多少寒くなった秋空の下を今日も金色が彷徨う。 ひらり、ひらりとあても無く。 ただ、漂い彷徨っている。 帰る場所も見つからず。 居るべき場所も見つからず。 しかし、それが嫌だとは思わない。 今までそうであったし、これからもそうだと思うから。 それに、どこか一つの場所に留まるということは好きではないから。 好きな場所に飛んでいきたい。 それが許されないと分かっていても。 好きな時に、好きな場所に飛んでいきたい。 それが許される時など来ないと思うけれど。 イタチが里を抜けた。 何隊も送った追い忍も全滅しているようで。 どうやら、彼はまだ生きているようだ。 俺が借り出されないところを見ると、俺とイタチの関係を勘繰りしている人間が 上層部にどうやら居るようだ。 確かに、この判断は正しい。 実際、イタチの里抜けを手助けしたのは俺だし。 その際に、イタチが一族を皆殺しにしたことは多少驚きはしたが。 それも、予想の範囲内。 何故、弟のサスケを生かしたのかは謎だが。 殺してしまえばよかったのに。 そんな同情は彼にとっては重荷にしかなりはしないのに。 後を俺に任せるということは無いと思うけれど。 そんなことがあったら、きっと何日と・・・否、何分と持たずに殺してしまうだろう。 あんな甘ちゃんは嫌いだ。 守られて生きてきたあいつなんて嫌い。 サスケは大きくなったらイタチに似るのだろうか? 考えてぞっとした。 あんなのがイタチと似るだって? 外見がいくら似ていても、彼はイタチにはなれない。 そう思うことで、抑え切れなかった殺気を霧散させる。 ここが、火影邸の離れでよかった。 そうでなければ、暗部が飛び出して俺のことを殺したことだろう。 そうなる前に、俺が暗部の連中を殺さないということも無いが。 それにしても。 とうとう、本当に俺の居場所が無くなった。 この里は生き辛い。 イタチが居なくなって。 俺には、誰も居なくなった。 イタチは、『暁』という組織に行くといった。 S級犯罪者の集まり。 一癖も二癖もある連中。 果たして、イタチは何年そこに居ることが出来るだろうか? 楽しみだ。 イタチが里を抜けて2年ほど経った頃だったか。 一通の手紙が届いた。 土粘土で造られた鳥がいきなり窓から飛び込んできて、口の中から手紙を吐き出した。 良く、この場所が分かったものだ。 屋敷の周りには結界が張ってあった筈だし。 「よく出来た作品だな。」 手紙を吐き出した鳥は、サッシの上に止まったままじっとこちらを見ていた。 どうやら、返事を持って帰るよう命令されているようだ。 しかし、イタチはこんな変な土遊びは知らないはずだ。 コレは、岩隠れの限られた人間しか出来ないはずだし。 そうか。なるほど。確か・・・・名前は『デイダラ』といったはずだ。 最近、岩隠れの里を一人の忍が抜けたらしい。 その、デイダラという奴の十八番がコレのはずだ。 「爆破粘土のはずだよな、コレ?タイムリミットが過ぎると爆発すんのかな?」 ナルトの言葉が分かるのか粘土の鳥は首を傾げるが、翼を広げるとナルトの頭を叩いた。 どうやら爆発しないらしい。なおも頭を叩き続ける鳥をナルトを手に握り、 「爆発しないのな。お前。じゃ、俺が返事書きたくなるまで一緒に行動。分かった?」 言い終わると、手を離して鳥を上に放る。 鳥はくるくると部屋の中を旋回すると、再びサッシの上に止まった。 「名前決めないとな。」 まぁ、取り敢えず手紙を読んでしまおう。 「え〜っと。」 速読してしまうと、ナルトは手紙を燃やした。 「何がよろしくやってますだ。良かったらナルト君もおいで?アホカァ!!!」 どうやら、暁という組織は抜け忍にとってはとても居心地がいい場所らしい。 S級犯罪者限定のような気もするが。今は、そんなことはどうでも良い。 「何が・・・・ナルト君の写真を見せたらみんな快諾してくれただ!!写真て何の話だよ!?」 