『偶然で、けれども必然だった出会いに文句なんてつける気にもならなくて』

あんな出会いから、付き合いが始まるなんて思っても居なかった。 あんなのでお互い生活できるようになってしまうなら。 世界は何て単純に出来ているんだろうか。 自分を不幸な奴だとは思ったことはなかったけれど。 今回ばかりは不幸な奴だと思った。 前回あらすじ。 追い忍討伐任務遂行中に暁に拉致られたうずまきナルト。 暁のアジトとおぼしき場所につくなりイタチに変化の術を解かされ、 牢屋にでも放り込まれるのかと思いきや、素適な個室を提供された。 自分の立場が全く分からなくなる。 これからのうずまきナルトの運命はどうなるのか!! 気になる今回のお話は!? なんて、思わず自分で回想録作るくらいにおかしな待遇。 シングルかと思ったらダブルだったでか過ぎるベッド。 浴槽とシャワーのついた風呂場。 暁特有のコートのかかったクロ−ゼット。 興味本位で羽織ってみたら、丈がぴったりだった。 オーダーメイド? ってか、俺サイズなのがまず分からないし。 いつ測ったのかだって分からない。 測られた記憶もない。 ここまで待遇される理由が分からなかった。 「俺ってば、尾獣抜かれてさよならじゃないのかってばよ・・・・。」 思わず、口調が演技状態のものになってしまう。 混乱しすぎて何がなんだか分からない。 おかしいだろ。この待遇はどう考えてもおかしいって。 「ナルト君、入るよ。」 「・・イタチ・・・って、後ろの面子は何でぞろぞろ断りもなく入って きてるんですか。ここって取り敢えず俺の部屋ってことですよね? 昨晩、初めて入った部屋なんですけど。」 「ナルナルの部屋だけど、別にお互い隠すことなんてないだろ、うん?」 「メンバー同士、不干渉が基本だが、別に構わないだろ。」 「礼儀を知らない人たちばかりですみませんね。」 上からデイダラ・サソリ・鬼鮫。 自己紹介なんぞは受けていないが、それぞれビンゴブックに名が載って いるということで、ナルトは誰が誰だか分かった。 それはそれとしてもまぁ、待て。ちょっと待てよ。 今の返答はおかしいだろ?? 俺のプライバシーはここでは一切無ないのは立場上当たり前だから この際、気にしないけど。 しかし、俺はいつ暁のメンバーになった。 俺は、なったつもりは無い。 勘違いしないで欲しい。 俺は、ここに拉致されてきたのであって自分の意思じゃない。 里を抜けるつもりもないし。 三代目のじじいが死ぬまでは俺はあの里を守るって決めたんだよ。 勝手に俺のことを拉致った挙句に、勝手に構成員にさせるな。 ナルトは自分の私物が一切盗まれていないことを確認すると、テクテクと 窓のほうへと歩き出した。 こんなところには1秒と用がない。 このままこの場に居ることは火影のじじいが非難される理由にもなるし。 俺自身、ここに居るつもりもない。 このままここに居ては、ここの空気に慣れて抜け出せなくなってしまうような 気がするからだ。 「じゃ、俺は帰りますんで。お邪魔しました。」 窓枠に足をかけてひらりと飛び降りた。 「そこ、絶壁ですよ。」 鬼鮫とか言う魚類の敬語口調の奴が言った。 確かに、底が見えなかった。 しかし、気にせず降下。 世界の裏側に続いているわけがないのだから、底はあるはず。 風を切って降下。 「ナルナル無謀にも程があるぞ、うん。」 自分の横を黒い影が落ちてきた。 ホウスウをでかくしたようなイメージだ。 そして、カパリと開けられた口の中に落ちた。 不名誉なことに二日連続で鳥の口に食われた。 先ほどの部屋に連れ戻され。 ふてくされた顔で、暁のメンバーを見やる。 黒地に赤い雲のかかれたコート。 そろいも揃ってよくそんなコートを着ていられるものだ。 