ったナルトが気前よく財布を持った。 まだ少し寒い、夜の街を白い息を吐き出して歩く。 お互いに制服で歩くのも、コレが最後だ。 「あ、そうだ」 「ん?」 シカマルの隣を歩いていたナルトが、小走りに前に出る。 どうしたのかと、ソレを歩調を変えずに見送るシカマル。 制服をまさぐって何かを探しているようなのは見て取れた。 そして、目的のものを探し当てたのか、 「シカにこれやるってばよ」 振り返りながら“何か”が放られる。 それは、綺麗な放物線を描いて、手のひらに収まった。 「何だ?」 よくよく見れば、手に放られたのは金ボタン。 3年の間に擦れて少し鈍い色になったそれ。 「第二ボタン、とっさに死守したんだからありがたく思えってばよ」 「へいへい」 「俺の3年間の思いが詰まってんだから大事にしろってばよ!」 「第二ボタン…な」 夏服の間は、押入れで大人しくしてたんだろうなぁ。 と、ソレを手のひらの上で転がす。 「夏はチェーン通して首から提げてたから。ホントに3年間一緒だったんだってば、ソイツ」 心を読まれたのかと思った。 そんな、顔をしていたのだろうか。 道の先で、綺麗に笑うその笑顔を見て反則だと思った。 別々の高校に進学して。 別々の高校生活を送って。 お互いに知らないことが増えた。 数え切れないくらい、下らない喧嘩もした。 けれど、アイツは最初からコレを渡すことを考えていた。 “特別”ってこういうことなのかもしれない。 ニヤケてる自覚はある。 「別れたらさ、また、出会えばいいだけのことだってばよ!」 今日、高校を卒業した。 たくさんの仲間と別れを交わした。 けれど、ソレは出会いへの一歩。
恥ずかしい発言も難なくするのが、ナルト。 みんな、その度直球に当てられれば良い。
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