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櫻 追編

桜の花びらが視界を覆い尽くした。 桜吹雪の中で真っ赤な紅を引いた唇が。 音も無く何かを言っていた。 はっきりと見えなかった。 何て言っていた? 何もかも曖昧でこれはただの夢だったのかもしれない。 「・・す・・・・・すけ・・・サスケ!!」 白拍子? 「サスケ。起きろってばよ!!サスケ!!!」 「うずまき、そんなに揺らしたらかわいそうだよ。」 「ヒビキさん。でも、そんなこと言ってたらサスケのやつ起きないってばよ!!」 「まぁまぁ。」 「っう・・・ナ・・ルト?」 意識が浮上する。 同時に視界が揺れてぐらぐらしていることに気づく。 「やっと起きたってばよ。」 「どこだ・・・ここ。」 白い天井が見える。 確か、俺は任務に出ていたはずだ。 ヒビキと一緒の暗殺任務だったはずだ。 いつ戻ってきた? ナルトはサスケから手を放すと腕組みをしていった。 「任務帰りにいきなり倒れたって。それでヒビキさんがサスケのこと背負って ここまでつれて帰ってきてくれたんだってば。」 「いきなり倒れるからびっくりしたよ。」 「俺が居ない間ちゃんと寝てたのかってばよ?」 「・・・」 ナルトに疑うように見られる。 自分では寝ていたと思う。 熟睡できていたかどうかと聞かれれば答えはノーだけど。 体調を崩すほど無理をした記憶は無い。 ナルトはため息をついた。 「あぁもう。サスケってば俺がいないと健康管理も出来ないのかよ。」 「そうきついこと言ってやるなよ。うちははうずまきがいないと情緒不安定になるん だから。」 「困るってばよ。」 「愛されてるんだから、大目に見てやれ。」 「仕方ないなぁ。惚れた弱みってやつ?それくらいなら許容してやるってばよ。」 漫才のように繰り広げられる会話。 サスケはそれを聞きながら曖昧な自分の記憶をたどっていた。 任務は完遂したはずだ。 任務が終わってヒビキが自分の元に現われて。 そこまではちゃんと記憶がある。 それから、ヒビキに夜桜を見に行こうと誘われて。 それで・・・・・そうれからどうした? 「ヒビキさん。俺、いつ倒れました?」 「桜山に行こうとする途中かな?せっかくの見頃だったのに残念だったよ。」 「俺・・・白拍子見てませんか?」 「白拍子?見れたら今頃もっと嬉しい気分だけどね。残念ながら見れてません。」 ヒビキは両手を肩まで挙げて肩を上げた。 ついでに首も横に振った。 サスケは片手を顔に持っていって覆った。 視界が半分だけ暗くなる。 頭の隅に引っかかる何か。 思い出すことができない。 何かが思い出すことをとめている。 何が? 「・・・・あれは・・夢・だったのか?」 「もう、何でも良いから起きたんなら帰るってばよ!!洗濯とかたまってるし。ほら! 帰るってばよ!!立って!!」 「・・・あぁ・・」 「じゃ、ヒビキさんまた今度ってばよ。」 「またね。うちはちゃんと体調整えろよ。」 「はい。」 サスケはナルトに引きずられるようにして部屋を後にした。 出てきた部屋は人生いろいろの上忍詰所の近くにある仮眠室だった。 仮眠室のドアが閉まる瞬間。 「またね。」 ナルトはヒビキのほうを向いて笑った。 サスケからは見えない位置で。 その顔は妖艶に笑って。 紅を引いていないはずの唇が赤く見えた。 ヒビキは何も応えずに笑っていた。 それだけで充分。 「サスケ、今日の夕飯何にしようか?」 「お前の手料理なら何でもいい。」 「そういう答えって一番困るってばよ。」 「じゃ・・・・・」 ざぁぁぁ 風が吹いてどこからか桜の花びらが飛んできた。 髪を押さえながら目を細めるナルトをサスケは見た。 『ごめん』 桜吹雪の中で誰かが言った言葉が被った。 いつ聞いた言葉? 「サスケどうしたんだってば?」 自分を心配そうにのぞく金色。 引き戻される感覚。 変な浮遊感。 「・・・ぁ・・いや。なんでもない。」 「ホント大丈夫かよ?早く家帰って休もうな。」 「お前が居ないと良く眠れないんだ。」 「しょうがないから一緒に寝てやるってばよ。」 手をつなぐ。 いつぶりだろうか? 繋がれた手から伝わる体温。 ほっとする自分。 どうやら思っている以上に依存しているようだ。 けれどそんな自分が嫌いではない。 「俺はサスケの光になるから。」 眩しい光が隣に居た。 「桜が散りきる前に桜見に行こうな。」 「そうだってばね。」 綺麗な笑顔があった。 桜の下にあるのは妖艶で。 けれど寂しさを秘めた瞳を持った白拍子が。 その白拍子はたった一人のためだけに・・・。 しゃらん しゃらん しゃららん しゃん しゃん しゃらん


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