取り敢えず、家に着いてすぐに濡れた服を脱がせ浴衣を着せた。 そのまま多少暑いが自分のベッドに寝かせた。 浴衣は服を着ているより涼しいし、何よりも楽だからだ。 圧迫感もしない。それもこれもナルトの体調不良のせいによるが。 ナルトの不調は精神的なものだけでなく普通に、身体的にも引き起こされていた。 極度の脱水症状と熱中症。 背負っている時から異様に体温が高いと感じていた。 体の中にこもった熱を発散しないでいた結果だが。 何にしても汗をかけるだけの水分が体の中に残っていなかったのだから仕方ない。 仕方ないが、それをどうして仕方ないの一言で片付けることが出来る? そうなる前に、水分を取れ。 飼い犬だって水がなければ勝手にどこかに行って水を飲んでいる。 それなのに、目の前のこいつはそれさえもせずにいたのだ。 シカマルは不機嫌そうに水の入ったボールを差し出した。 コップごときでは足りなかった。 吸収率を高くするために水に塩が溶かしてある。 「ホレ、水」 「ムリ。吐く」 「いいから飲め。脱水症状出てんだから水分補給しないと死ぬだろ」 シカマルは手に持っていたボールをぐいっと差し出した。 「めんどくさい……」 「お前なぁ、いくらなんでも生きるのに必要なことめんどくさがるな」 「いらない」 「……あぁもうこの分からず屋!!」 ガタッ 「!」 僅かな体格差と、体力に物言わせて。 無理やり何て卑怯かもしんねぇけど、そうでもしなきゃこいつ飲みゃしねぇし。 嫌がっていつまでも飲まなきゃそれこそ、大事に至る。 嫌がったって何したって飲ませなきゃいけない。 飲ませた水を戻しそうになるのを押し込めて。 ゆっくり喉に流していく。 「…っ…んん……っは…」 「ホレ、頑張れよ。まだ一杯あんだからよ」 「…変態…」 「そう言う可愛くないこと言うなよ。めんどくせぇ」 「…」 そうやって何回か繰り返される水分補給。 「…っよし。今ので最後だ」 シカマルはやっと飲み終わらせることに成功して、器を下に持っていく。 ナルトは腰砕け、心拍数上昇、半ば呼吸困難。顔は真っ赤。 の状況でシカマルのベッドに埋もれていた。 「……加減しろよ!!」 ■□■□■□ 再びシカマルが水を入れたボールを持って部屋に戻ってみると、団扇で優雅に 風を送っているナルトが居た。 汗をかいた形跡はない。 「・・・もう少し水飲んどけ」 「まだ飲むの?」 「空っぽだから、少し飲んだ程度じゃ焼け石に水なんだよ」 「そうか?もう十分だけど」 「お前がそう思ってても、汗出てないだろ?出せるだけの量は身体ん中にねぇんだよ」 シカマルはナルトに無理矢理ボールを持たせて、言った。 汗も出ないくらい水分摂取を怠っていたのだ。 それでも、体の細胞は何とか生命を維持するために頑張っていた。 そこに恵みの水が来たのだ。 まずする事と言ったら、細胞から搾り出していた水分を戻すために与えられた水を 分配して満たしていくこと。 人間の体の五十〜六十%は水分で出来ている。 まずはその基準に戻すために使われる。 さっき飲ました量じゃ、それに達するかしないかぐらいしか摂取できていない。 ナルトはしぶしぶ、ボールに口をつけてちびちび水を飲む。 半ば無理矢理ボールの中の水を飲み干すと、これで良いかと言わんばかりにシカマルに ボールを突きつけた。 「…ノルマ…クリア……」 シカマルはナルトからボールを受け取ると、再び一階に降りて行った。 戻ってきたシカマルのその手にはやはり水の入ったボール。 しかし、そこにはぐったりと泥のようにベッドに沈んで眠るナルトの姿があった。 今のさっきで良く寝付いたものだ。 ナルトはその後も昏々と眠り続けた。 その隣でシカマルは団扇で風を送っていた。 扇風機の音は煩いだろうと思ったからだ。 小一時間ほどして、親父達が帰ってきて、シカオたちも帰ってきて。 それでもナルトは起きなかった。 よっぽど疲れていたのだろう。 「なんだナルトの奴。寝てるのか?」 いきなり声がかかり振り返ると親父が立っていた。 お袋とシカオたちは下に居るみたいだ。 「親父何か用か?」 「妙に静かだからどうしたのかと思ってな」 シカクはドアの梁に体重を預け、両手を組んだ。 「脱水症状でぶっ倒れたんだよ」 「ちゃんと水分補給させたか?」 「誰に言ってんだよ」 シカマルは不機嫌そうに言った。そして付け加えるように、 「起きるまで寝かしておくから、起こすなよ」 少し睨み付けるようにして言う。 下手をするとウチの家族は 「どうした、どうした!!」 と俺の部屋にも拘らず上がりこんでくるからだ。 「シカオたちには上に上がって来ねぇよう言っとくよ」 「さんきゅ」 シカマルは礼だけ言うと再びナルトの方を向く。 めんどせーしか言わない息子もナルトの事になると人が変わったようにアレ、コレと 面倒を見ているのだから、大したものだと思う。 四代目から譲り受けた輝く金の髪と、今は閉じていて見ることの出来ない青い瞳。 シカクは僅かに口角を引き上げると、 「ちゃんと面倒見ろよ」 とだけ言って部屋を後にした。 その背に向かって、 「言われなくても」 と応えた。 シカマルは、そのまま夕飯で呼ばれるまで団扇を扇いでいた。
シカパパ登場。 いまさらだが、シカマルの兄弟については適当にした。 ナルトのこと構い倒してくれる優しい、家族。 シカママ大好き。 きっと、クシナちゃんと一緒に任務に就いたりしてたんだよ。
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