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22 躊躇う

アイツは、臆病で、不器用で、だから、可愛いんだと思う。 路地で、泥だらけになって転がっていたナルトを拾ってきた。 とのたまった親父を前に俺の頭ん中を駆けたのは、怒りと…嫉妬。 ナルトをこんな目に合わせる里の大人は馬鹿だと思う。 誰のおかげで、今の平和があるのか知らしめてやりたい。 けど、こいつはソレを望まないから、俺は何も出来ない。 癪だが、親父のように力があればと何時も思う。 この貧弱な身体じゃ、こいつを守れない。 頭でっかちな自分を好きになれないのは、こういうときだ。 数秒の沈黙から、重いため息をついて、頭に手をやった。 「親父、世間一般じゃ、こういうのを誘拐って言うんだぜ」 「煮えきらねぇ、バカ息子の嫁を拾って来てやったんだろうか」 「誰が、誰の嫁だよ!」 「違うのか?じゃ、母さんと構い倒しても何も言うなよ、バカ息子」 「っくそ、ソイツは俺んだから」 「名前でも書いてあんのかよ」 「ねぇよっ」 「ま、お前が風呂入れたんじゃ、二人で泡だらけになってしまいだからな。出血大サービスで、俺が風呂に入れてやるよ」 「何言ってやがるこのバカ親父!」 「おめぇは、こいつに着せてやる服でも用意するこったな」 豪快に笑って、息子の頭をがさつな手でなでまわして、風呂場にナルトと消えた。 「くそったれっ!」 シカマルが足早に二階の部屋に服を取りに行って降りてくるのと、風呂場から悲鳴が聞こえたのはほぼ同時だった。  + + + + + 「…」 ぼんやりと目を開けると、見慣れた顔があった気がして。 音が毀れる。 「…しか?」 「お、やっぱ可愛いな」 かわいいっていわれた。 なにが? ここどこ? おれ…。 「坊主、目、つぶっとけよ」 言われたとおりに目をつぶった。 お湯が頭にかかって…意識が覚醒した。 「!!」 頭を振って、水気を飛ばして、目を開いた。 目の前に居るのは、知らない大人。 警告音が煩いほどに頭の中に鳴り響く。 「…ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」 「…」 「ゆうこときくから、すぐ、いなくなるからっ。」 「落ち着けって」 「いやぁー!!」 小さな身体を丸めて、必死に謝る金色。 その後ろで、ドアが壊れんばかりの音を立てて、開かれた。 「こんの、クソ親父!!」  + + + + + 風呂場でパニックになったナルトをバスタオルに包んで、自分の部屋に避難させた。 「バカ息子、盛んなよ」 という、空気が読めない発言をする親父をシカトして、何とか服を着せる。 ナルトを落ち着かせ、頭をなでる。 壁一枚隔てた先に、親父とお袋が居ることを完全にシカトして。 時折、可愛い、可愛いと連呼する声が聞こえ、そのたびにナルトがおびえる。 「ナルト、落ち着けって。俺の親父もお袋もとりあえずお前をとって食ったりはしねからよ」 「…ほんと?ナル、ぶたれない?」 「万が一ん時は俺が守ってやるよ」 「約束だってばよ」 何度も、言って聞かせる。 刷り込むように。 生まれたての雛に教えるように。 「母さん、聞いたか今の」 「もう、お父さんと違って、いい男に育ってよかったわ」 「…母さん」 ナルトを構いたくて仕方ない両親を尻目に、シカマルはナルトを独り占めする。 人から与えられる優しさに躊躇うナルトをどうにかしてやりたい。 「ウチで、甘やかすしかねぇか」 「シカ?」 「ん?ま、ちょっとずつな」 コレが後に、奈良家に大きな嵐を呼ぶことになろうとは露知らず。 アイツは、臆病で、不器用で、だから、可愛いんだと思う。 (俺にだけ、懐いてればいい)


擦れてないナル君久しぶりに降臨。 かわいい!を補充したかったんです。

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