夏、最後の任務

今年の夏も暑かった。 例年に比べると冷夏らしいけど。 そんなに涼しかったか? 俺からしてみれば30度を越した時点で猛暑ですけど。 冬は寒くなったら上に重ね着すりゃいいけど。 夏は脱ぐにも限界があるだろ。 クーラーがんがんに掛けて涼んでもいいけど電気代かかるし。 自然環境にも悪いし。 そんな中、俺は日々里のために奔走してましたよ。 主に、夜。 日が沈めば多少は涼しくなる。 暗部服着てるとあんまり涼しくねぇんだけどな。 全身黒だし。 上はノースリーブでもベスト着用だし。 暗部面付けると蒸れて余計に暑いし。 うるさいのが隣に居た日にゃ最悪だ。 あいつなんなんだよ。 暑いって言ってるだろ!? 言葉が通じないのか。 暑さで脳がやられたのか? いや。 もともと脳はやられてたか。 やめよう。思い出しただけでも暑苦しい。 綱手のやつも昼間に活動しろとか、バカ言うんじゃねぇよ。 昼なんてデスクで充分なんだよ。 クーラーのかかった図書室とかで調べ物でいいじゃん。 ドベのナルト君は本を探しに行く係りでばっちり!! ナルトの持ってきた本を調べるサスケとサクラ。 で、終わった本はもとあった棚に戻して。 これで、スムーズに任務終了。 うるさいナルトもさすがに図書室の中だったら静かにしてるよ。 みたいな感じで、俺だってバカ騒ぎしないですむし。 それなら楽でいいのに。 だからさ、暑いの嫌いだって言ってんだろ。 それなのになんで・・・・・ 「暑いってばよぉ〜〜!!!!」 ナルトはさんさんと降り注ぐ日差しの下で喚いた。 ひまわりも花を散らし、種を残した状態で居るって言うのに。 その種でさえも茎がカラカラに渇いたおかげで地面に付こうとしている。 蝉も往生際悪く鳴いてるが、それでももう元気が無いって言うのに。 道端に蝉の死体がごろごろ転がっている様は結構きつい。 それなのに何故。 「いまさら35度越えなんてありえないってば!!死ね!!」 暑さのために半分仮面が取れかけてる。 いつも通りにカカシが遅刻して来たために、涼しい時間から任務というわけには いかず。 太陽が真上にきたなかでの任務。 しかも目の前に広がるのは広大な、梨畑。 見渡す限り、梨、梨、梨、梨の木。 しかもご丁寧に実のひとつずつが紙の袋に包まっている。 大量の梨の木の枝からは白い紙袋がごっそりとなっていた。 「今日中にここら辺の梨を収穫して、それを明日中にサイズ分けしてダンボール に詰めて、出荷するから。ま、農家のおじさんやおばさんたちも頑張ってるから、 お前たちも負けないように頑張れヨ。じゃ、任務開始。」 遅刻してきた顔の半分以上をマスクで隠した、自称エリート上忍は、 「ってかもう変態マスク仮面でいいじゃんか。」 とナルトは心の中で思う。が、すでに声に出ている。 で、その自称は珍しく手に鋏を持ち梨を収穫していた。 いつもなら、一人涼しい木の下で愛読書の如何わしい本を広げ、読書を楽しんで いるのだが今日はナルト、サスケ、サクラとともに任務にのぞんでいる。 時間通りに着ていれば予定も崩れずにすんだのに、カカシが遅れてきたせいで 当初の予定は大幅に崩れ、カカシも任務に参加しなければ今日中にやらなくては いけない収穫が終わらないのだ。 せっせと収穫をするが、一向に終わる気配は無い。 正攻法ではどう頑張っても終わりそうに無い。 こうなったら、あれしか・・・・。 サスケとサクラの思いはそこにしかなかった。 「ナルト、影分身でどうにかならないの?」 「収穫だけなら、ドベでも何とかできるだろ。」 かごに梨を並べていたナルトは顔を上げた。 そして、心底嫌そうな顔をしそうになってとどめた。 暑い中、体力もチャクラも精神力も使う影分身なんて、やりたくもなかった。 影分身終了後に分身を消すとその分身の学習したことが本体に蓄積されます。 なんて、売り文句があってもいやだ。 梨の収穫の効率のいい方法なんて学習したくない。 「・・・・・・」 「ナルト、お願い。」 「頼む。」 「・・・・・・」 酷く必死な顔で頼んでくる二人を見て見捨てるのはかわいそうだが。 やる気が無い中やっても効率は上がらない気がする。 俺が無駄に疲れるだけじゃないか。 カカシだって影分身使えるんだからあいつにやらせればいいじゃないか。 わざわざ俺が影分身大量生産しなくても、あいつが大量生産すればいい話。 が、これが下忍の任務ということになるとそうも行かない。 担当上忍が一番頑張りました。なんて報告できるわけが無い。 そんなことしたらイルカ先生に何て言われるか分かったもんじゃない。 あの人、怒るとホント、怖いからなあ。 出来れば怒られたくないんだよな。 そうなると俺が頑張って影分身大量生産しなくちゃいけないわけで。 でも、そんなことすると疲れるからやりたくないわけで。 しかし、収穫が終わらなければいつまで経っても終われない。 背に腹は変えられないというやつだ。 「分かったってばよ。多重影分身の術!!!」 