強い魂。 強い意志。 強い想い。 強い悲しみ。 強い怒り。 成仏できずに。 そこに留まって。 動けない。 漂って。 君を探すだけ。 死者の魂は、残留し念が強ければ強いほどこの世に残るらしい。 朝起きたら横に、知らない男が寝居ていたので、思わず蹴り落とした。 その男は金髪の持ち主で。 何処となく、四代目火影に似ていたけれど。 きっと、他人の空似だと思って。 急いで、着替えて部屋を飛び出した。 「イタ兄!!!!お化けだってばよ!!!!」 うずまきナルト。 人以上に霊感が強く。 今までに何度も霊に会い。 そのたびに求婚されるという。 誇れない魅力を持っていた。 そのせいか、ナルトはこの世で唯一 『お化け』 と称されるものだけは苦手だった。 ばたばたとナルトはキッチンに走りこんだ。 みんな朝食を食べに集まっているはず。 そう思い、ナルトは駆け込んだ。さながら駆け込み寺だ。 「イタ兄!!!俺の部屋に金髪のお化けがでたってばよ!!!!!」 「お化け?こんな時期にかい?」 「ナルナル、寝ぼけてんじゃないのか、うん?」 「お化けなんて、居るわけない。」 「ナルトさん、取り敢えずココアでも飲んで落ち着いてください。」 「ありがとうってば。じゃなくて、信じてってばよ!!!」 ナルトの叫び声はむなしくキッチンに響い・・・・・ 「ナル君、パパのことをお化け!!なんて叫んで蹴り落とさないでくれるかな?」 ナルトの叫び声はキッチンに響き、そしてさわやかな笑みを浮かべる 自称ナルトのパパを召喚した。 ナルトは、ぎしぎしと油の切れたブリキロボのように後ろを振り返った。 「いやぁぁっぁああああぁっぁっぁっぁあああ!!!!!!!!」 ナルトは持っていたマグカップをお化けに投げつけイタチの後ろに隠れた。 「ナル君酷いよぅ〜パパのこと嫌いなの???」 「俺ってばアンタなんて知らないってばよ!!」 「嘘!?イタチ君ホント!!!??」 お化けはイタチを睨むようにしてみた。 その手には投げつけられたマグカップがしっかりと握られていた。 イタチはお化けの生前の姿がガラガラと音を立てて崩れるのを感じながら、 色々と考えながら言った。 「えっと・・・・多分ナルト君は知らずに育ったはずです。」 「何で!?」 「三代目がナルト君が成人したそのときに話そうと。そう言う事になっていましたので。」 お化けの癖に、やたらと威圧感だけはある自称パパはバックに雷を落としながら イタチの発言に固まっていた。 「そんな・・・・ナル君が僕の事、知らないなんて。」 お化けは床に蹲ってのの字を書き始めた、 しかし、お化けこと木の葉の英雄と呼ばれた四代目火影様は持ち前のポジティブ精神で すぐに立ち直った。 「よし、じゃここでナル君に僕のことちゃんと説明してくれるかな、イタチ君?」 華が咲いたような営業スマイル。しかし、その目だけは絶対零度を誇っていた。 ちゃんと説明しなければ、自分の命はないとイタチは悟った。 「ナルト君。今、目の前にいるお化・・・・じゃなくて、四代目火影様は、ナルト君の 実のお父さんなんだ。分かるかな?」 「おと・・・う・さん?」 「そうだよ。木の葉の英雄って言われてて・・・・・」 イタチが自分の命をかけて、本当に言葉どおりに一生懸命ナルトに注連縄について話している のを見ながら関係のないデイダラ・サソリ・鬼鮫は純粋な感想を述べていた。 「ナルナルの父親って、四代目火影って話しマジだったんだな、うん。」 「そうみたいですね。それにしても、よく似てますね。」 「ナルトのほうが可愛い。」 「「サソリさん・・・(旦那??)」」 イタチがナルトと注連縄の間に立って四苦八苦しているのを見ていると、ナルトはうつむいて しまった。握りこまれた拳はぶるぶると震えていた。 きっと注連縄を見て、ナルトは言い放った。 「今更、そんなこと言われても知らないってばよ!!!!!!!!!!!!」 