舞を舞うかのように敵を翻弄して。 舞踊を見ているかのように流れるように敵を殺すお前を。 綺麗だと。 見ほれてしまう自分が居ても。 それは、仕方のないことだ。 この舞に見惚れない者など居るわけがない。 静かでしかし、力強く。 緩やかなようで速く。 金色が舞うと赤が飛び散る。 ツーマンセルだということはこの際、忘れて。 君に見惚れる。 手を出そうとする。 その舞に混ざって舞ってみたい。 でも、君はいつだって手を出すなと無言で俺を戒めるから。 「かかって来いよ。」 その言葉が合図であったように。 追い忍たちはいっせいに攻撃を開始する。 「火遁、豪火球の術!」 「火遁、火龍炎弾!!」 「火遁、鳳仙火の術!!」 視界が灼熱の炎に奪われる。 木の葉は火の国。 火遁はお家芸。 火遁を使いこなせて初めて認められる。 けれど、この程度の火遁で俺が灰になるとでも? 笑わせるな。 「水遁、水陣壁の術!!!」 水に押された火が掻き消える。 水蒸気になった水が一瞬だけ視界を奪う。 それを狙って消えるか消えないかの瀬戸際に投げられたクナイと手裏剣。 ノータイムでチャクラを纏わせた鋼糸で叩き落す。 地面に落ちた瞬間にいくつかのクナイが爆発を起こす。 「起爆札を巻いてたのか。」 爆炎の中から後方に飛び出す。 「はぁぁあぁぁあああぁ!!!」 振り返る。 暗部にのみ支給される忍刀を振りかぶって切りかかってくる。 クナイをホルスターから引き抜き刀身を受け止める。 ナルトの動きが止まった一瞬を見逃さず。 両脇から忍刀がナルトの体を貫く。 突き抜ける忍刀。 手ごたえは確かにあった。 けれど、 「はずれだ。」 ぽんと白い煙を吐き出してナルトが消える。 ナルトが一番得意としている影分身。 実態があるだけに見破ることも出来ない。 仕留めたと思った瞬間に消える。 「影分身!?」 驚きの声が木霊す。 「止まるな、遅い。」 放たれたくないと手裏剣。 「手裏剣影分身の術。」 10が一気に30に増える。 叩き落せなかったクナイや手裏剣が刺さる。 クナイを避けるために咄嗟に組まれた腕で一瞬動きが止まる。 「!!」 その隙にナルトは間合いを詰めて蹴り飛ばす。 飛ばされて木の幹に背中からぶつかる。 手加減はしない。 蹴り飛ばした腕がみしみしと音を立てていた。 折れるかと思ったが手甲に守られて折れるまでいかなかったか。 一人目を蹴った余力で傍に居た二人を右と左に蹴り飛ばす。 「水遁、水龍弾の術!!」 「氷遁、破龍猛虎の術!!」 背後から襲う水龍を氷虎が捕らえる。 水龍と氷虎が喰らい付き合う。 水龍がその長い体をうねらせて氷虎を絞めつける。 氷虎も強靭な牙と爪で水龍の体を切りつける。 水龍と氷虎の決着がつく前にコクコはクナイで切りかかる。 「ナルトさんの印を組む手は速くて、やっぱり目で追えませんでした。」 「余裕じゃん。」 「何だかんだ言いながら、あなたは私達を殺す気がない。だから、隙が出来るんです!!!」 「本気を出す相手じゃないだけだってばよ?」 小馬鹿にしたように、昔よく使っていた口調を使って。 あの時、自分達は6歳も年下の少年に修行をせがんでいた。 里一の忍。 彼の強さは暗部では有名だった。 『セイスウ』生けるものを束ねる。 ー生芻ーと書き死者への贈り物を意味する。 死神のように現われ。 彼の敵は誰一人として生きて帰ったのもは居ないとされている。 しかし、このことを彼に言ったら、 「火のないところに煙は立たない。俺と戦って生きて帰った奴も居る。 たまたまターゲットではなかった時とか。暁の連中は強かったよ。」 と楽しげに言っていたのを思い出す、 彼は、自分よりも強いものが好きだった。 何故だかは分からないけれど。 殺してくれるとでも思っていたのだろうか? 今となっては分からないけれど。 彼の元で修行をして、前とは比べ物にならないほどに強くなった。 今なら、彼は俺のことを認めてくれるだろうか。 本気を出して戦ってくれるだろうか? 彼は、一度だって本気で戦ってはくれなかった。 手を抜くことはなかったけれど。 彼が息を乱すことも。 鼓動一つも乱すことはなかった。 力の差は歴然としていた。 彼の強さは、3代目や4代目をも凌駕するかもしれない。 それほどにまで彼は強かった。 彼に守られて、木の葉は生き残ってきた。 その彼に今から、命をかけて挑む。 傷の一つでもつけられたら光栄だ。 「なら、本気を出していただきましょうか!!」 本気のあなたと戦うのが夢でした。 クナイを受け止めたナルトの腕に更に体重を乗せて押しつぶす。 