『出会いは何処にでもあるような簡単なものではなくて』

ここで出逢った事を運命とかそんな簡単な言葉で表す気はない。 そんなちんけな言葉では表すことなんて出来やしない。 運命は自分で作り出すもので、誰かに作られるものじゃない。 出会いは何処にでもあるような簡単なものではなくて。 出逢うべくして出逢ったのだから、運命だとは言わない。 人は、それを運命だと言い張るのだろうけれど。 俺は、運命だなんて言ってやらない。 「特Sランク任務じゃ。頼んだぞ。」 「御意。」 「行け。」 「はっ」 森を抜け、川を渡り、山を越し。 風を切って走る。 パートナーは居ない。 いつも単独で任務をこなす。 隣に人は置かない。 邪魔だから。 いつ裏切られるか分からないから。 一人でやり切れる自信はある。 だから、相棒とかは要らない。 「俺は、ホウスウさえ居れば良いよ。」 左肩に乗った鳥を左手で優しく撫でる。 普通の鳥のように鳴くことはない。 けれど、着かず離れずいつも一緒に任務に出る。 俺の元に来てからそれほど時は経っていないけれど。 一緒に居なくてはならないような存在になっている。 ホウスウが居ないと何故か調子が狂う。 別に、イタチが居るという暁のメンバーの一人であるデイダラが気になるとか。 そんな可愛らしい理由ではない。 彼とは、このまま一生逢わないで居たいものだし。 俺は、木の葉の里の忍として生きて、そして死ぬ。 それが俺の一生で。 そうして生きていくことしか多分出来ないだろうから。 木の葉を抜けて生きていくことが出来たとしても、俺には居場所はないから。 イタチが里を抜けて、暁に入って。 そこが彼の新しい居場所となったけれど。 仮に、俺が暁に入れたとしても・・・・それはありえないけれど。 暁は人柱力を集めて、自分達の力として利用するのが目下の目標らしいし。 俺なんかが言ったら格好の餌食だ。 飛んで火に入る夏の虫。 俺の居場所なんて無いんだから。 「さっさと任務遂行して帰ろうな。」 ナルトの言葉にホウスウは喜んだ様に体を摺り寄せた。 「コレで最後!!」 ターゲットだった抜け忍10名を殺して額当てを回収する。 額あての裏には登録番号が彫られたドックタグが縫い付けてある。 それを里に持ち帰って火影のじじいに提出すれば今日の任務はお仕舞。 追い忍として、里を抜けた忍は生かしておかない。 狐の暗部面を被り、年恰好を17、8歳に変えて髪の色も黒に変えた。 まさか、里の嫌われ者うずまきナルトだとは誰も分からないだろう。 「忍不足なのにこれ以上里の忍減ったらまた俺の仕事が増えるっつーの。」 回収した額当てをポーチにしまう。 10枚もあるとかさばって仕方がないけれどまぁ、仕方ない。仕方ない。 10名の忍の遺体は火遁の術で灰も残さず焼ききる。 多少緊張した体を伸ばして解す。 そして、後ろの聳え立つ木を見上げる。 少し多めに息を吸い込む。 「いつまでそうしてんのか知らないけど、ウザイから出てきてくれる?」 敵だか味方だか分からないけれど、木の上に知らない気配が二つ。 俺が追い忍を殺している間にいつの間にか現れて、そのまま観戦していた。 たまに聞こえる 「あの切り口綺麗だよな、うん。」 とか 「甘い」 だの。煩くて仕方ない。 感想を言っているのだろうけれど。 はっきり言うが、こんなとこまで来てそんなことがしたいのか!! 別に、地獄耳だとは思っていないがそれなりに聞こえるのだ。 九尾が中に封印されていることもあってか並みの忍より耳がいい事も関係して いるのか耳障りで仕方なかったのだ。 人の仕事に口出ししないでいただきたい。 コレが俺のスタイルで、俺の殺り方だ。 「ナルナル久しぶりだな、うん。ホウスウもずっと連れてくれてるみたいだな、うん。」 「噂通りと言えばそうだが。こんなものか。」 物音一つ立てずに木の上に居た二人は降りてきた。 逢いたくなかった。 出来るなら、一生逢わないで居たかった。 今の時点で平穏な人生なんて歩めないと思っていたけれど。 それでも、平穏をぶち壊す種は排除してきた。 しかし、今回のコレは反則だ。 一人はホウスウの作り主で、もう一人は・・・・。 凄い傀儡だな。中に傀儡師が入ってるんだろうケド。 あの人も、暁に居たんだ。意外や意外。 例のコートを着込んで仲良くご登場。 ため息が自然と出るのは仕方ないんですってばよ。 「初対面の人間に対して随分な物言いですけど。赤砂のサソリと、イカレ芸術家が こんなとこで人の戦闘に感想言って、何のようですか?」 「ナルナル、イカレってオイラのことか?うん!!?」 「お前以外の誰が居る。」 「旦那ひでぇーよ!!」 あほくさいな。帰ろう。 だって、別に用事なさそうだし。よし、帰って、さっさと寝よう。 こんなの相手にしてらんないし。 「じゃ、用ないなら俺はコレで失礼します。二人で仲良く帰ってください。」 ナルトは踵を返すと里のほうに走り出した。 「ナルナル待ってって、うん。」 「話ぐらい聞け。」 5分と行かずに止まる事にはなったけれど。 あぁ暖かくも無いけど恋しい布団が遠のいていく。 目の前に突っ立って俺の道を塞いだ二人を睨む。 「俺は話なんてありません。さようなら。」 帰るのが遅くなってじじいに詮索されたらめんどくさい。 正直に暁と接触したとじじいに説明するのもめんどくさい。 「退いて頂けないなら、切り捨てるまでですけど。」 慇懃無礼に言い放つ。 こんなところで厄介な奴らを相手にしているほど暇ではない。 背中の忍刀を構えようかと思ったが、鋼糸に変更。 ヒルコは傀儡のはずだから、接近戦は避けたい。 「木の葉の暗部筆頭頭のセイスウ自らお相手か。」 「任務成功率100%だからな、うん。」 「ほめても何も出ません。俺はさっさと帰りたいんで、要件は手短に。」 ナルトはあや取りをするかのように鋼糸を張り巡らせる。 動けば人などひとたまりもない。 ばらばらになって、お仕舞。 チャクラもばっちり流してあるから、切れ味は保証付き。 サソリもデイダラも馬鹿ではないから一歩も動かない。 動かないけれど、ただ一言。 たった一言だけ言い放った。 「暁に来い。」 自分の耳を疑うしかなかった。 動きが止まる。 それが命取りだった。 気付けば夜の闇ではない暗闇に飲まれて。 暗部人生で初めて、拉致されるというのを経験した。


原作とはまた違った路線を進みます。 我愛羅を奪還するあたりなのですが、設定が原作と異なります。 行き当たりばったりになること必至。 取り敢えず頑張ります。

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