『ちっさいナルトとおっきい相棒』


異世界パラレル/子供ナルト&大人表遊戯/宿主と闇人格別体/ 表遊戯=遊戯 裏遊戯=<遊戯>


粉雪が舞うこの季節に5分も外に放り出されるなんて誰が予測しただろう。 ただ、扉の向こうでは必死の攻防が繰り広げられていることだけが、外で待ち 呆けになっているナルトには分かった。 気配がこんなにもちゃんと読める人間でよかったと思ったのは初めてで。 同時に、気配がちゃんと読めるだけにとても腹立たしかった。 早く、顔が見たい。 せっかく走ってきたのに。 君に逢いたくて走ってきたのに。 それなのに、どうしてこの扉はこんなにも堅く閉ざされているんだろう? 『ちっさいナルトとおっきい相棒』 結局扉が開いたのは到着から5分後で。 「ナルト君、玄関明けて入っていいよっ」 と云う言葉に促されてなるとは扉を開けた。 それと同時に、鋭い音と誰かが倒れる音がした。 何がどうなったのか、気配で分かったが。 実際に目で見ると迫力が違うなと、思った。 玄関には凶器となったのであろうスリッパを握り締めて仁王立ちした遊戯と それによって殴られたであろう<遊戯>が倒れていた。 「ごめんね。外、寒かったでしょう?」 「へぇーき。走ってきてからだあったまってたし」 ちょこんとナルトは玄関の中に入った。 遊戯は玄関に入って来たナルトの身体についた雪を払った。 「逆に、体が冷えて風邪引いちゃうよ!!」 遊戯は手に持っていたスリッパから手を離し軽くほこりを払うと、ナルトの 両耳を手で塞いだ。 「ほら、こんなに冷たい」 少し、むくれた顔をしている。 それだけで、心がほんわりと温かくなった。 熱移動があるなら、きっと耳から君の体温と優しさが流れてきているんだ。 今、すごく幸せな気分。 「大丈夫だってば。でも、その気持ちは受け取っておくね」 柔らかく、自然と笑えてる気がする。 「子供は、可愛らしく『はい』って答えておけばいいんだよ」 「俺ってば、そんなに子供じゃないってばよ!!」 「二十歳と十二歳じゃ十分に子供と大人じゃない」 「稼ぎは俺のほうが断然おおいっ…」 「うちは確かに小さい店だけど、それなりなんだからね?」 なんだか、変な雲行き。 遊戯が完全にへそを曲げてしまう前に、ここは折れておこう。 「そうだってばね。ね、俺、遊戯に受け取って欲しいものがあるんだ」 「ありがとう。でも、それは部屋に行って身体をあっためてから」 耳に当てられていた手が放れる。 もう少し、このままでも良かったかもと思ってしまう自分。 耳に残る優しさが少しずつ温度をなくしていく寂しさ。 でも、差し出された手はもっと暖かいから。 早く部屋に行きたいって気持ちもすごく強い。 「俺ってば、あっま〜いホットチョコ希望だってばよ!!」 「仰せのままに、可愛い王子様」 靴を脱いで、家に上がったときにまだ倒れてる残骸を見つける。 「ナルト君、もう一人のボクはそのまま放っておいていいからね」 「はぁい」 とりあえず、返事をする。 しかし、余りにも見事に倒れているので興味本位でしゃがみ込んで少しつつく。 しかし、反応は予想していたとおりにナシ。 どんだけ強くはたかれたのか知らないけれど、放って置くのも可愛そうかなぁ。 恋敵って訳じゃないけど。 だって、俺のほうが愛されてる自信あるし。 子供っていう最大の武器もあるし。 いざって時は泣き落としがあるから、絶対負けない。 敵に塩を送るのもいいかもしれない。 だって、今日はハッピーバレンタイン。 <遊戯>もとりあえず遊戯の一部だし。 「<遊戯>今すぐ起きないと大切な相棒連れて行っちゃうよ?」 耳元で囁いて立ち上がる。 これで起きなかったらもうしらな…… がばぁっ 効果音はこれで間違いない。 そして、いつもの変なきめポーズと共に指を差す。 びぃい――!!! と音がしても可笑しくないと思う。 ってか、人のこと指差しちゃダメなんだってばよ? 「ナルト、お前に相棒はやらないぜ!!」 「起きたか」 「相棒と未来を約束しあった俺に叶うヤツは居ない」 「また、妄想か」 「今日こそ、相棒と!!!」 「先に行こう」 会話の成立とかもう知らない。 勝手にどうぞ。 俺は、遊戯の待っている居間に向かって歩を進めた。


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