23 弄ぶ(もてあそぶ)

どうしてそうまでして、彼を追いかけるのか僕には分からない。 ただ、そうまでして追いかけても、君はなにもえないと思う。 上を目指して笑う君が、思い出したように後ろを振り返る。 懐かしそうに、遠くを見つめている。 ここに、僕が居るのに、ナルトの中に僕は居ない。 ずっと、ずっと、遠くを見ている。 ナルトの目には、僕の居る場所には誰が居るの? 「ねぇ、ナルト。僕に誰を重ねているの?」 「何のことだってば」 僕の唐突の発言に君は驚いている。 夕日が眩しくて、僕には君の顔がよく見えないけど。 少し、怒っているのかな? やっと感情を取り戻し始めた僕には、よく分からないけれど。 君が追いかけている、あの、サスケってヤツのことを話すと君は遠くを見つめる。 寂しい、悲しい、苦しい。 そんな、感情が渦巻いてグチャグチャだ。 ナルトには、そんな絵は似合わない。 「あんな、ゴミ虫ヤローのどこがいいの?同じ色だから、思い出す?」 「お前とサスケは違う」 「そう?認めたくないけど、サクラは僕と彼が似てるっていってたけど」 「似てねぇよ。どこもかしこも」 「なら、僕をそういう目で見ないでくれるかな。虫唾が走る」 ナルトにこんな顔をさせる、あいつが嫌いだ。 任務なんて関係ない。 あのとき、殺してしまえばよかった。 そうすれば、ナルトはアイツを追いかけられなくなるし。 当然、追いかける理由すらなくなるのに。 僕のことは嫌いになるかもしれない。 けど、ずっと僕のことを考えてくれるかもしれない。 ソレは、とても、心が落ち着く。 ずっと、僕だけを見ていて欲しい。 真っ黒に渦巻く、憎悪の視線でも構わない。 ――――お前の命はオレの気まぐれで助かっただけという事だ 今度は…オレの気まぐれでお前は命を落とすんだぜ―――― 自分勝手で、傲慢で。 「ナルト。あいつに弄ばれて捨てられたんだよ」 いい加減目を醒まして、僕だけを見ていればいいのに。 そうしたら、僕は安心できる。 いつまでも、夢の世界にはいられない。 (それでも、君は、アイツを追いかけることを止めたりしない。)


サイさん 大 暴 走 !! ひたすらに思っても、届かない、何て悲運の子。 それでも、思わずに居られない彼が好き。

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