異世界パラレル/大人ナルト&大人表遊戯/宿主と闇人格別体/ 表遊戯=遊戯 裏遊戯=<遊戯>
やたらとしょっぱいクッキーを齧りながら。 自暴自棄になってる自分を感じながら。 何をそんなにカリカリしてるんだろうと思いながら。 心の中がぐちゃぐちゃで。 何をしたいのか分からないでいる自分を鬱陶しく思った。 いっそのこと世界から消えてしまえばどんなに楽なんだろうと思った。 消えて無くなりたかった。 『おっきいナルトとおっきい相棒』 次のクッキーに何気なく手を伸ばそうとしたら、向かい側から変な声が聞こえた。 「ナルト君どうしたの?」 「ナルトどうしたんだ?」 ちょっと高い声と。 ちょっと低い声と。 その声に反応してクッキーから向かい側に視線を上げた。 自然と椅子の上に乗っていた足が下に降りる。 俺の鼓膜は震えて、ついでに視界もちょっと曇っていた。 「え、何が?」 延びて来た二本の手を不審に思いながら訪ねた。 そのうちの一本は俺の目の縁を人差し指で優しく撫でた。 残りの一本は俺の頬を容赦なくつねった。 「っいって!!!」 「お、普通になった」 「ちょっと、もう一人のボク何してるの!?」 「何って、俺はナルトの頬をつねっただけだぜ」 「だから、何でそういうことするの!!」 ナルトは<遊戯>につねられた痛みで、沈んでいた気持ちを無理やり浮上 させられた。 遠慮なくつねられた頬はじんじんと痛い。 赤くなってはいないと思うがそれでも、許せない痛さだ。 キッとナルトは<遊戯>を睨みつけた。 何か粗相をしたならつねられるわけも分かるが、俺は静かに二人の話を邪魔 せずに聞いていただけだ。 それなのに、この仕打ち。 デッキの調整の話しなんて静かに聴いていないで、邪魔すれば正解だったん じゃないかと思わずにいられない。 「ナルト君ゴメンね。今、何か冷やすものを取って来るから」 そういうと遊戯は急いで椅子から立ち上がると、洗面所のほうに消えていった。 そうすると、キッチンに残るのはナルトと<遊戯>。 ギクシャクした空気が漂っている。 それなら、普通だったのかもしれない。 しかし、つねられたナルトはその理不尽に怒っていたが、当のつねったほうの <遊戯>は自分のしでかしたことを何とも思っていないらしい。 どういう教育を受けて育ったかはまぁ、彼が王だということを考えれば想像は 難くないだろう。 「何をそんなに怒ってるんだ?」 事態を全く理解していない<遊戯>は逆に不思議そうにナルトに尋ねた。 <遊戯>としては何も悪いことをした気は無いのだ。 だから、逆に困ったように首をかしげていた。 ナルトは頭が痛いと、額に手を当てて首を横に振った。 「本気でそう言ってるなら、もう一回義務教育とか受け直した方が君の ためだと、俺は思うってばよ」 「俺は立派な社会人だぜ?何で今更、義務教育を受ける必要があるんだ?」 「唐突も無く人の頬つねればそうなるってばよ!!!」 ダンッ、とナルトはテーブルを叩いた。 <遊戯>はその音に驚いた様子も無く、一言言った。 「お前がいきなり泣き出したからじゃないか」 その言葉を理解するのにナルトはかなりの時間を要した。 今、<遊戯>は何と言っただろう? 俺が、泣いていただって? んなわけないだろう。 確かに、ちょっと せんちめんたるぶるー な気分だったが。 更に、ちょっと視界が曇っていたけど。 仲間外れにされたくらいで、俺が泣くわけないだろう。 「何かの見間違えじゃないってば。俺、泣いてなんか無いよ」 「お前、本当に分かってなかったのか?」 「だ・か・ら泣いてなんか無いってばよ!!」 どうしても認めるわけにはいかなかった。 まさか、この俺が泣くなんて。 それを認めてしまったら、何か困る気がする。 ナルトと<遊戯>が言い争っている間に遊戯が洗面所のほうから手に濡れ タオルを持って戻って来た。 あわや、胸倉掴み合っての乱闘に発展するように遊戯には見えた。 「ちょっと、何してるの!!」 「だって、<遊戯>が俺が泣いてたって言うからっ」 「ナルトが泣いてるのを認めないんだぜ、相棒」 「とにかく、二人とも椅子に座りなさい」 「「だって!!」」 「大人しく座りなさい」 「「はい」」 後にその笑顔は修羅、羅刹よりも恐ろしかったと証言された。
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