いきなり暴れ始めたナルトを心配して鳥が寄ってくる。 翼を広げるとナルトを労わるように頭を撫でる。 「何?慰めてくれるの?お前優しいナァ。」 ナルトは、鳥を抱きしめると頬擦りをした。 「よし!お前の名前決めるぞ!!何が良いかな?あ〜ん〜・・・・ホウスウ!!これにしよう。」 鳥は首を傾げた。意味が全く分からない。 どうやら、知能指数が高い模様だ。 言葉は通じなくとも楽しい話し相手が出来た。 「ホウスウっていうのは南方朱雀の鳳凰の鳳に雛鳥の雛で『鳳雛』って書いて、 将来大物になる素質を持った若者を指すんだよ。お前将来大物になりそうだし。」 ナルトは笑ってホウスウの頭を撫でた。 ホウスウがナルトの下に来て以来、ナルトは任務に出るときは必ず隣にホウスウを連れていた。 ナルトの左肩の上に乗って行動を共にするホウスウ。 来たばかりの時は白っぽい茶だったその体も最近では血に染まって赤くなってきた。 それでもナルトはホウスウとできるだけ一緒に過ごした。 秋風が体に堪えるようになった満月の夜。 任務帰りナルトはふらふらと霧隠れの里を通った。 霧が深い。 しかし、誰かが前から来る様子もないし。 と、ホウスウがばさばさと翼を広げて飛び立とうとした。 「ホウスウ?」 ホウスウはナルトのことなど忘れて飛んでいこうとする。 ナルトは慌てて後を追った。 この霧の中で見失えばもう会えないような気がして。 「捕まえた!!」 やっとのことでホウスウを捕まえると、人の気配がした。 ・・・近い? 「何やってんだ、うん?」 「!!!!」 驚いて振り向くと、なにやら怪しい格好をした緑髪の男が。 とっさにクナイをホルスターから抜こうとした・・・ 「ナルナル、すとっぷ。」 しかし、抜けずに終わった。 ナルナル?誰だよ。 ってか、俺のことか?俺のことだよな!? 変化しとけばよかった。 面しとけばよかった。 気を抜くんじゃなかった。 緊張感のないままナルトは男と対峙した。 こんなに近くに居て気配が知れなかったことからしてもこいつは強い。 格好は変だけど。 俺は、警戒を解かないまま一言言った。 「人違いだ。」 「そんな事ないぞ、うん。イタチの見せてくれた写真そんままだし。」 「・・・イタチ?」 聞き間違いであって欲しかった。 だって、それはあの人の名前だ。 同姓同名の人が居たらその人が良いけど。 俺の知っているイタチは一人だし。 イタチが知っている俺も一人だろう。 「それに、何よりもオイラの力作が一緒だし。」 「力作・・・・ホウスウのことか?」 「ホウスウ?あぁナルナルが命名した奴ね。」 「ってか、ナルナルって何だよ。」 「ナルナルはあだ名。普通じゃつまんないだろ、うん。」 「・・・・暁ってこんな奴ばっかなのか?」 「オイラは常識人だ、うん。」 「あぁ、俺木の葉に居よう。」 「ナルナル、オイラ達のとこくれば良いのに。里に居ても肩身狭いだろ、うん?」 「俺は、まだ常識人で居たいです。ホウスウ帰るよ。じゃ、さよなら。」 「え!?ナルナル来ないの??」 「行かない。じゃ。」 ナルトは男に背を向けると走り出した。 霧も晴れ始めていたので早く帰らなければじじいに怒られる。 「ナルナル!!気が向いたら来いよな!!オイラ待ってるから。」 「アンタの名前、知らないから行かないよ!!(知ってるけど)」 「デ・イ・ダ・ラ!!!」 「・・・ぁあ??」 名乗るなよ。こんなとこで本名名乗るな!!!! こうして、俺とデイダラは霧の中で出会った。
毎日一個ずつ10のお題をクリアしていこう。 別名喪中シリーズ始まりました。 これ、実際は9月26日から始まったのですが。 サイトの開設に間に合わなかったので一気にUPということで。 これから、49日が終わるまでお付き合いいただけたら幸いです。
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