「腕、痛いです。降ろして下さい。ってか俺は今すぐ里に帰りたいんですけど。 聞こえてますか?もしもーし?用ないなら放して欲しいんですけど。俺、朝一で 下忍の任務が明日あって帰らないといけないんですよ。」 一向に返事なし。シカトされた状態のまま時間だけが無情に過ぎる。 さっきのことがあってか今回はサソリの傀儡に両手を拘束されて宙吊り状態。 かなり情けない格好をさせられている。 両足をぷらぷらとさせて時たま傀儡を強く蹴ってはみるがびくともしない。 どんだけ頑丈に作ってあるんだこの傀儡。 埒が明かない。ここで一番、話が分かるのはイタチかな。 サソリとデイダラはシカトだシカト。 傀儡師と爆発の芸術家コンビは話が通じないと相場が決まっているんだ。 すっごい偏見だけど。 「イタチ、何とか言えよ。用ないなら俺は帰りたいの。お前らの遊びに付き 合ってる暇はない。」 「遊びじゃないよ。」 「じゃ、何のようですか?」 「ナルナルを暁に入れることにしたんだ、うん。」 「入らねぇーって言ってんじゃん。このイカレ!!」 「決定事項だ。」 「引きこもりは黙ってろよ。」 「ナルトさん、ここは穏便に話し合いしましょうね。」 「魚類は引っ込んでろ!!!」 一気に低くなる部屋の温度。 ナルトはいとも見事にそれぞれの地雷を踏み込んだ。 そして、爆発させた。 「此方が丁寧に話をしているのに・・・」 「頼んでねぇーよ。」 「ホウスウ爆発させるぞ、うん??」 「抱きかかえて死んでやる。」 「俺は引きこもりじゃない。」 「傀儡の中で生活してんじゃん。」 場の収拾がつかなくなってきたその時。 ホウスウが飛んできてナルトの頭を叩いた。 バシィ 「ホウスウ!?」 バシバシバシ 「ホウスウ痛いって。痛いってば!!」 まるでナルトが拗ねたように言い返しているのを大人気ないと怒っているように。 喋ることの出来ないホウスウはまだナルトを叩き続けていた。 部屋の中に居た一同唖然とした。 やる気を削がれたというのが正しい言い方だと思うが。 デイダラに造られたホウスウはナルトを攻撃し続けた。 一回一回のダメージは小さいが何回も続くと本当に痛い。 「・・・はぁ・・・・分かったよ。分かったから落ち着けホウスウ。」 結局ナルトはホウスウに根負けした。 その言葉を聴いてホウスウはナルトの頭の上に止まった。 いつもなら肩に止まるのだが、今はそこが空いていないので。 「何で俺が妥協案出さなくちゃいけないかのか分かんねぇけど。えっと・・・ 大人気ないことして悪かった。で、悪いが今はまだ暁には入らない。三代目 のじじいに恩返さなきゃなんねぇし。だから、三代目のじじいが死んだら入って やるよ。」 百歩譲ってだけど。しかし、それはそれで疑問が残る。 何故、組織に入らなければならない? 尾獣を抜くのなら、組織に組する必要はないはず。 「ナルナル、入るって。」 「お芝居程度に人を煽るって大変ですね。」 「引きこもりといわれたのには腹が立つけどな。」 「ナルト君が快諾してくれて良かったよ。」 ナルトの返答をきいた途端に変わる場の空気。 朗らかというか、してやったりというか。 作戦成功みたいな・・・。 ・・・・・・アレ? もしかして、俺は言ってはいけない何かを言ってしまったんじゃ。 ドッキリにかけられてしまった人のように止まる思考回路。 「・・・やられた・・・」 上手いこと嵌められてしまった自分が情けなくて。 こんなんじゃ文句の一つも言ってやれない。 悔しいが、偶然で、けれども必然だった出会いに文句なんてつける気にもならなくて。


話がぐだぐだ・・・。 精進します。

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