触れることすら怖かった。 この毒が、キミを傷付けるのが。 落ち着いてさえいえれば、完璧に毒をコントロールすることは可能だ。 けれど、キミに触れるのが怖い。 「ココさん」 「ん?なんだい、小松くん」 「手を、繋ぎませんか?」 何の冗談だろう? 服を着て、一枚隔てている部分ならまだしも。 身体の中でも一番、毒を出しやすい手は、触れるのが怖い。 万が一、キミを傷付けることになったら。 「ダメ、ですか?」 「あ、いや…ごめんね」 キミに触れる勇気がない。 今は、まだ怖くて。 トリコのように、頭をなでることも。 サニーのように、頬に手を添えることも。 ボクには、簡単に出来ない。 リーガル諸島で、小松くんと再会したときには、抱きしめることが出来たのに。 今のボクには、手を触れ合うことも出来ない。 「ごめんね、小松くん」 「ココさん、ボク、ココさんの手、好きですよ」 しなやかに、長い指。 ボクが傷つかないようにと、触れることを躊躇う指。 そっと、手を伸ばして、手を重ねる。 「っ、小松くん!」 びっくりしたように、手を引こうとするココに対して、小松は手のひらに頬を寄せる。 緊張から、ココの手の温度が下がっていく。 (そんなに怖がらなくてもいいのに) 「ボクは、ココさんの手が怖いとは思いません」 この優しい手を受け入れることはあっても、拒絶することはない。 いつでも、その手は優しくて、泣きそうなくらい優しくて。 人一倍、人肌が恋しいのに、人一倍、人を遠ざける。 痛いほどの優しさに、大丈夫だと伝えたい。 そんなに、怖がらないで欲しい。 「…指を……絡めても…いい?」 「えぇ!よろこんで!」 ぎこちなく絡む指先に、熱が伝わるといい。 (キミの優しさが、指先から伝わってくる) (幸せすぎて、どうにかなってしまいそうだ)
臆病ココさんと大胆小松くん。 ちょっとずつ、なれて行けばいいんだよ。 触るのが平気になってからのココさんの次の手は早い。
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