19 寂しがる

「あんたね、待ってるだけじゃダメなのよ?」 「…サクラちゃん」 「そんな目してても、あの馬鹿は気がつかないんだから」 「俺ってば、サクラちゃんにしておけばよかったってばよ」 「冗談言わないでよ」 友として、必死に追いかけるそいつは、簡単にナルトを傷つける。 どんなに追いかけて、言葉をかけても、その存在はとても遠い。 3年前、気まぐれでナルトの命をとらなかったのだと言った。 そして、今は、気まぐれでナルトの命をとるのだという。 なんでも、自分の思うがままになると思い上がっているのだ。 あの、うちはの生き残りは。 その血塗れた瞳は、ずっと、兄であるイタチだけを追いかけている。 一族を皆殺しにしたうちはイタチを必死に追いかけて。 つながりを断ち切るのだという割りに、そのつながりを一番欲しがっている。 いらないのなら、勝てない兄など追いかけなければいいのに。 必死にすがって、追いかけて、その目に映りたいのだ。 あの、死にたがりは。 それなのに、一生報われないのに必死に追いかけて、傷ついて。 捨てられた子犬みたいな目で、遠くを見つめても、そこには誰もいない。 君が、ナルトが追いかけるあいつはいない。 どこを探したって、もう、どこにもいないのに。 「ナルトは、なんであんなゴミ虫ヤローなんかがいいんですか?」 「サイ、もう一回いったら、ぶっ飛ばすからな」 「別に、何度でも言いますよ。真実ですから」 サイは、ナルトが必死に追いかけるサスケが正直嫌いだ。 (サスケに似ているといわれたことも原因のひとつかもしれないが。) そんなに、必死になって追いかける必要があるのかサイには分からない。 悲劇のヒロインぶって、周りを巻き込んで、のうのうとしているあいつが気に入らない。 「ナルトが傷ついてまで追いかける価値があるとは、到底思えませんけど」 「価値とか、そんなん、お前には関係ねーってばよ」 「そうですか?」 「そうなんだってばよ」 「ねぇ、ナルト。僕にしておきなよ」 「は?」 「だから、僕にしておけば、寂しい思いもしなくてすむよ」 「別に、寂しくなんてねぇし」 「無自覚なんだね」 君に、憂いなんて似合わない。 ただ、まっすぐに、馬鹿みたいに前だけを見て。 笑っていればいいのに。 こっちの胸が痛いような顔なんかしないで。 寂しさを思い出した、僕にはなんだか。 どうしようもなく苦しくて。


報われないサイが好きです。 ナル君に振り向いて欲しくて、頑張るサイが凄いツボです。 彼には、ぜひとも頑張って欲しい。 そして、サスケが里に帰ってきたら、腹黒く苛めてほしい。 「ナルトは、僕のですよ」 くらいは、かまして欲しい。 是非!!

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