17 自惚れる

あの子は特異な環境で育ったせいか、誰も信用しないし、誰にも頼ろうとしない。 いつも、痛いくらいに気を張って緊張している。 この里はあの子に優しくなし。 この里の大人達もあの子に優しくない。 その環境を作り出したのは自分達で、見ない振りをして来た結果がこれだ。 ナルトは何も悪くない。 必死に助けてと叫んでいたあの子を無視したのは俺達だ。 気がついたときには、父親譲りの蒼い瞳はガラス玉みたいに何にも映してなくて。 あの子の世界は、がらんどうになっていた。 それなのに。 俺の隣にあるのは、静かな寝顔。 その顔からは安心が見て取れて。 「俺、自惚れてもいいのかな」 彼の特別になれたことは奇跡に近い。 何度、突き放されても逃げられても。 今度は間違えたりしないよ? ちゃんとおまえを見るから。 目を反らせたりしないで真っ直ぐにお前の目を見返すから。 「何で、ナルトはそんなに綺麗なんだろうね」 「…うる…さい」 「ね、キスしていい?」 「……も…少し…黙れ」 眠た気な瞼を少しあげて。 伸びて来た両腕は、首に絡んで。 瞬きより少し長いキス。 羽が触れたみたいに短い時間。 呆気に取られて黙ったカカシに満足したのか、両腕はぱたりと落ちて。 静かな寝息だけが響く。 二人きりだからと下ろしていたマスクによって、ナルトの柔らかな唇の感触を伝えて来た。 赤くなった顔を隠すように手の甲で、唇に触れた。 まだ、一瞬触れた柔らかな感触が頭から離れない。 「俺、自惚れてもいいの?」 小さなつぶやきに応える声はなかった。


自惚れるって、どうしよう。 って、思った結果、ここに落ち着きました。 たまには、カカシ君だっていい思いしてもいいじゃない。 我が家のカカシ君はちょっと不憫なのでコレくらいの役得は。 させてあげたいと思いました。

≪戻る。