シロとアカと…

さらさらと真っ黒な空から雪が降る。 止む気配も無く降るソレのせいで世界からは音がなくなった。 暗闇のせいで辺りがどうなっているのかもよく分からない。 ただ、周りに敵の気配は無い。 漏れなく殺せたようだ。 「任務成功」 緊張の糸が切れたように地面に転がる。 もう起き上がれそうに無い。 襟口から入ってきた雪が首筋に触る。 火照った身体には丁度良い冷たさ。 顔に当たった雪は体温で溶けてゆく。 暑い雲で覆われた空は真っ暗で。 雪は途切れることなく降り続け。 次第に寝転がっている自分の上にも降り積もってゆく。 何も見えない空を見上げただ過ごす。 チャクラ切れで雪の上に転がり込んでから1時間。 身体の神経が麻痺して自分の状態もよく分からない。 ただ、雪が降るぐらいだから当然、気温は低いはずで。 吐く息は白く、血の気の失せた肌は雪より尚、青白いと思う。 凄く眠い。 思考が低迷する。 ものを考えることを脳が拒否する。 このまま眠ってしまいたい。 動くのがとても億劫で。 閉じようとしている瞼を押し上げることも叶わない。 完全に目を閉じる前に見た黒い影は果たして何だったのだろう? ■□■□■□■□ アッタカイ。 ドウシテ? 雪ハ冷タイ筈ナノニ。 重い瞼を無理矢理に押し上げ首を捻る。 視界に写るオレンジの糸の川。 何かが身体の上に乗っていて妙に重い。 それに、ソレが自分よりとても暖かい。 「……っん」 動こうと身体を捻ると上に乗っていたモノが動いた。 オレンジの糸が顔にかかる。 元々暗いのに糸が幕の様に光を遮って何も見えない。 ただ、そのモノから発せられるチャクラには覚えがあって。 確認を取るように名前を呼んだ。 「……デイ…ダ…ラ?」 「起きたかよ、うん?」 不機嫌そうな声が鼓膜を震わせた。 まだ頭はしっかりと起きてはいないが、半分くらいは覚醒した。 状況を確認しようとしたが、デイダラが上に乗ったまま動かないのでソレすら出来ない。 ただ、デイダラが怒ったような顔で自分を見ているのだろうと言うことは空気から分かった。 「何でデイダラがここに居るんだってば?」 「お前の帰りが遅いから迎えに来たんだよ。有り難く思えよ、うん?」 あのまま雪の中で寝ていたら翌朝には凍死していたはずだった。 ソレを免れることが出来たのはデイダラがナルトを発見できたから。 そのことには感謝するが、疑問が残る。 暁は相互不干渉を常としているのに何故デイダラは自分を迎えになど来たのか。 「別に遅くなっていっつもみんなほっとくのに。今日はどういう風の吹き回しだってば?」 「虫の知らせみたいなモンだな、うん」 「…あっそ」 虫の知らせとは。 木の葉の蟲使いの少年の顔が脳裏を掠めて沈んでいった。 もう自分とは関係のない人だ。 自分が捨ててきたのではないか。 裏切って、木の葉の仲間とは手を切ってそうしてここに居るのだ。 それはさておき。 デイダラの体温を直に感じるのはなんででしょう。 ナルトは優しくデイダラの頬に手を滑らせて聞く。 「ねぇ、何で俺ってば裸なの?」 「濡れたコートと服着てたら暖まるもんも暖まんないだろ、うん?」 頬に滑らせた手を髪に絡ませ更に聞く。 「じゃ、デイダラが裸な理由は?」 「そりゃ、ナルナルと愛を深め………」 するりとナルトの太腿を撫でて更に手を伸ばそうとした時 「ッげふ!!」 「ふ・ざ・け・る・な」 ナルトは容赦なく髪に絡めていた手をそのままデイダラの後方に引っ張る。 情けなくデイダラは髪に引っ張られのけぞる。 「ナルナル痛い!!オイラが禿げになるの嫌ダロ!?」 「いっそのこと禿げろってば!!」 「ちょッ…!!!本気で後ろに引くのなし!!……っぅぎゃぁっマジ禿げるぞ!!うん!!!」 「じゃ、その如何わしい手を今すぐにでも離せ!!!」 ぎりぎりぎり 「ギブギブ!!!!」 「じゃ、大人しく退けってばよ★」 勝者 うずまきナルト。 敗者 デイダラ。 被害者 デイダラの数本の髪 アジトに帰るためにまだ湿ってはいるが大体、乾いた服を着る。 その間、不貞腐れたようにぶすくれて居たデイダラが口を開く。 「ナルナルさぁ、凍死しかかった人間を暖める時は人肌ぐらいから始めないとショック死 なんだぞ、うん」 「知ってる」 「だから……???」 「そんなん始から分かってたってば」 「じゃぁ〜」 ナルトはコートを羽織り振り返る。 そして満面の笑みで笑う。 「デイダラを虐めたかっただけだってば!!」 「ヒドッ!!」 そのまま、ぎゃいぎゃいと騒ぐデイダラをからかいながら。 実際にはデイダラに構って貰っていたと言ったほうが正しいのかもしれないけれど。 仲良くアジトまでの帰り道の空中散歩を楽しむ。 「ナルナル、あんまり無茶するなよ、うん」 「出来る範囲で努力するってば」 「次ぎどっかで倒れてたら犯すからな。覚悟しとけよ、うん」 「あぁ気をつけるってばよ」 「別にオイラ的にはしてくれなくてもいいけどな」 「めちゃくちゃ気にすることにするってば……」 「残念、うん」 デイダラ自信作の鳥の上で背中合わせに座る。 今顔をあわせれば赤面しそうだ。 だって言えるわけがない。 まさか人肌が余りにも優しくて、離れたくなかっただなんて。 目が覚めたとき、あの冷たい雪の上でなくて良かったなんて。 そのぬくもりに、ひどく安心してしまったなんて。 一生の中での最悪の勘違いだってばよ。 声に出して叫んでしまいたかった。


デイナルです。 書きたかったんです。 だって、好きなんだもの。 そのうち、増やして行きたいです。

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