ぼんっ。と音がし、白煙の中から大勢のナルトの影分身が現われた。 「みんな、頑張るってばよ!!!」 『おう!!!』 なんだろう。 いつもよりかなりやる気が出ない。 すごく惨めな気分になってきた。 カカシが近くに来たら精一杯、苛めてやろう。 「は〜い。お疲れさま。とりあえず、今日の任務はこれで終了だから各自家に 帰ってしっかり休むよーに。明日は仕分けだからね。解散。」 そういって解散を言い渡したカカシ。 ナルトたちは畑の入り口に座り込んだままぐったりとしていた。 特にナルトは一人で何十人分も働いたことになるので、その疲れは一番だった。 暑さもあいまってか、消耗しているのが目に見える。 「ナルト、大丈夫?」 「ドベ、家まで帰れるか?」 心配そうにサクラとサスケがナルトのそばによる。 「・・・もう少ししたら帰れるってば。ありがと。」 ナルトはとりあえず今できる笑顔で返す。 まじめな話し、今速攻で家に帰るだけの体力が無い。 今、襲われたら多分負ける。 そこにひょっこり顔を出す変態マスク仮面。 「ナルト、俺が連れて帰ってあげようか?」 「先生は今日の任務の報告に行かないとだめだってばよ!!」 元気が無くてもカカシを追い返す体力はある。 ココで負ければ今日、消費した体力は戻るまい。 それでもなおも食い下がるカカシ。 「ナルトも一緒に行く?」 「いかねぇーってばよ。先生一人で行けばいいってば。」 「えぇ〜」 「逝け」 「・・・・はい」 しかし、結局最後はこうなる。 行けの変換が間違っているのは、カカシの気のせいではない。 ナルトとしては、本当に今ここでカカシに逝って欲しいと願っているのだ。 体力を消耗させる邪魔者が消えることを。 名残惜しそうに振り返るカカシに、殺気を送る。 びくり、と肩を揺らしてカカシは煙をまいて消えた。 「じゃ、帰るかってばよ。」 「そうね。」 「あぁ」 「明日も、よろしくね。」 農家の人に見送られながら、帰る三人。 その足取りは重い。 明日もこの任務が続くのかと思ったら辛い。 辛くて仕方なかった。 そして、次の日も順調?に任務は進み。 無事任務終了。 その間にナルトが退治したカカシの数は数知れず。 そのうちにサクラがキレ、怒りの鉄槌が下った。 静かになったカカシを放って。 静かというよりは動かなくなったカカシを捨てて。 もくもくとサイズわけをし、箱に詰める単調な作業を三人仲良く分担。 流れ作業でこなす。 ナルトが収穫した梨のコンテナを運ぶ。 それをサスケがサイズ分け。 そして、サクラが出荷用の箱に詰める。 クーラーの無い広い室内は風が吹かない限り、サウナ状態だった。 たまに吹く風が唯一の救いだった。 こうして、地獄のように思われた二日間は終わった。 なぜかこの二日間だけが以上に気温が高く。 むしむしとした湿気と戦いながらの任務だった。 帰り際、農家の皆さんの優しさで梨をゲット。 「冷蔵庫で冷やすと、うまいから。」 と、農家のおじさん。 休憩時間に振舞われた梨は水分が豊富で甘かった。 「夏バテに効くんだよ。」 と、農家のおばさん。 農家の皆さんの優しさを感じた二日間だった。 後日。 「梨農家か。梨うまかったか?」 「うまかったよ。最高に。今まで食べた梨なんか比べらんないくらい。」 「へぇ。で、その梨はもう食い終わったのか?」 「冷蔵庫にまだ一つか二つ、あった・・・・はず。」 「悪くなる前に食っちまおうぜ。」 「あぁ」 がちゃ。 「・・・・・・」 ばたん。 「なぁ、シカこれ何?」 「ん?見て分かんねぇか。」 「分かるけど、確認。ってかいつ入れたの?」 「スイカ。家来た時に入れた。」 「・・・・・見えなかった。」 「時期が遅いスイカの収穫こっちもやってよ。それの土産。」 「ってかでかくね?これ。」 「確か、3L」 「3L二人じゃ食べきれねぇだろ。」 「そうか?結構いけるぜ。」 「ってか梨どこ行った。」 「梨なら、スイカの上の棚に無いか?そこに避けたんだけど。」 「ん?あ、あった。あった。先に梨剥いて食べるぞ。スイカなんて強敵は後だ。」 「今日で食べなくてもいいだろ。明日もあるし。」 「あ、イルカ先生んとこもってこ。4分の1くらいでいいよな。」 「いいんじゃね。それくらいで。(ってか持ってくのかよ。)」 「でも、それでも残り4分の3か。」 「ま、ぼちぼち食おうぜ。」 「切って、皮落として、タッパーに保存しても平気かな?」 「そのほうがいいかもな。丸々保存するとスペースとるし。」 「腐んねーといいけど。」 「頑張れば平気だって。」 そして、3日かかって消化されたスイカ。 更に後日。 「チョウジのやつ一日でアレ消化したらしいぜ。」 「げっマジかよ。」 チョウジの胃袋恐るべし。


やべ、オチこねぇ。 皆さん、水分の多いモノは加減して食べないとお腹、壊しますよ。

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