泣きたいのか。 怒りたいのか。 喚きたいのか。 どうしたいのか分からない。 ナルトの瞳はぐちゃぐちゃだった。 「今更のこのこ現れて。俺のお父さん!?ふざけんなってばよ!!俺が今までどんな気持ちで 生きてきたかなんて知りもしないくせに!!何で、俺に九尾なんて封印したんだってば?? 父親のあんたが英雄と呼ばれるなら、俺もそういわれると思ったんだってば?!大間違い だってばよ!!木の葉の里人はそんな眼で俺のことなんて見れくれなかったってば!! 俺は、里を襲った九尾で、災厄を運んできて。里に害しか為さない忌み子だってば!!! あんたらの勝手で、俺は九尾を入れさせられて外の世界も知らないで、里に拘束されて、 殺されそうになって、誰も見方は居なくて。それなのに、今更へらへら笑って出てきて。 謝りもしないで。自分に罪はないとか思ってんのかってばよ??ホント、いい加減にして。 俺だって、四代目火影が自分のお父さんだったら、どんなに良いだろうって何回も思った!!! でも、それはタダの気休めみたいなもので、俺がどんだけ惨めだったか分かるかってば??」 息をつく暇もなく、ナルトは言い切った。 頭の中は混乱しすぎてわけが分からなくて。 酷いこと言っている自覚はあった。 でも、それを止められるだけの許容量なんてなかった。 どうして、今更現れたりしたの? 何で、笑うの? 泣きたいくせに、笑って。 それが一番辛いって俺ってば知ってるのに。 でも、どうしようもなくて。 堪えようと思った涙は、意思に反して頬を伝わった。 注連縄はナルトに歩み寄り、目線を合わせるように膝をついてナルトを正面から見た。 「ナル君。僕は君に許してもらおうとは思わないよ。だって、酷いことをしたって分かってるから。 一人の父親としての道よりも、火影としての道をとってしまったんだから。息子と里を天秤に かけるような酷い父親だもんね。だから、ナル君が俺のことを憎く思うことだって仕方ないことだし。 そのことを責めようとは思わない。ただ、ナル君がこんなに大きくなってくれたことが嬉しくて。 今更、父親ぶってこんなこというのは卑怯なんだと思うんだけど。僕は君を誰よりも愛していたよ。 それだけは紛れもない真実だから。ほんとに、ごめんね。謝っても、謝っても足りないけど。」 「あや・・まんな・ってばよ!!!」 「ごめん。」 「あやまんな!!」 「ごめ・・・」 ナルトは注連縄の口を両手で塞いだ、 「あやまるな!俺ってば、怒ってるけど、でも俺が火影で、アンタと同じ立場だったら、きっと・・・ 俺も里を守りたいから・・・だから・・・・・怒ってるけど、憎んでなんかないんだってば。それだけは、 誤解しないでってば!!!」 「!!!!」 注連縄は、空色の瞳を見開いた。 なんて、強く、優しい子なんだろう。 誰よりも痛みを知っているから。 誰よりも悲しみを知っているから。 だから、誰よりも優しくなれる。 注連縄はナルトの手を両手で包んだ。 「ナル君は、僕の自慢の息子だよ。」 注連縄は微笑んで光の粒子となって消えた。 かに思われた。 「で、何でとう様はここに居るんだってば!?」 成仏したはずの注連縄は現在進行形でこの世にいた。 あの後粒子となって消えたと思っていた注連縄は数時間後、再び舞い戻った。 注連縄曰く。 『可愛いナル君をこんなところに一人置いて成仏なんて出来ません!!!ナル君の旦那さんは、 僕がちゃんと見極めないと!!成仏なんてしてられません。』 ということであった。 「注連縄、さっさと成仏して星にでもなってろ!!!!」 まだまだナルトの受難は続く。
当初はシリアスに終わらせようと思っていたけれど。 いつの間にかギャグになっていた。 もっと精進します。
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