27 奪う

プチ誘拐事件後、シカマル宅に遊びに行くようになったナルトに、再び事件が起こった。 その後の供述で、ナルトをちょっと可愛くしたかったと母は語る。 「ナルトちゃん、大丈夫よ、悪いようにはしないから!」 「いやぁー」 「別に、お外に行くわけじゃないから!」 「…う…うぅ」 ぷるぷると頭を横に振って、必死に抵抗するけど。 わきわきと伸びてくる手から、逃げ切れそうにもない。 女の人には、優しくするように。 女の人には、手を上げたりしないように。 女の人には、出来るだけ、紳士であるように。 鼻の頭に一本傷のある、中忍から教えられたこと。 それが、ナルトの頭の中をぐるぐると回っていた。 「ナルトちゃん、おばさんのお願い聞いて?」 「…うん」 先に折れたのは、やっぱりというか、ナルトだった。  + + + + + 「やだぁ!可愛いっ」 渾身の出来栄えよっ!と、身悶えている奈良ヨシノ。 その前には、今にも泣き出しそうなうずまきナルト。 そして、床に散らばるのは、12歳の少年がまず着ないであろう可愛らしい服の山。 「おばさん、ナル、かわいいの?」 「もう、目に入れても痛くないくらい可愛いわ!」 お父さん呼んできて、写真撮らないと。 と、楽しそうなヨシノの前で、ナルトは複雑な心境だ。 確かに、自分は他の皆と比べても小さいほうかもしれない。 でも、12歳だし、下忍になったし。 可愛いといわれて、嬉しくないわけではないけど。 できるなら、かっこいいとかそういう言葉のほうが嬉しい。 「ナルトちゃん、ちょっとお父さんとシカマル呼んで来てくれる?」 「ナル、このかっこうで呼びに行くの?」 「可愛いから、大丈夫よ」 「でも」 「お願いよ?」 優しい笑顔で、お願いされてしまえば、断れなくなってしまう。 自分に優しくしてくれる里のオトナは少ない。 その中でも、奈良家の人々はこれでもかというほどナルトを甘やかす。 戸惑ってしまうほどに、優しいのだ。 重い足取りのまま、縁側に行けば、将棋を指す音が聞こえる。 ドア一枚隔てて、そこに二人は居るのだか、出るに出て行けない。 シカマルたちに背を向けて、ぴょこっと、座り込む。 ナルトはどうしよう、どうしようと唸る。 そんなナルトに、シカマルもシカクも気がついているのだけれど。 フリフリと揺れる尻尾が可愛くて、気がつかないフリを続ける。 シュタッ、と立ち上がったり、座ったり。 見てて心底可愛いのだが、そろそろ可哀想な気がして。 「頭隠して尻隠さず。ナル、尻、見えてるぞ」 「へっ?」 「黄色のケツが丸見えだ」 「えぇ!」 そろりと、障子から黄色い頭が出てくる。 「ナル、おかしくない?」 「おかしくねぇから、ちゃんと見せてみろよ」 「う…ん」 ぴょこぴょこと出てきたのは、黄色いひよこ。 ひよこのフードがついた、半袖半ズボンのつなぎ。 ご丁寧に、お尻の部分にひよこ特有の膨らみつきで。 「お、可愛いじゃねぇか。母さんに着せてもらったのか?」 「うん」 「上出来、上出来。な、シカマル」 「いいんじゃねぇの」 「ほんと!?」 「あぁ」 「ナル坊、ちょっとこっち来い」 シカクに手招きされて、ぴょこぴょこと近づく。 良し、良し。といって、シカクはナルトを膝の上に乗っける。 「お、収まりいいな」 「お、おじさんっ」 わたわたと慌てるナルトをよそに、シカクはしっかりと腕の中に収めてしまう。 頭をなでながら、さわり心地のよさに、ついでに頬ずりする。 ぎゃー!と暴れるナルトを気にもせずニヤニヤと笑う。 その向かいには、ぶすくれたバカ息子。 「お、なんだなんだ。欲しいのか?ん?」 「ナルはモノじゃねぇし」 「いらねぇなら」 「ナル、定位置が違うだろ」 「でもでもっ」 「男なら、奪いに来いよ。バカ息子」 「上等だ、このクソ親父」 (お前の定位置は、俺の膝の上だろ)


かいぐり、かいぐり。 奈良家のみなさんに可愛がられる図最高! 可愛がってもらって欲しい。

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