あの子は特異な環境で育ったせいか、誰も信用しないし、誰にも頼ろうとしない。 いつも、痛いくらいに気を張って緊張している。 この里はあの子に優しくなし。 この里の大人達もあの子に優しくない。 その環境を作り出したのは自分達で、見ない振りをして来た結果がこれだ。 ナルトは何も悪くない。 必死に助けてと叫んでいたあの子を無視したのは俺達だ。 気がついたときには、父親譲りの蒼い瞳はガラス玉みたいに何にも映してなくて。 あの子の世界は、がらんどうになっていた。 それなのに。 俺の隣にあるのは、静かな寝顔。 その顔からは安心が見て取れて。 「俺、自惚れてもいいのかな」 彼の特別になれたことは奇跡に近い。 何度、突き放されても逃げられても。 今度は間違えたりしないよ? ちゃんとおまえを見るから。 目を反らせたりしないで真っ直ぐにお前の目を見返すから。 「何で、ナルトはそんなに綺麗なんだろうね」 「…うる…さい」 「ね、キスしていい?」 「……も…少し…黙れ」 眠た気な瞼を少しあげて。 伸びて来た両腕は、首に絡んで。 瞬きより少し長いキス。 羽が触れたみたいに短い時間。 呆気に取られて黙ったカカシに満足したのか、両腕はぱたりと落ちて。 静かな寝息だけが響く。 二人きりだからと下ろしていたマスクによって、ナルトの柔らかな唇の感触を伝えて来た。 赤くなった顔を隠すように手の甲で、唇に触れた。 まだ、一瞬触れた柔らかな感触が頭から離れない。 「俺、自惚れてもいいの?」 小さなつぶやきに応える声はなかった。
自惚れるって、どうしよう。 って、思った結果、ここに落ち着きました。 たまには、カカシ君だっていい思いしてもいいじゃない。 我が家のカカシ君はちょっと不憫なのでコレくらいの役得は。 させてあげたいと思いました。
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