9.15

一年って言うのは巡っちまえば一周してまた戻ってくるもんだけど。 この日ばっかりは巡ってきて欲しくないんだから仕方ない。 俺にとっては最悪の日なんだ。 どうして、この日は俺が大人しく言われるままにならなくちゃいけない? そんな決まりないダロ!? 可笑しいって。 俺は里に貢献してるんだ!!! こういう日を回避するために毎日頑張ってるのに。 どうして、どんなに頑張っても俺の意見は無視されるのさ。 貢献者の意見を尊重しろよな!! そう、明日はカカシの一年に一度の誕生日だ。 暗部の任務報告書を出した帰り、人生色々に寄った。 情報を交換しておきたいこともあったし。 最近顔出してなかったから久しぶりに行きたくなったし。 そしたら、其処には俺にとっての災難があったんだよ。 どうも、そわそわと落ち着きのない空気が漂ってる。 何がどうしてこんなことになってるのかは分からない。 ただ、こうなっている現実だけが目の前にある。 「アスマ。何かあったのか?」 「ナルトか。イヤ、これと言ってないんだけどな。ただ……」 そこで言葉が切れる。 嫌な切れ方の気がしてならない。 くそっ、何か言いたいことがあるなら歯切れよく言え。 俺だって、そんなに暇じゃないんだ。 おとなしく、早く白状しろ。 「アスマ」 「……15日、カカシの誕生日なんだよ。」 「誕生日?だからなんだよ。」 「あの歳でもな、ホラ。」 「祝って欲しいとか、馬鹿げたこと言うんじゃないよな?」 冷たい殺気がアスマを背後から襲う。 暗部時代に前線に立っていたときでさえ早々感じなかった殺気。 冷たい氷が全身を覆っているような寒気。 そして、同時に感じる刃物のような鋭さ。 刃物の切っ先が喉の突きつけられているようなもんだ。 その殺気を一身に感じながら、アスマはそれでも言った。 これで、攻撃を食らっても仕方ない気がする。 「俺だってこんなこと言いたかないがな。」 「じゃ、言うなよ。」 「言わなきゃ、俺たちの安息がなくなるんだよ!!!」 「俺の安息は無視か!!?」 アスマの必死な声の後ろには、人生色々に居る全ての忍の思いが重なっていた。 彼らも必死のようだ。 このまま、ナルトがカカシの誕生日をスルーした日には、先にあるのは死。 それこそ、ねちねちと自分の誕生日をナルトに伝えなかったことに対しての苦情、 八つ当たり、果ては責任転嫁。 それらの、本来ならどうして俺たちが!!という苦難を受け入れなくてはいけなくなる。 それだけは、回避したかった。 どうしても。 どうしてもだ。 しかし、ナルトだってカカシに関しては自分が一番可愛かった。 どうして、俺が被害を一身に受けなくてはいけない!? それは、可笑しいことではないのか?? 俺だけが犠牲になるなど、考えられない。 毎年犠牲になっているんだ、今年こそ逃げ切る覚悟で居たのに。 思い出させなければ忘れていられたんだ。 忘れていれば、それでことは済んだかもしれないのに。 俺の安らかな日々をあいつのためになくしたくはない。 「俺は、絶対に祝わないからな。」 そこには死神の顔をした死神が居た。 「シカ!!シカ!!!」 「んだよ。そんなに叫ばなくても聞こえてるっつの。」 シカマルが、顔を上げて入り口を見やる。 其処には、周りのものを破壊しながら部屋の中に入ってくるナルトの姿。 トラップや、暗号は解除しながら着たようだが、破壊もしながら進んできたようだ。 凄まじい音が後ろのほうでした。 しかし、シカマルは聞こえない振りをしてナルトを部屋に招きいれた。 壊れたことはどうでもいい。 直せばいいだけだ。 それが面倒だから出来れば壊して欲しくないと言う願いもある。 が、今は、そんなことはどうでも良い。 今重要なのは何でこんなに、ナルトが荒れているのかということだ。 「シカ!!ちょっと聞いてよ!!!」 当分、仕事は出来そうにない。 「で、そんなに荒れてどうしたんだよ?」 「今月の15日が何の日かご存知ですか?」 満面の笑みを浮かべた死神。 変に間違ったら命はなさそうだけど。 9月15日なんてアレ意外、特に思いつかねぇし。 この際、間違っても仕方ない。 「敬老の日。」 「ぶ、ぶぅ〜。」 ナルトは胸の前で両腕をクロスさせると大きな×印を作った。 「敬老の日はハッピーマンデー法によって9月の第3月曜になったんです。」 「じゃ、何だよ?」 「正解はヘタレ上忍の誕生日でした。」 「あぁ、はたけ上忍な。祝えってか?」 「そう!!!」 待ってましたといわんばかりにナルトは立ち上がる。 そして机に乗り、シカマルに近づく。 机を挟んで対面式に座っていたのだか、外れだったようだ。 机の上の資料が床にばさばさと落ちていく。 分からない人間が一見すればぐちゃぐちゃに見える乗せ方だが、それなりに法則 があって乗っていた。 