異世界パラレル/大人ナルト&大人表遊戯/宿主と闇人格別体/ 表遊戯=遊戯 裏遊戯=<遊戯>
<遊戯>の腕から抜け出すための苦肉の策。 これが<遊戯>にどれだけの衝撃を与えるのか。 そして、遊戯がどういった反応を見せるのか。 想像しただけでも恐ろしいが、今日ここに来た目的のために。 ナルトはその口を開いた。 零れんばかりの笑顔を添えて。 『続ちっさくなったナルトとおっきい相棒』 ナルトは<遊戯>の腕の中で体の向きを反転させて向き合った。 その顔には零れんばかりの笑顔が輝いていた。 それを見た<遊戯>は不思議そうな顔をしたが、とりあえず尋ねてみた。 「どうした?」 「ね、お父さん俺ってばお母さんとお父さんに渡したいものがあるんだってば」 「お母さん…お父さん…?」 「遊戯がお母さんで、<遊戯>はお父さん」 「……相棒と夫婦か」 「ね、良いでしょ?」 「あぁ」 一人トリップを始めた<遊戯>を放置してナルトは自分の持ってきたチョコレート の包みを取りに、逆側の椅子までトコトコと走った。 その時に白色のコートが床をずっているのを可愛い姿だと笑っておいてやろう。 一人で議事家族をさらに展開させている<遊戯>は一人ぶつぶつと何かを つぶやいている。 何も知らない人が見たら何事かとその正気を疑うだろう。 もちろん、それはキッチンに戻ってきた遊戯にも当てはまることだった。 「…っ!!もう一人のボク、どうしたの!?」 「お帰り、相棒」 「ただ…いま」 状況把握ができていない遊戯はただ困惑するだけだった。 それに拍車をかけるように、ナルトが遊戯のしがみついた。 「お母さん!!」 「えっちょっとナルト君??」 遊戯の思考は完全に停止した。 何がどうしたら、ナルト君に『お母さん』何て言われるのか。 こんなに大きな子供をもった覚えはありません。 ってか、ボクは男だから子供は生めません。 いやいや、そんなことはどうでも良くて。 さっきまで仲が悪かったもう一人のボクとナルト君が仲直りしているのか。 疑問ばかりが後から後から沸いてきた。 「ナルト君、何が、どうして、こうなってるのかな?」 「<遊戯>の擬似家族ごっこが発展してこうなってるんだってば。<遊戯>が お父さんで遊戯はお母さん」 「ボクがお母さんで、もう一人のボクがお父さん……どうしてそうなるの」 「役割分担がそれしかなかったから」 「そう、なんだ」 それしか言えなかった。 それ以外、言えなかった。 なんていったら良いのかも分からなかった。 「TRPGとかだと思って頑張って」 そんなナルトの声が右から左に流れていった。 呆然としている遊戯の手を引きながらナルトは椅子に座らせた。 遊戯がちゃんと椅子に座ったのを確認すると、どこからともなく綺麗にラッピングの 施されたチョコレートを取り出した。 「お母さん、ハッピーバレンタイン!!」 <遊戯>に向けた笑顔よりも、もっと花が咲いた笑顔で両手を伸ばした。 小さな手に乗ったちょっと大きめの箱は可愛らしいリボンが巻いてある。 白い箱に桜色のリボン。 右斜め上のほうには小さな生花があしらってある。 生花は部屋の温度でもしおれずに、咲いていた。 おそらく、何か魔法(忍術)がかかっているのだろう。 その気持ちも何もかもが嬉しかった。 「ありがとう」 「どういたしまして。」 「ね、開けて。」 とテーブルの上に手を載せ、その上に顔をちょこんと乗せたナルトがせかす。 その顔はとても嬉しそうにほころんでいた。 一人妄想劇場の<遊戯>はまだ自分の世界を展開していた。 遊戯は包装を静かに外す。 箱を開けると中には上品にチョコレートが並んでいた。 「食べて、食べてっ!!」 「いただきます」 一つ手にとって口に運ぶ。 必要以上に甘い感じはしない。 食べやすいサイズに、食べやすい甘さ。 もともと甘味が好きな遊戯にとって、とても好みの味だった。 くすくすと笑いながら、遊戯は言った。 「ね、コレ、手作りでしょ?」 「な、な、な、な、何で分かったの!?おいしくなかった??」 ワタワタと焦っているナルトを可愛いなぁ。と遊戯は見ていた。 「すっごく美味しいよ。ありがとう」 「ホント!?」 「うん、ホント。ボク好みの味だった」 「遊戯のこと考えながら作ったんだ。良かった」 ふにゃ〜とつぶれたナルトの頭を優しく撫でる。 と、そこへやっと一人妄想劇場から半分現実に戻った<遊戯>がやってきた。 「ナルト、俺には?」 「お父さんは、会社でいっぱい貰ったでしょ?」 「え、あ、いや、その」 「だから、ないよ?」 綺麗な笑顔で首をかしげながら言った。 半分、ざまぁみろ、といった感じが瞳の奥で光っていた。 <遊戯>はその対応に焦りながら、遊戯を見やった。 遊戯も困ったような顔をしていった。 「ホントのことじゃない、今回は我慢しようね、お父さん」 貰えなかったことへの悲しさと。 相棒からの旦那さん発言の嬉しさと。 どうしたら良いのか分からない、変な顔をして<遊戯>は立っていた。 そんな<遊戯>を放置したまま、ナルトと遊戯はチョコレートを食べていた。 ホワイトデーがどうなったのかは当人達しか知らない。 ハッピーバレンタイン。 大好きな君のために。 心からの感謝を込めて。
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