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『鳥篭の中』

鳥篭の中で育ったお前。 外の世界など知らないで。 教えてもらえることもなく。 世界から隔離されて。 けれど、そのことさえも知らないから。 自分が一人だということも知らない。 お前は、鳥篭の中で一人寂しい闇に生きる。 真っ白な四角い部屋の中に必要最低限のものだけが用意されていた。 そこに暮らすのは、一人の少年。 余りに幼い彼。 まだ3歳になろうかならないかといったところだろうに。 彼は、親を知らない。 彼は、人の愛情を知らない。 彼は、人というものがどういったものなのか知らない。 彼は、何も知らない。 彼の一人きりの世界に入り込んだ俺。 「はじめまして。ナルト君。」 「・・・・・」 「君の新しい護衛役になった、うちはイタチです。」 「・・・・・」 「よろしくお願いします。」 「・・・・・」 変わらない表情。 何も映さない瞳。 「・・・・・・要らないのに。」 初めて聞いた君の声。 子供特有の高い声。 耳触りが良くて。 もっと、君の声が聞きたい。 「火影様からのたっての願いですから。」 「任務なら尚更ければ良いのに。あんた『うちは』なんだろ?」 「俺がやりたくて、来たんです。」 「変な人。」 君の中に残れたら良い。 そうやって、少しずつでも俺が視界の中に入れば良い。 「それで、今日からは俺と一緒に里で暮らします。」 「里で?」 「そうです。」 「あぁ、遂にここからも追い出されるのか。」 「違いますよ。ここから、外に旅立つんです。」 「放り出されることと何が違うの?」 「俺が、君の傍に居ること。」 「・・・・・・は?」 ナルトは素っ頓狂な声を出す。 また、新たな君を見た。 もっといろんな君を見たい。 「俺は、君をナルト君を裏切らないよ。ずっと傍に居る。」 「任務だからでしょ?別に良いよ。じじいには言わないから。」 「ホントだよ。俺はナルト君と一緒に居る。いつでも。何処でも。」 「・・・・信じないよ。」 「いつか、信じてくれれば良い。今はそうでなくても。」 「いつかなんて・・・・来ない・・・。」 「来るよ。だから、行こう。」 籠の鳥は、外の世界にはばたった。


喪中シリーズ第八夜です。 今までの中で一番短いかも。 しかし、この話は余り長すぎてもという気分だった。 ので、この長さに収まりました。 蝶のお題もあと二つ・・・・。

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