「必ず戻るよ」 それは、幼い日の約束。 里から出られない俺のために、大切な一族を皆殺しにして。 愛しい弟に憎しみを植え付けて。 彼は木ノ葉の里を抜けていった。 憎い『うちは』の人間なのに、愛しいと思えた唯一の存在。 彼のためなら『うちは』の傀儡になろうとも構わなかった。 俺の唯一の人。 あれは、約束。 俺の青の瞳とあいつの赤の瞳に誓った。 必ず、お互いの元に帰ってくると屍になろうとも必ず戻るのだと。 だから。 誰であろうとその瞳を奪うことは許さない。 「サスケ、それは、俺のだよ」 大気がビリビリと鳴り響く。 いつかの日のようにふわりと隣に降り立つ。 あの時は、お前が俺の隣に並んだんだっけ。 気まぐれで助かったのが、本当はどっちだったのか、今なら分かるだろう? サスケの両頬を柔らかく包み、血濡れた赤い瞳を舐めた。 「!!」 訳が分からず固まるサスケを気にも止めずに、瞳を覗き込む。 愛しい、彼の瞳。 同族殺しでしか発動しない、哀れな能力。 幾千幾万の世界を映し出す、万華鏡。 彼の記憶がそこに詰まっている。 もう、その瞳に映る日は来ないのだと絶望していただけに、偽者とは言え、ほんの少しだけ嬉しさもあった。 けれど、この瞳は彼の一部だからこそ意味がある。 彼のあるべき場所に埋まっているからこそ価値がある。 「眼軸ごとえぐり出してあげるから」 傷つけずに全部。 その小さな穴から出してあげる。 そこは、窮屈でしょ? ニュルンと指が眼球をえぐる。 丁寧にえぐり出された瞳は、チャクラで保護された薬液にポチャンと浸かる。 「もう、一つ」 ナルトの指がもう一つをえぐり出す寸前。 「ウワァァァ!!」 突然、息を吹き返すようにサスケが飛び退く。 えぐられた右目からは、一滴の出血もない。 空洞になったそこに手をやり、サスケは再び戦慄する。 「このクソ狐!兄さんの写輪眼を返せ!!」 キョトンとほうけた顔をした後、ナルトは綺麗に笑った。 「返せも何も、これはイタチので、だから、俺のなんだよ」 紡がれた言葉は、イタチとナルトにしか分からない。 意味の分からない恐怖がサスケを襲うが、それを振り払うように叫ぶ。 「兄さんの瞳は『うちは一族』の物だ!」 「一族の呪いに囚われた可哀相なサスケ。その写輪眼を捨てたら楽になれるよ?」 いつまでもその瞳を持っているから、輪から抜けられない。 同族殺しの禁忌を犯してまで手に入れた瞳は何時の日か光を失う。 それは遠くない未来の話。 イタチの瞳もほとんど見えていなかった。 気配を頼りに笑いかける瞳に映る俺は、ちゃんと笑えてた? 「イタチの瞳、俺に返してよ」 「ふざけ…」 「ふざけてなんかないよ?どうしても嫌なら殺してから抜き取るからいいよ」 ちゃぷん 「お帰り、イタチ」 ナルトの手には一対の真紅の瞳。
サスケゴメン。 でも、にゅるんて取り出すのか来たかったんだもん。 命までは、とってないと思うから、多分。
≪戻る。