その背中を見るたびにわけもなく木の影に隠れてしまう。 声をかけられるたびに舞い上がって、何も話せなくなってしまう。 指先が触れただけで、もう、どうにかなってしまう。 ずっと、好きだったの。 でも、想いはまだ、伝えないまま。 初めて出会ったのは、アカデミーの廊下。 マンガみたいに廊下の角でぶつかった。 ナルト君は、「ケガないってば?」って手を差し出してきたんだけど。 私は、とっさに手を伸ばせなくて。 私に伸ばされた手は行き場を失って、ナルト君の頭の後ろに組まれてしまった。 そして、くるりと振り向いて窓から走り去ってしまった。 一つ上の学年だった彼は、ネジ兄さんと同じクラスで。 だけどいるのかいないのか分からないような存在で、いつも、一人で。 寂しくはないのだろうか? そんなある日。 公園でこけた子に手を差し出していたナルト君がいて。 それは、ある日の私と一緒。 違うのは、その子がその手を振り払って走り去ったこと。 その瞳は、ひどく暗くて。 私は、わけもなく木の影に隠れた。イケナイモノを見た気がしたから。 息を殺して、時が進むのを待った。 『バケモノには触りたくないってば?』 ぼそり、と。 冷たい風が運んだその声が、暫く耳から離れなかった。 その後、ナルト君に何度もあったけどあの時の言葉の意味をいつまでも聞けなくて。 いつの間にか、そのことも忘れてしまって。 卒業試験に落ちてしまったナルト君と同じ学年になって。 一緒に下忍になって、合同任務もこなして。 一緒の時間はあっという間に過ぎ去って、みんな大人になった。 そして、彼は火影になった。 四代目火影さえも越す存在に。 血の滲むような努力の上に、今がある。 目を反らしたくなるような辛い過去もお腹に封じられた九尾も。 全部、今のナルト君を形作っているもの。 他人の痛みが分かるから、ナルト君は優しい。 だけど、厳しさも持ってる。 ナルト君はいろんなものをくれるから。 だから、ナルト君にもいっぱい返したいって思うんだよ。 「今更、ナルト君の魅力に気がついても遅いんだから」 真っ直ぐに見つめる瞳。 表も裏もなくて、偽りない感情を向けてくれた。 宗家に生まれながら、何の才能もない私をちゃんと名前で呼んでくれた。 分け隔てなく、優しかった。 家も何も関係なく。 ただ、『日向ヒナタ』として接してくれた、大切な人。 それが、私だけに特別というわけじゃない。 でも、嬉しかったの。 私に笑いかけてくれたのも。 私に話し掛けてくれたのも。 私の名前を覚えてくれたのも。 みんな嬉しかった。 「今更、ナルト君にときめくなんて遅すぎだよ」 私なんか、出会ったあの日からずっとときめいたまま。
ヒナタちゃんには、ずっと、ナル君にときめいていて欲しいな、と。 第2部になって想定外の成長を見せたヒナタちゃんですが。 これからも、ずっと、ナル君を見ていてほしいと思います。 ヒナタちゃんの恋がいつの日か実ればいいのですが…。
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