(アニメ411話 カカシ恋歌) 自室から、人の気配がしたけれど、ナルトは鍵を開け玄関の扉を開いた。 その気配は良く知ったものだったし、部屋に居るであろうことも予測済みだ。 靴を脱いで入った部屋は、明かりもつかず暗い。 そのまま、電気のスイッチを入れずに住み慣れた部屋の中を進む。 寝室のほうへ足を向ければ、そこにはベッドに腰掛けるカカシがいた。 「不法侵入だ」 「分かってたでしょ?」 ナルトは、カカシを一瞥するとクローゼットに向かう。 お互いの表情は良く分からなかったが、特にカカシの顔は逆光で見えない。 すれ違いざま、僅かに鉄の匂いがした。 ギシッ とベッドのスプリングが軋む音がして、窓から僅かに差し込んでいた月明かりを影が遮った。 ナルトの後ろにのそりと立つカカシを気にも止めず、着替えを取り出す。 「ナルト、どこ行ってたの?」 「別に、ずっと里に居たけど?」 どけよ、とカカシを押して、風呂場に足を向ける。 けれど、それを許さないようにカカシがナルトの腕を乱暴に掴んだ。 「ね、血の匂いがするよ?」 「生まれてからずっと殺してきたからな。においが染み付いてんだよ」 「そんなわけないでしょ。それに、真新しい血の匂いだよ」 「殺した」 誰をなんていわなくても伝わる。 「任務でもないのに殺すのは、感心しないよ」 「任務だから、金を積まれれば、殺しもなんでもする。じゃ、勝手に殺すのはなんだ? 結局、殺すことに代わりはない」 「ナルトっ」 非難する声が、部屋に響く。 掴まれたままの腕から、骨の軋む音がする。 痕になるのは、確定している。 「ポンコツは要らない?」 お前をいとおしそうに見つめる目さえみなければ。 お前が、逃がしさえしなければ。 お前の優しさだって分かっても、許せない。 「デートだって?楽しかった?あのくノ一と一日里を回って」 「…」 「ホントの故郷のように思ったって?この醜く、汚い里を」 私怨で殺すなんて、そんなことないと思っていた。 けれど、実際殺してしまった。 何も感じなかった。 命乞いの一つでもすればいいのに。 「ちゃんと、苦しませないで殺したよ、心配しないで」 暗い部屋の中で、表情を読むことは出来ないが、ナルトのチャクラが僅かに揺らいでいる。 そうやって、心に傷を作って、虚勢を張って、弱さを隠す。 誰しもが持っているソレをナルトは見せたがらない。 弱さは、自分を殺す。 だから、隠して、隠して。 (お前が殺すくらいなら、俺が殺しておけばよかった) (気がつかないで、この醜い心に)
今更やっと書きました。 アニナル見たときからかこう書こうと思っていて。 それが、年を越してしまった。 良く、萌が尽きなかったものだ。
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