14 別れる

3月。 別れの季節。 一歩、前へと踏み出す。 卒業式が各地で行われ、涙涙のお別れ会が連日、行われている。 ここ、木ノ葉学園でも例に漏れずといった感じで。 みんな、小、中と一緒に上がって来た。 高校になって初めて、シカマル、サクラちゃん、サスケ、いのの4人と別れた。 ま、一生埋まらない学力差を歎いても仕方ない。 ランクを下げて同じとこ通うとか言って、喧嘩したのも懐かしい思い出だ。 俺が、ふざけんなっていって殴り飛ばした。 その後、スゲー喧嘩になって。 絶交だと高らかに宣言なんかしちゃって。 でも、いつの間にか元通りで。 結局、別々の高校に行った。 一生の別れでもないし。 引越するわけでも何でもない。 ただ、ちょっとお互いに一緒にいる時間が減るだけで。 幸い、高校同士がそんなに離れていなかったので、帰りは一緒にゲーセンとか行った。 カツアゲされそうになって、ちょっと喧嘩なんかもした。 まぁ、後でセンコーにバレて、反省文を書かされた。 なぁんも思い付かなくて超焦った! そんなこんなで、あっという間に3年は経って。 3月1日。 全国的に高校の卒業式。 曜日とか関係なしに。 それぞれ、違う顔して式を待つ。 推薦入試で早々に結果を出したやつ。 前期の結果待ちのやつ。 専門学校に行くやつ。 就職するやつもいる。 人生人それぞれってことだ。 1月のセンターが終わる頃から自由登校になり、顔を合わせることも少なくなった。 そのせいもあり、「久しぶり」と互いに肩を叩いている。 笑い声は尽きない。 男女混合で名前順に並び、体育館に向かう。 きっちりと並んだパイプイス。 檀上にでかい花。 そして、ずらっと並んだ来賓の御偉いさん。 退屈な祝辞を聞き、送辞、答辞を交わし。 国歌、校歌、仰げば尊しを歌い。 約2時間の日程を経て、形式通りの式が無事に終わった。 卒業証書とアルバムを貰ったら、教室はお祭り騒ぎで。 同期やら後輩やらに揉みくちゃにされ。 気がつけば、学ランのボタンは一つも残ってなかった。 そらもう見事に。 何とか、待ち合わせの場所に着いたときにはヨレヨレになっていた。 「大丈夫か、お前」 「公開ストリップショー一歩手前だったってばよ」 「そら大変だったな」 「ホントだってばよ〜」 パーカーがなかったらホントに危なかったかもしれない。 冷静に考えてみたら実は、貞操の危機だったのでは…。笑えん。 「答辞、うまくいったか」 「モチロン★最高にドキドキしたけどうまくいったってば!」 「よかったな」 「おう!」 何て、話してる間に段々暗くなっていく。 お互い門限なんてもんはないけど、育ち盛りで腹は減る。 どちらの腹の虫が泣いたかは言うまでもない。 近くのファミレスに入って、夕飯にすることにした。 「ナルは専門学校か」 「シカは進学だろ」 「スポーツ特待で進学すると思ってたのによ」 「プロになる気なかったし。それよりやりたいこと見つけたから」 「ったく。気付いたらバイトまでやってやがるし」 「シカがきたときはビビったってばよ」 「そりゃこっちの台詞だ」 ふと、店に入ったらナルトがいて。 営業スマイルで顔を向けたらシカマルがいて。 お互い固まった。 最近付き合いが悪いなと思えば、こんなとこにいたのか、って感じで。 そんなたわいない話をしながら、料理をガンガン胃に詰めていく。 店員の驚く顔を尻目に、デザートまでしっかり胃に納めて会計を済ませる。 バイト代が入ったナルトが気前よく財布を持った。 まだ少し寒い、夜の街を白い息を吐き出して歩く。 お互いに制服で歩くのも、コレが最後だ。 「あ、そうだ」 「ん?」 シカマルの隣を歩いていたナルトが、小走りに前に出る。 どうしたのかと、ソレを歩調を変えずに見送るシカマル。 制服をまさぐって何かを探しているようなのは見て取れた。 そして、目的のものを探し当てたのか、 「シカにこれやるってばよ」 振り返りながら“何か”が放られる。 それは、綺麗な放物線を描いて、手のひらに収まった。 「何だ?」 よくよく見れば、手に放られたのは金ボタン。 3年の間に擦れて少し鈍い色になったそれ。 「第二ボタン、とっさに死守したんだからありがたく思えってばよ」 「へいへい」 「俺の3年間の思いが詰まってんだから大事にしろってばよ!」 「第二ボタン…な」 夏服の間は、押入れで大人しくしてたんだろうなぁ。 と、ソレを手のひらの上で転がす。 「夏はチェーン通して首から提げてたから。ホントに3年間一緒だったんだってば、ソイツ」 心を読まれたのかと思った。 そんな、顔をしていたのだろうか。 道の先で、綺麗に笑うその笑顔を見て反則だと思った。 別々の高校に進学して。 別々の高校生活を送って。 お互いに知らないことが増えた。 数え切れないくらい、下らない喧嘩もした。 けれど、アイツは最初からコレを渡すことを考えていた。 “特別”ってこういうことなのかもしれない。 ニヤケてる自覚はある。 「別れたらさ、また、出会えばいいだけのことだってばよ!」 今日、高校を卒業した。 たくさんの仲間と別れを交わした。 けれど、ソレは出会いへの一歩。


恥ずかしい発言も難なくするのが、ナルト。 みんな、その度直球に当てられれば良い。

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