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もう、待つのは飽きた。 というか、もう待ってはいられなくなった。 追いかけて、追いかけて。 みんなも一緒に待ってくれた。 でも、もう、待てないといわれた。 期限付きの自由は容赦なしに終わりを告げた。 俺は、今日、六代目火影になる。 思えば、初めて会ったそのときからその背を追いかけていたのかもしれない。 けれど、その影を追っていたのではなく、おまえ自身を追っ掛けていたのだ。 それだけは、はっきりということが出来る。 誰が、何と言おうとも、ただ、正直にそういうことが出来る。 “愛だ”の“恋だ”の。 そんな言葉じゃ、括れない。 だって、そんなものは多分存在していなかった。 そんなものでは、互いを雁字搦めにする鎖には脆過ぎた。 何よりも、俺自身が“愛だ”の“恋だ”のそんなもの知らなかったから。 本当は知っていたのかもしれない、けれど、それでは不十分で。 “絆”さえも捨ててしまおうとしていたお前には、“愛”とか“恋”とかそ言うものは、 おままごとみたいな感情だったに違いない。 どちらかといえば、“憎悪”とか“侮蔑”とかのほうがお前は敏感で。 そっちのほうが、お前を捕まえておくには丁度、良かったのかもしれない。 火影としての正装に着替えていく。 壁に掛けられた、ふちに立ち上がる炎が描かれたマントに視線を向ける。 その背には、でかでかと六代目と書いてある。 これを羽織る日が来るとは思っても居なかった。 真実を知って、それでも盲目に上を目指していた昔。 それが、いつの日にか叶わない夢なのだと気がついたときの絶望。 それでも、必死に足掻いたのは人柱力の自分でも、何かを変えられると思っていたから。 あいつの隣に立つためには、生半可な目標じゃダメだと思ったのか。 何が、あそこまで俺を駆り立てたのか、ハッキリしたことは覚えていない。 月日が経って、俺の夢は、先を越された。 我愛羅が、風影に就任した。 史上最年少の風影の誕生だった。 祝福した。 我愛羅は、必死に自分の力で里を変えたのだろう。 古い体制から、新しい体制に代わっていくのだろう。 けれど、激しい嫉妬の炎を抑えられなかった。 悟られまいと、必死にソレを隠して上を目指した。 自分よりも先に風影になった我愛羅を見て嫉妬した。 同じ人柱力なのに、我愛羅は俺よりも先に風影になった。 俺が必死にやろうとしたことをあいつは、俺の目の前で成し遂げた。 風影など、興味がなかったくせに。 どうしてだろう、理不尽だと思ったんだ。 「サスケ」 口を開けば、あいつの名前しか出なかった。 『ドベ』 『ウスラトンカチ』 いつだって、見下されていた。 対等になりたいと必死で追いかけて。 お前が、俺を真正面から見てくれるのを待っていた。 『ナルト、俺は、お前とも闘いたい』 その声で、名前を呼ばれる喜び。 ずっと待っていた。 正面から、対等に目を見られることを。 待って、待って。 ついに、そのときがきて。 けれど、ソレも長くは続かなかった。 サスケが里を抜けた。 俺たちは、必死に追いかけた。 時期を待った。 待って、待って。 けれど、時間は無限にはなくて。 姿見の前に立って、己の姿を見る。 シャラシャラ と音を立てる、首飾り。 金色の首飾り。 四代目火影が首に下げていたソレ。 息を引き取った四代目の首から外してとってあったらしい。 ソレと一緒に首に掛かった、もう一つの首飾り。 これは、綱手姫と賭けをして、手に入れた首飾り。 九尾を封じる力が有ると知ったのは、いつだったのか。 「サスケ」 もう、追いかけることも、待つことも出来ない。 友として、好敵手として。 ただ、盲目に、お前だけを見ては居られない。 壁に掛けられた、あのマントを羽織って。 笠をかぶれば、もう戻れない。 ただ、必死に追いかけて、待って。 ソレが許された自分には、もう、戻れない。 次にあったときには、殺さなくていけない。 木ノ葉の脅威として。 けれど、待っている。 俺以外の誰にも、殺されるな。 この里で、この椅子の上で。 俺は、お前がここに来るのを待っている。 温厚な、同期の顔で。 残忍な、里長の顔で。 お前を殺すのは俺で。 俺を殺すのはお前で。 他の誰でもない。 ずっと、待っている。 昔の俺はここには居ないけど。 この椅子の上で、ただ、ひたすらにお前を待つ。
歪んでるね。 その歪みもそのうち真っ直ぐになる。
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