しかし、落ちたせいでそれこそ中身は見た目と共にぐちゃぐちゃになったことだろう。 が、ナルトはそんなこと一切、気にしない。 ナルトにしてみれば自分の話のほうが重要らしい。 資料なんてまた綺麗に並べればいい。 だが、自分の気持ちは今伝えなければならない。 何よりも優先されるべきことなのだ。 「20代も後半になって、誕生日祝って欲しいって普通いわねぇダロ!?しかも、他人の 口から!!よりにもよってあのアスマが言ってきたんだ!!信じらんない!!!!世界は明日に でも滅びるね!!寧ろあの変態が居る世界なんて滅んでしまえば良い!!あ、でもシカは 俺から離れたらダメだから。一緒に違う世界に飛ぶから心配しないで。」 「はたけ上忍の事に関しては信じるなよ。ほっとけ。それと、それぐらいで世界を 滅ぼそうとかするな。色々困るから。」 「だって!!ほっとけるなら、俺だってそうしてる!!でも、ダメなんだよ。それじゃ。」 ナルトは過去のできごとを思い返していた。 カカシの誕生日をシカトして、家に帰ろうとしたら拉致られ。 数日間、嫌がらせのようなセクハラを受け。 その上、自宅を占拠されるという暴挙に出られた。 どれも、すぐさま実力行使を持って排除し、解決した。 しかし、あんな悪夢と今年はさよならしたい。 今年こそは!!! だが、妙案は不思議なくらい浮かばない。 百面相のようになっているナルトを見ながら、シカマルは呆れ顔で言った。 「素直に祝ってやれば。」 「い・や・だ!!」 何がどうして、そんなにもイヤなのか分からない。 祝ってしまえばそれは、其処で終わるんじゃないのか。 祝ったから、はいお終い。 一言、おめでとう。 それで、いいんじゃないのか? 「何でそんなに祝いたくないんだよ。」 「祝ったら、付け上がるから。」 「は?」 用意していた返答されるだろう選択肢意外からの解答。 何をどうしたら付け上がるになるんだ? 確かに、はたけ上忍の性格からしたらあるかもしれないが。 本当にそんなことになるのか? シカマルの疑問を読み取ったようにナルトは過去の実例を述べる。 「前にもあったんだよ。同じ任務について、いい動きをしたから軽く誉めたんだよ。 今思えば誉めなきゃ良かったと思うんだけど。それから、動きは更に良くなったよ。 けどな、それで毎回、尻尾振った犬みたいに誉めて誉めてって近寄るな!!!ウザイ」 「それ、付け上がるとちがくないか。」 「似たようなもんだ。」 全然違うと思う。 全然違うと思うのだけれど、言わない。 言ったら、なんか反感かいそうな雰囲気だ。 正しいのは多分、懐く、だと思う。 確かに、はたけ上忍に懐かれるのは勘弁だが。 ナルトならあの人を上手に使うことくらい分けないと思うんだけどな。 顎しゃくっただけであの人ほいほい働きそうだし。 そんな美味しいやつ使いたい放題じゃないのか? うまいこと使えばいいと思うんだけどな。 シカマルの言いたいことを感じ取ってナルトは言った。 「うまく使おうとしたら、それなりの報酬が居るんだよ。シカ。」 当然、お金の問題じゃなくて。 「愛でも欲しいって?」 「ビンゴ!!!」 「……………………」 瞬間、冷たい空気が広がった。 絶対零度の冷気が部屋の中を覆った。 さっきまでとは打って変わって、シカマルは静かに言い切った。 「ナルト、祝わなくて良いからな。」 あの変態、愛が欲しいだって? 冗談でも、そんなこと許せるか。 しかも、ナルトからの。 上等だ。 正面から伸してやる。 楽しみにしてろ。 それ相応の報いを受けてもらおう。 ナルトが誰のもので。 ナルトが俺にとってどういう存在なのかを。 腐れ上忍が手を出していい存在なのかを。 はっきり、教え込んでやる。 「ナルトがあいつの誕生日祝って、勘違いされたら困るからな。愛情から派生した 祝いだとか。愛がこもってるとか。愛されてるとか。勘違いされたら面倒だ。 ナルト、あいつの誕生日は祝わなくて良いからな。絶対に祝うな。寧ろ、呪え。」 シカマルは切れていた。 ナルトだってめったに拝めないくらいには。 これで、シカマルがナルトに協力するのは決まった。 後は、作戦を練って、決行するだけ。 「「カカシ(はたけ上忍)の誕生日なんか祝わない!!」」 高らかに宣言され。 そして、ふたりの計画は始まった。 9月15日 二人の悪魔が木ノ葉の里に光臨し。 はたけカカシがその日から何日間か行方不明になり。 傷だらけで発見されたのだった。


カカシ君誕生日おめでとう!! なんか全然祝ってる感じがないんだけど。 気にしないで!! ファイト!!

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