体格で言うならば、細身のナルトよりもコクコのほうに分がある。 ナルトは重心を移動させ、コクコを後ろに流した。 その力を利用してクナイを放つ。 コクコは背中の忍刀を抜かず、その鞘でクナイを薙ぎ払う。 距離を縮め拳を突き出す。 ナルトが下に沈むことによって拳は虚しく空を切る。 拳を出したことでずれた重心。 コクコが重心を戻す前に沈んだ体勢からナルトが突き上げる。 体重を左に少し傾け避け、その腕を掴んで背負い投げるように幹に飛ばす。 ナルトは猫のように体を丸めて木に足をつける。 ガガッガッ ナルトが居た木にクナイが刺さる。 そこにナルトは居ない。 コクコは空中に跳んだナルトの足を掴むと地面に叩きつけた。 かと思ったが手応えがない。 変わり身。 ザクッ 後ろから忍刀がコクコを貫く。 しかし、白い煙を出して消える。 影分身だ。 「体術、忍術。組み合わせ方やタイミング。上手くなったな。」 「あなたが居なくなってから3年たちました。その間遊んでいたわけじゃない。 俺は、あなたを里に連れ戻すためにずっと暗部で力をつけて居たんだ。」 「・・・俺は、もう戻らない!!」 「ならば!!!!」 コクコは背中の忍刀を引き抜き上段に構え、振り下ろす。 ナルトは規定よりも長めに作り変えたクナイをコクコの心臓めがけて突き立てる。 ザシュッ 「!!!!!!!」 ナルトのクナイがコクコの胸に吸い込まれる。 コクコの忍刀は カラァン 地面に落ちた。 コクコはナルトを抱きしめた。 片手は背中を片手は頭を胸に。 頭を強く抱いて肩に押し付ける。 離したくないと。 強く、強く、抱きしめる。 胸に吸い込まれるように刺さったナルトのクナイは忍服を切り裂き身を切り裂き、 心臓に到達していた。 ゴフッ コクコの口から大量の血が吐き出される。 その真っ赤な血がナルトの頭に降り注ぐ。 さらさらとした水が髪を伝い首に落ちる。 「あなたが里に戻らないなら。俺はあなたと逝く道を選びます。」 閃光がナルトを包む。 空気が爆発によって振動する。 それをデイダラはただ見ていた。 ナルナルの背中に張られた起爆札。 きっと、あのコクコとかいう奴の全身にも起爆札が張ってあったに違いない。 後、残りの暗部3人も同じだろう。 ナルナルとコクコを中心として三角形の頂点の位置に立っていた。 魔方陣のような役目を果たしているはずだ。 手を出すことをナルナルは嫌がるだろうし。 何よりもまさかオイラ自身、結界の外に追いやられるなんて思いもしなかったから。 そのおかげで爆風にあおられることもなかった、うん。 結界の外と中は完全に隔離されていて、透ける薄い膜の外と中では次元が違う。 結界はまだその存在を誇示していたがパリンという硝子板が割れるような音を たてて消えた。 結界が崩れるのは術者が死んだ時、もしくは瀕死の重傷を負ったときのみ。 「ナルナル」 一陣の風が吹き爆煙が晴れる。 ボロボロになったナルトが一人立っていた。 背中しか此方からは見えないが、焼き爛れて肉の焼ける臭いがした。 結界の中にはナルト以外の気配は感じられない。 どうやら、決着はついたようだ。 さっきまであった境界線を越えてナルトのほうに歩み寄る。 「ナルナル。帰ろう、うん?」 「寄らないで。」 ナルトは顔を上げ、こちらを振り返った。 血のように真っ赤に染まった瞳。 はらはらと涙が伝っていた。 怪我の程度が酷い場所から治癒をしているのか、シュウシュウと傷口が 煙を上げて居る。 無くなったパーツはないようだが、中がどうなっているのかは分からない。 一刻も早くアジトに帰って治療しなければならない。 「ヤダね、うん。」 デイダラはナルトの元に歩いていく。 傷だらけの華奢な体を抱く。 何処もかしこもボロボロで、今こうして立っていられる事が不思議だ。 「デイダラ、放せ!!」 「ヤダ。」 「放せってば!!」 「聞けないな、うん。」 「はなせ・・・よ・・・」 「死んでも放さない。何があっても放さない。」 「・・・・・・っ・・・」 動かない身体。 無事な箇所なんてほとんどない。 痛みは限度を通り越して、身体が感知しないように脳が勝手に操作している。 「オイラがちゃんと運んでやるから。今は寝とけ、うん。」 「・・・デ・・・ィ・・・ダ・・・・・」 意識が暗転した。
喪中シリーズ第五夜です。 中篇です。 これから後編、アンタはどうしたいんだ。 と思われている方多数。のはず。 しかし、どうにかしなくては。 と、頑張ってみています。
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