ナルトが飛び出して言ってしまった後のHonky Tonkでは銀次がおろおろとしている。 喧嘩を売って、見事に買われて、しかも惨敗した蛮といえばタバコを吸っていた。 何事も無かったように、ふぅと紫煙を吐き出す。 そんな蛮を見て、銀次はナルトが出て行ったドアと蛮とを何度も交互に見ている。 ナルトは雪が降りそうな寒空に出て行ってしまった。 自分と違って迷子になりそうにはないが、それでも寂しいんじゃないだろうか。 確かに、自分達に黙ってバイトしてたのにはびっくりした。 でも、ナル君はナル君なりに色々考えてのことだと思うし。 12歳の子供だって思ってると、たまに俺でも分からないこと言うし。 なんていうんだろう、蛮ちゃんに言ったら怒られると思うんだけど、蛮ちゃんが小さくなった 見たいな感じなんだよね。 なんていうか、ませてるっていうの? よく分かんないけど、それでもたまにね、すごく寂しそうな顔してるんだ。 であったばかりに頃に、夜うなされて呼んでた名前も最近は聞かなくなった。 『シカ』って呼んでたけど、彼?はナル君にとってどんな存在なんだろう。 俺にとっての蛮ちゃんだとしたら、すごく、寂しいし、悲しいと思うんだ。 一緒にいることが普通だから、きっとね、いきなりいなくなっちゃったりしたら、多分ね、心が 迷子になっちゃうと思うんだ。 ね、蛮ちゃんは今、何考えてるの? 「ねぇ、蛮ちゃん」 「…」 「ねぇ、蛮ちゃんたらっ」 「…うるせぇ」 ふてくされたような顔で、カウンターに肘を着いて蛮はタバコの灰を灰皿に落としている。 見ようによっては、探しに行く気が全くなさそうに見える。 けれど、まだ吸いきっていない、タバコを灰皿に押し付けて消してしまう。 そして、また新しいものを箱から取り出して、火をつける。 「蛮ちゃん、俺、ナル君のこと探しに行くからね」 「さよか、いけいけ」 「行っちゃうからね、一人で」 「おうおう」 「俺が迷子になったら、探すのは蛮ちゃんなんだからね」 「…おめぇが迷子になってどうするよ」 「でも、探すのは蛮ちゃんなんだからね」 そういって、銀次は着てきたコートをはおってHonky Tonkを後にしてしまう。 店内に残されるのは、新しいタバコに火をつけたばかりの蛮。 小さく笑って、波児がカップをさげる。 「銀次なら、ほんとに迷子になりかねないぞ」 「…タバコ切れたから買ってくら」 素直じゃない奴。とため息をついて、新聞を広げる。 コートとマフラーをさっと着込む。 カランカラン とドアを開けると、空からちらほらと雪が降り出す。 目線を元に戻すと、笑顔の銀次。 「えへへっ」 「ったく。おら、いくぞ」 「うん、蛮ちゃん大好き!!」
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